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非言語コミュニケーションの落とし穴

視覚情報=55%
聴覚情報=38%
言語情報=7%

相談援助の世界で働く人であれば一度は目にする情報であろうメラビアンの法則だ。この法則は言語と口調や表情が矛盾する場合の事を言っているのは有名な話だが、確かに人は、自分の感情に共感されたと感じた時、「この人は自分の事を分かってくれる」と心を開き、その人の言葉に耳を傾けるようになる。その為にはその人の感情に寄り添っている事を言葉だけでなく、うなずきや声のトーンなどの態度で示す事は重要だ。非言語コミュニケーションが非常に大切である事はよくわかる。

しかし、ここで大きな落とし穴がある。
非言語コミュニケーションは「非言語」であるが故に、あいまいで、はっきりしないという事だ。

スタートの段階では、私たちは相手の信頼を得る事が第一となる。故に「そうだったんですか」「あなたの気持ちはよくわかりました」という言葉をよく使う。否定の言葉は使わない。「気持ちは」という一言を入れる事で、相手の感情に共感している事を全面に押し出しつつ、影では実際にその悩みを抱える原因や、その状態になっている事に関してはニュートラルの立場、という言外のメッセージを含ませている。もちろん自分の事で精いっぱいな相手にはその一言の意味には気付かない。

そしてここに、93%の「あいまいなメッセージ」が乗っかる。私たちにとっては、あくまで相手の「感情に共感」している(にすぎない)のだが、このメッセージはあいまいである為、相手には感情だけでなく「行為(自分が今までやってきた事やそうなってしまった状況)への共感」や、相手の「考え方への同意」、ひいては「相手への好意」と曲解されかねないのだ。

そういう場合、どこかではっきりさせないと、後々取返しがつかなくなる。その曲解が相手の「甘え」や「依存」に繋がり、例え相手の信頼を得られたとしても、自ら考え、自ら解決しようとしなくなるからだ。
厳しい事を言えば(事実なのだが)、自分の悩みを解決出来るのは、他の誰でもない、自分自身だけなのだから。

相手の悩みの解決をサポートする際、たぶん多くの人はスタートの段階である「相手の信頼を得る事」に悩むと思う。しかし、相手の悩みを本当の意味で最後まで解決に導く際、一番難しいのは「感情への共感」と「行為への共感」の線引きの仕方だと思う。

非言語コミュニケーションのあいまいな故の使いやすさに、依存しすぎてはならない。

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