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歌うよりも面白いこと
設楽が繁華街を久しぶりに歩いていた。何気ない散歩。そこにどこからともなく出くわした柔道部の二人によってカラオケボックスなる狭苦しい場所に押し込まれてしまった。
ステージは新名のものだった。俺と不二山は観客。だが本題はこのあとだった。
不二山は俺の体をまじまじと見ながら問う。「音って空気の振動なんすよね。それを全身で受け止める……ってことは手や腕だけでなく体幹なんかも大事なのか?」
ピアニストの中には毎日ジョギングを欠かさないヤツもいる。俺のレパートリーではそこまでする必要はない。
向かいの席で身を乗り出している子生意気そうな小僧を少し驚かしてやろうと思った。
やはりというべきか新名は目を丸くした。
「ピアノって癒し系なのに中身がハンマーなんすか。だからデカい音も出せる。マジパネェ。聖司さん、勉強になるっす!」