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大人の本気の自由研究、はじめました。

知りたい…!!!

その欲求は人間に許された最高の贅沢だ。

子供は40000回質問をするそうだ。彼ら/彼女らは飽く無く探求者だ。目の前の現象をあるがままに観察し、素直な視点で「なぜ?」と問う。大人の多くはその純粋な質問の前に困惑する。「なぜ?」だって!?なんだってそんな事を知る必要があるんだ!?

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我々も昔は純粋な無数の「なぜ?」を抱えた子供達だった。空を流れる雲を眺め、地を行列を作ってゆくアリを眺めては「なんで?」と思ったのだ。

だが、やがて成長し、その過程で知らない事は恥だと叩き込まれ「なぜ?」という純粋な気持ちは心の底に沈殿し、物知り顔でスマホをいじるようになる。スマホの液晶がどの様に機能するかも知らずに。

大人は忙しい。物事の成り立ちなど考えている暇など無い。大抵はそれで上手くいく。だって、物事の多くは原理など知らずとも、使う事は出来るのだから。スマホのタッチパネルの原理など知らずとも操作は出来る。「なぜ?」という疑問は不要だ。とりあえずやっちまえば大抵は上手くいくのさ。

だが、それで本当に良いのか…

いいや!良くない!大人だって知りたい!

忙しい日々の中、ふと立ち止まって些末な事柄に「なぜ?」と問うてみたい!真相に一歩ずつ近づいていくあのドキドキ!謎が解明した時のあの知的な喜び!そういった全てをもう一度全身で感じてみたい!

という訳で始まった企画!それが【大人の自由研究】だ!!!

説明しよう!大人の自由研究とは!?

きっかけは「酔っ払い化学者」と「ともよし(理系とーくの人)」がとある勉強会で出会い、こんなことしたいね!と盛り上がった。その後「酔っ払い化学者」が速攻でTwitter上で参加者を募った。

すると、ジャンジャン通知が届いたのだった。古今東西から計20名近くのご連絡を頂いた。せやな、みんなも知りたいんやな!熱いぜ!

そのままトントンと話が進み、とある休日の昼下がり、関西で科学者男女9名が集まり、研究テーマを決める会を開いたのだった。

本記事では第一回の話し合いの様子をお送りする!

第1回:大人の自由研究のテーマ決め!@コワーキングスペース京都

会場は「ともよし」さんが今後バーにしていく予定のコワーキングスペース京都。京都駅から徒歩5分ほど、なかなかレトロで良い雰囲気だ。

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集まったのは男女9名!

酔っ払い化学者ともよしKarinkazutsuyoshiおつるでら、 キッコロ神庭@(敬称略、順不同)

自己紹介の間、私はせかせかと準備をしていたが、途切れ途切れに「宇宙での皮膚の美しさ」とかいった普通の自己紹介では有り得ないワードが聞こえてきた。これはくせ者達が集まったなぁとワクワク。

という訳で、話し合いが開始した!

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持ち寄った軽食を食べ、適度にお酒を嗜みつつ、ゆるーい感じでスタート。

話し合いは3つのステップで行われた。

1st STEP:アイディア出し

まずはアイディアをじゃんじゃん出す作業だ。とにかくアイディアを量産することが目的だ。非常に面白いアイディアが沢山出てきた。約2時間で計16個のアイディアが出た。

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各アイディアに対して、全員で熱い議論を戦わせた。特に面白かった議論をいくつか紹介していく。

【空腹は最高のスパイスか?を検証する】

問いとして非常に面白い。検証方法について熱い議論が戦わされた。濃度の異なる砂糖水を用意し、被験者に見せずに飲ませ、被験者が、砂糖が入っていると判断できる最低濃度を【味覚の感度】とする。この【味覚の感度】が満腹状態と空腹状態で異なるかを検討してみてはどうか、という面白いアイディアが出た。

一方で、空腹以外に味覚に影響しそうな因子(食事内容、アルコール、砂糖水を飲む順番etc...)が多すぎて実験系として成り立たないのでは?という指摘と、リスクは承知だがまずはデータを取ってみてはどうだろうか、という意見が対立し、火花を散らした。みんなかなり真剣でおもろかった。

