アンタレスの夜 |詩
ホトトギスが鳴いている
「鳴かぬなら……」どころか
ひっきりなしに 懸命に
滲むように響きわたる 夏至の山あい
けれど もう日が落ちる
アンタレス食が始まる
――この場所からは見えないかも
それでも 星食がすんだあと
月に寄り添うアンタレスが
ひと晩中 見れるはず
さそりの心臓で 煌々と
炎のように輝く あの一等星
願いをかければ
雨を降らせてくれるだろうか
乾ききった世界の涯てや
小さな心の庭に
鳴き続けるホトトギスは
やがて夜にとけ 透明になってしまう
ここではない宇宙にも 星がうまれる
アンタレスにも似て 壮麗で
あたたかい星が
※ アンタレス食 =蠍座のアンタレスが月に隠される恒星食24/6/20
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