旅をする石② チルテスニーノ
Dear my friends,
こんにちは。霧雨みたいな雨が降ったり止んだり照ったり雲ったりしています。私が予定していたサイクリングは道が滑ってしまうので、ウォークングに行くことにしました。雨が落ち着くまで、また筆を進めます。
ここから1番近い町の南イタリア・プーリア州にあるチルテスニーノは、白い街並みが印象的です。かつての町である旧市街は他の町と同様に城壁で囲われていて、車が入れない迷路のような小道の両側に3階建くらいの白い建物が続きます。昔は低層階しかなかったみたいですが、都市の宿命というか、人が増えて上に上に建物を追加していったようです。
地図に強く何度も欧州の町を旅してきた私ですが、この町の中では流石に迷子になります。チルテスニーノ以外のこのあたりの町も同じような構造になっているのですが、道を見失っても、歩いていれば町の中心の教会か城壁の縁にたどり着きます。中心部ならまた道を辿れるし、縁に沿って進めば山手線の要領でいつかは自分が町に入った入口に辿り着けます。これで、Wi-Fiも地図もなくても大丈夫です。
町の中心には、ひしめくようにたくさんのレストランがあり、特に夏には原宿の竹下通りみたいに観光客で溢れるそうです。狭い小道にテラス席が並んで、ピツィカに代表されるようなタンバリンや太鼓の音楽が鳴り響く様子を想像してみたりします。でも今は冬なので、夏に向けて町の修復や道路の補修工事が行われていて、静かでのんびりしたところです。
とはいえずっと観光地だった訳ではなく、イタリアで都市からい地方に関心が移ったのは1970-80年代だったようです。近代化、二つの大戦、オリンピック、高度成長などの時期が似ていることもあって、日本とイタリアは歴史的な道のりが同じようだったと言われることもあるようですが、都市と田舎の関係は、大分違っていたんだろうなと思います。
いつだったかご飯をご一緒したイタリア人のパン屋のおじさんが、「ピザは、1500年にナポリからマルティナフランカ(プーリア州中部の町)に輸入されてきた食べ物だ」と言っていて、印象的でした。真偽はともかく、日本で一番有名なイタリア料理がここでは、輸入されてきたもの、なんですね。ワイン一つを見ても、フランスのように全土で格付けされているのとは違い、イタリアは産地によって多様性があります。
あれ、ワインといえば、こちらにきてからお昼も夜も基本的に食事と合わせてロゼワインを飲んでいるのですが、日本でイメージする甘くて変な香りがするロゼとは違って、ブドウの酸味とすっきりした後味が最高です。コップで麦茶みたいに飲んでいて、最初は言われるまで本当にブドウジュースだと思い込んでいました。昨日はお客様が来たので、ロゼに赤ワインに食後はティラミスに合わせてエクストラドライのスパークリングロゼを飲みました。完全に飲み過ぎ食べ過ぎでしたが、全く悪酔いせず次の日にも残っていないので、これが食材とこの土地が持つ魅力なんですね。
そういえば、こちらに来てから何度か、ジョヴァンニさんや奥様のミナコさんのお友達やご親戚の方と一緒に夕食を頂いています。私が最初に来た時もそうだったのですが、前菜、パスタやリゾット、お肉やお魚、デザートというコース形式のご飯で、グラスもワイングラスやスパークリンググラスです。お二人が作る料理は素材の味が一番に感じられて本当に美味しいのはもちろん、その考えや哲学がたくさん詰まっていて、温もりに溢れています。私は最初、何かお手伝いしなきゃと思っていたのですが、元ホテルマンのジョヴァンニさんはサービスにこだわりを持っていて、今では自分が休暇中のお客さんであることを楽しむようになりました。
丘の上のお家には畑もあり、そこから採ってきたお野菜を使ってご飯を作ります。最近のイタリアで流行っている言葉でいうとまさに「キロメトロ・ゼロ」です。(イタリアのスローフードの考え方で、生産と消費の距離が0キロが理想だという地産地消の究極的な形として言われる合言葉です。)ただ、これは後からついてきた言葉であって、きっとお二人みたいに自分達が食べるものを自然に作ってきた歴史がこの土地にはあったんだろうなと思います。
ミナコさんは、イタリアの料理はイタリアの食材を使うのがポイントなのではなく、この土地で採れた野菜を使うのがその核にある、とおっしゃっていました。だからご自身ので、日本のごぼうや大根を育ててみたり、お庭に柚子の木があったりします。なるほど、作ることと食べることとは、そういうものですね。
食卓でいつも印象的なのは、生野菜のフェンネルやウイキョウが置かれていることです。食事の合間の好きなタイミングで食べるのですが、日本でいうお漬物みたいな感覚で、みずみずしい野菜が口をリフレッシュさせてくれます。それから、これらの生野菜もお料理に使うお野菜もそうですが、基本的には手元のギザギザナイフで切って食べます。料理を作っている時にも包丁やまな板を使わず、食事用ナイフを器用に使っている様子は、みていてうっとりする程です。
さて、だんだん太陽が出ている時間が長くなってきました。今回は町の歴史や旧市街地の保護について書こうとしたのですが、気がついたら料理について熱く語ってしまいました。帰国したら、イタリア料理ではなく、プーリア料理を一緒に食べに行きましょう。では、散歩に行ってきます。
Wünsche euch allen einen schönen lieben Tag!
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