【植物への罵声は生育に影響するか?】

植物へ「ありがとう」と声をかけると良く育つと言われる。これを科学的に考察した。非常に面白かったのは、植物は虫が葉を食べる音に反応して、生理活性物質の局在を調整するそうだ。

これまで植物への感謝・罵倒に関する考察は、植物にも感情があるかもね、みたいなやや非科学的な視点で語られることが多かった。だが実は、植物が音に反応するという機能は、植物の生き残り戦略の1つなのかもしれない。非常に知的好奇心が刺激される議論だった。

議論は「では、植物にどのような音を聞かせればよいか?」という方向に発展した。念仏、罵倒、感謝、葉を食べる虫の鳴き声などの意見が出た。私はエルビスプレスリーを聞かせてみたい。ロックンロール小麦を作りたい。

実際の実験系を組むにあたり、どのくらいの間隔で音を聞かせるべきか、音以外の条件を如何にそろえるかについて意見が戦わされ、試験実施にはやや大掛かりな施設が必要かもねという結論に達した。特に音以外の条件を揃えるのが難しそうだ。

【感情をサーモグラフィで可視化できるか?】

おならの臭いから如何に効率的に逃れるかという先行研究(トリビアの泉)の話題から、サーモグラフィでおならを可視化できるという話に発展した。さらに議論が発展し、感情をサーモグラフィで可視化できないか?という良質な問いが生まれた。

怒りを感じると血液は両手に集まる。武器を握ったり攻撃するためだ。また、恐怖を感じると血液は両足などの大きな骨格筋に流れ、逃げる準備をする。顔は青ざめる。

この様に、感情と血流はリンクしており、そこには生理的な意味がある。我々は検証実現性も考慮して「笑い」に着目し、笑った時に血流がどうなるのか?また、血流から笑いの強度を定量化できるかに興味を持った。漫才動画を見ながら、サーモグラフィで被験者を観察するという実験系を考察している。

【朝顔観察日記】

子供の頃の自由研究を大人になってから再びやったら、多くの気づきが得られるのではないか?という問いから産まれたテーマ。面白い。知識が増えた分、意外性のある様々な気づきが得られるかもしれない。

【ファザコン鼻効かない説】

非常に有名なTシャツ実験という研究がある。この実験の結論は、女性は嗅覚によってベストパートナーを見つけるというものだ。女性たちはMHC(Major Histocompatibility Complex)という免疫をつかさどる遺伝子の値が自分から遠い男性のTシャツをいい匂いと回答した。

これには生物学的に意義がある。即ち、遺伝子が近い者同士で交配を繰り返すと劣性遺伝が溜り、様々な障害が生じやすくなる。参加者からも様々な事例の紹介があった。従って、女性が自身と遺伝子が遠いパートナーを選ぶことは、優れた子孫を残せることに繋がる。やったぜ!めでたし!

だが、この生物の進化戦略の犠牲者がいる!お父さんだ!

お父さん臭い!と娘は言う。これは理にかなっている。遺伝的に近い異性の臭いを臭いと思うのは優れた進化戦略だ。お父さん!どんまい!と、ここまで考えた時点で次の様な疑問が浮かぶ。

「ファザコンって鼻効かないんじゃね?」

問いとしては面白いが、サンプルを確保する事が困難であり、かつ遺伝子解析の実施は現時点の我々のスペックでは難しいという結論に達した。

【お酒の強さの数値化をしてみたい!】

お酒の強さで良く知られているのはアルコール代謝に関連する酵素だ。すぐにアルコール代謝に関連する2種類の酵素活性の測定というアイディアが出た。測定キットはあるそうだ。

議論が発展して、同じ人でも酒のチャンポンは何故酔いやすいか?という良質な問いに発展して面白かった。酵素非依存的な、吸収速度や相互作用などが可能性として挙げられるが、それらを如何に定量するかは難しいよねって意見が多かった。

