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ドイツ語の話 ~DuとSieとブーバー~

ドイツ語には「You」を表す言葉が、「Du」と「Sie」の2つ存在する。
この違いは、関係性の近さを表しているもので、
自分「Ich」を中心に置いたとき、そこから距離が近い関係が「Du」、遠い関係が「Sie」になる。

日本語に訳すと「Du」が「君」、「Sie」が「あなた」となることが多い(学校ではよくこう習う)けれど、この2つの違いは、日本語でいう敬語を使う関係とは少し違う。
だから、日本語訳はドイツ語のニュアンスを、必ずしも正確に反映できている訳ではない。

たとえば、ドイツ語では、職場の上司や友達の親に対して、「Du」を使うことが多い。
日本語で「君」と訳してしまうと少し違和感があるけど、これは決して馴れ馴れしい関係性として使われている訳じゃない。

この点、20世紀の哲学者ブーバーの「我と汝」("Ich und Du")が興味深い。

彼はこの世の中について「Ich-Du」と「Ich-Es」の関係性を定義している訳で、
私が私として認識される関係表す時、「Sie」ではなくて「Du」が使われている。
英語ではこれを「I-You」と「I-it」というし、
日本語になると、「私-あなた」、「私-それ」と訳される。

ここで、日本語では「Du」が「あなた」と変換されていて、これこそが、ポイント。
日本語とドイツ語の感覚の違いを端的に表現していると思う。

リプレイス可能なネットワーク社会を生きる上でDuとEsについて語りたいことは山ほどあるが、とりあえず今日をまとめると、

ドイツ語を学ぼうと思うなら、まずはブーバーを読もう、

ということだ。

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