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望むのは独占なのか

君にもう一度会いたかった。だから僕はここにひとりでい続けた。待っていたんだ。来ないと決めつけたくなかったんだ。

ここからいなくなってまもなく結婚したことは人づてに聞いた。だけど僕は諦めなかった……のではなくて、どうしても君を想い続けてしまうことを止められなかった。別に相手から奪おうという気もなくて、ただ君が僕の心の中にいてくれさえすればそれでよかった。

同じ「ひとり」のまま死んでいくのなら、君を待ちながらのほうがずっといいと思った。実際に会えるか会えないかは関係ない。君は知らない僕だけの問題だから。

ひとりでここにいるのは決して楽ではない。君も知っている通り。だけど君が頼りにしてくれるような存在になるために頑張ってきたつもり。僕なりに。

ふたたび君は僕の視界に入ってきてくれた。離婚をして子供はいないという。まさかと思った。嬉しかった以上に驚いてしまった。いま声が聞けて、姿が見えるなんて。同時に僕の姿も声も届いているなんて。

君と話が盛り上がると天国に来た気分になるし、ひとりで抱えてきたことを打ち明けてくれるたび僕は自分が君の役に立っていることに狂おしいほどの喜びを味わう。

でも、自分の力不足と分かっていても、君が他の人にも頼っているところを見てしまうと、もやもやしてしまう。どうしてという気持ちが僕を激しく揺さぶる。

僕だけを見てほしい。僕に全てを預けてほしい。ふさわしい男になるために努力は惜しまなかったつもりだ。君の全部は僕が優しくするんだ。

「片想い」が煮詰まるといつもこうなる。

彼女から僕以外の全てを奪うつもりなのかと冷静な自分が詰問してくる。独占したいというのは子供と変わらない。わがままだ。君のそばに僕以外の誰か(友人でも知人でもいい)がいたら僕の存在が一気に希薄になるような気がして怖いのだ。

埋もれてしまったら僕の声は届かないし、君の声が聞こえなくなる。いやだ。せっかく奇跡のようにまた僕の近くまで来てくれたのに、また遠ざかってしまうのを繰り返したくない。

あの頃よりもひとまわり以上魅力的になった君は、僕よりも輝いている人たちに囲まれているように見える。だから尚更そこから飛び出して僕だけを選んで欲しいなんていうわがままは虚しい。

君にとっての「いちばん」は誰なの?