#69 本 x 恋を語る
もともと僕は本には興味のない人間だった
学生時代から国語が苦手で
とにかく作者の気持ちを書けとか
そういうのが嫌でしょうがなかった
「答えなんてあるのかな?」
「本人に聞かなきゃホントかわからない?」
そういう屁理屈ばかり言って
高校では迷うことなく理系を選んだ
本を読むようになったのは
1人の女性との出会いだった
今日はその話
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20歳の頃
ドトールコーヒーでアルバイトをしていた
そこで出会った彼女は
一つ年上の先輩だった
小柄で目が鋭くてタバコを吸う
最初の印象は嫌な奴だった
いつも彼氏の自慢話をして
みんなどこか腫れ物にさわる感じで
彼女と接していた
仕事はできる人だった
でも愛想がなかった
いつもどこか孤独に見えた
それでも中心グループにはいつも参加していて
僕もすこしずつ彼女のことを知っていった
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2人で朝番の日があった
僕は洗浄機からグラスを取り出しながら
アイスコーヒーを作る準備をしていた
その時小さな部品を不注意で落としてしまう
カウンター内の床は少し濡れていて
店の中も暗くなかなか見つけられないでいた
その時彼女がやってきて懐中電灯を持ってきてくれた
そして濡れた床に膝をついて一緒に探してくれた
あったよ
彼女は見たことない笑顔でそういって
何事もなく開店の準備を始めた
単純だ
それで恋に落ちた
っというか多分
最初から好きだった
だからいつも
バイトが楽しくてしょうがなかった
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半年後
彼女が彼と別れた
みんなで慰め会なるものを度々開き
愚痴を聞いた
僕も2人になる時があったので
いろいろ話をした
その中で村上春樹という作家が好きだと知った
彼女はその本についていっぱい話してくれた
そして一冊の小説
ノルウェイの森
これを貸してくれた
これが僕にとっての最初の本だった
村上春樹を知っている人はわかると思うけど
めちゃくちゃ人気はあるんけれど
エンタメ要素は全然ない
初心者には圧倒的にハードルが高い
とかく読めど読めど進まない
話がよくわからない
この世界観はなんなんだ?
わからない
わからない
わからない
それでも
彼女のことをもっと知りたい
その思いで読んだ
そして
読み終わったことと一緒に
自分の思いを告げた
最初は断られた
それでも何度も何度もアタックして
付き合いだした
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彼女とはその後1ヶ月くらいで別れた
他に好きな人がいるって…
相手はバイトの共通の先輩
僕が彼女について相談していた相手だった
でもその先輩は彼女とは付き合わずに
彼女はしばらくしてバイトをやめて
新しい男のところへ行った
それから一度も会っていない
まぁ結構とんでもない人だったけど
一つだけ感謝していることは
本を読むきっかけをくれたこと
僕はその後
村上春樹にハマって本を買い揃えた
でも面白いのか?といえば
今でもよくわからない
すごいのはわかるけど
あと今でも村上春樹が好きだという女性には
少し抵抗がある
割と性描写が多いしね
なんかいろいろ考えちゃう
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こんな感じで
今日は少し自分の昔話をしました
一つだけ最後に
気になる人の読んでるものを聞いて
今度読みますね
その一言には責任を持った方がいい
聴かれた方が僕みたいな奴なら
ずっと覚えているから
安易には言わないように
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