【レモン爆破】

下記は梶井基次郎の小説「檸檬」の説明文だ(Wikipediaより引用)。

『檸檬』(れもん)は、梶井基次郎の短編小説。梶井の代表的作品である。得体の知れない憂鬱な心情や、ふと抱いたいたずらな感情を、色彩豊かな事物や心象と共に詩的に描いた作品。三高時代の梶井が京都に下宿していた時の鬱屈した心理を背景に、一個のレモンと出会ったときの感動や、それを洋書店の書棚の前に置き、鮮やかなレモンの爆弾を仕掛けたつもりで逃走するという空想が描かれている。 (Wikipedia「檸檬」より引用)

本当に爆発する檸檬を作れないか!?というアイディアだ。

提案してくれたキッコロさんには「ベスト・クレイジー・アイディア賞」を授与したい。あまりの馬鹿馬鹿しさにめちゃくちゃ笑ったが、参加者は比較的冷静に考えだし、レモンに含まれるクエン酸に重曹を混ぜた酸塩基反応によって爆発できないか…?という至極まっとうな意見が出てきた。

仮に、檸檬を密閉系に出来れば、酸塩基反応で生じるCO2の圧力によって爆発できるかもしれない。だが、檸檬は開放系でありこのジレンマをどう乗り越えるかに議論が集中したが、なかなか結論は出なかった。

【メントスコーラ】

コーラをメントスに入れると泡が噴き出す、非常に有名な実験だ。ただ泡を噴出させるだけではなく、泡が噴き出す原理をちゃんと理解し、何かしらの仮説を立て、それを検証したいよねって話になった。

メントスコーラの原理に関する先行研究によると、メントス表面にある細孔が、コーラ中のCO2が泡となる物理的な反応場【核生成サイト】として機能するそうだ。

コーラ側に関しては詳細に研究がなされており、液体の粘性がより低いダイエットコーラの方が気泡は発生しやすいことが解っている。

一方で、メントス側の検証は不十分に感じている。原理から考えると、より細かい【核生成サイト】を有する物質であればメントスでなくともより大量の気泡を発生させることが出来るはずである。この仮説を検証するための実験は面白いかもねって話になった。

下記は休憩中にメントスの断面を顕微鏡で観察する参加者たち。フットワークが軽い。

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という訳で計16個のテーマが議論し尽くされた。

次のステップとして優先順位付けを行った。

2nd STEP:優先順位付け

挙げられたテーマを【面白さ】と【実現可能性】という2つの軸で分類した。やはり、企画倒れにならない様に、実現可能性はしっかりと考慮し、まずは何かしらのアウトプットを出そう!という事で合意した。

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分類の結果、右上の「面白いし、かつ実現可能性も高い」3つのテーマを優先プロジェクトとして前に進める事で合意した。

【檸檬爆破】【メントスコーラ】【感情をサーモグラフィで可視化できるか?】という3つのテーマだ!

分類の結果、面白いが実施が難しいという右下の枠に入るテーマが多いことがわかった。これらも人が集まり、測定機器やアイディアが充実すれば順次右上の「面白いし実施できるゾーン」に推移していくだろう。また、ふと簡単な検証方法が誰かの脳内に浮かぶかもしれない。

3rd STEP:工程表の作成

最後に【感情サーモグラフィ】の工程表を作成した。つまり、Goalである「感情と体温の相関が取れる」という結論に達する為に、どの様な実験・準備を実施すべきかをリストアップし、各タスクの担当者を決めた。

この工程に沿って作業を行うことで、まずは何かしらのアウトプットが得られるはずである。楽しみだ!

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ここまでの作業で大体4時間ほどかかった。非常に熱かった。特にテーマ出しが非常に白熱した!テーマの分類&工程表作成はささっと終わった。

やや疲れも溜ってきたので【メントスコーラ】と【檸檬爆破】に関しては担当者を決め解散した。

という訳で第一回の話し合いは以上!

参加して頂いた皆様、お疲れさまでした!

実験を進めていきましょ~!楽しみ~!

最後に…

以下は現在欲しいものリストです!実験に必要な器具になります。

・サーモグラフィ:5~20万程度(機器選定中)

・糖度計:数千~3万程度(機器選定中)

なんか面白そう!と思ったら是非是非ご支援くださいませm (_ _)m。

ご支援頂いたお金は全て研究資材の購入に使わせて頂きます!

それでは、どうぞ宜しくお願い致します!

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