もっとくれないの?
「ルカくん、はい、バレンタインのチョコレート」
幼馴染の彼女は手渡す。だがどう見ても少ない。
「……いくらなんでもコレは淋しいなあ。ありえない。もうお仕置きだからね?」
おどけながら彼女の脳天にチョップを食らわせた。
ルカが帰宅すると既にコウは夕飯の支度で忙しくしていた。にもかかわらず真っ先にルカの表情が暗いことに気を奪われた。
「おまえ、どうした?」
「あのコがくれたチョコレートが明らかに義理なんだよぅ……。」
場の空気が緩んだ。なんだそんなことか。
「貰えるだけでありがたいと思えよ?」
「コウ…冷たすぎ。……でもそうだよなぁ。」
ルカの下瞼には涙の跡が微かに残されていた。