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森井の鑑賞記録 2022年9〜10月

【9月24日 トレヴァー・ピノック指揮 紀尾井ホール室内管弦楽団 第132回定期演奏会】

牧歌的なワーグナー、ドラマチックなショパン(15歳のソリスト!)、包容力のあるシューベルトというプログラム。ピノックの伸びやかな指揮が導き出す円やかな弦に陶然となった。ピノックの姿をこの目で見られてよかった。

【9月24日 青柳いづみこ CD・書籍刊行記念コンサート ハクジュホール】

新刊『ヴィンテージ・ピアニストの魅力』でも取り上げた高橋悠治をゲストに迎えた2時間。いづみこさんのソロは温かみがあり、悠治さんのソロは不思議な世界に誘われた。そんなお二人の連弾は聴き応えがあった。息が合った"遊び"を繰り広げていて目で見ても楽しかった。

コンサートは演奏家の存在感に触れる時間をくれる。

【10月7日 シギスヴァルト・クイケン 浜離宮朝日ホール】
ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ(肩のチェロ)とヴァイオリンによる無伴奏リサイタル。オール・バッハ・プログラム。前者は軽やかに音を彫り上げていき、後者は伸びやかな響きを届かせた。楽器と一体になり特徴を引き出す自由で素直な演奏に引きこまれた。

私は弦楽器の経験者ではないけれど滋味ある演奏だったような気がする。

【10月14日 鈴木雅明 紀尾井ホール】

大バッハ最晩年に書かれた謎多き『フーガの技法』関連として出版された全曲。雅明氏は冒頭で「聴くというよりカテドラルに嵌められた煉瓦のひとつひとつを見つけるような感じで」と説く。面妖さに弛まぬ探究心からの光を当てる。後半の優人氏との共演も聴きごたえがあった。

フーガの技法はよく分からないままチェンバロの音が聴きたくて来たが、もしかしたらすごく「マニアック」な場に居合わせたのかもしれない。そうしたところを雅明氏のざっくばらんなトークが笑いをもたらしてくださったし、終演時の優人氏との握手もアツかった。

鈴木雅明の光属性で深いチェンバロを生で聴けてよかった。謦咳に接した感あり。