見出し画像

ヘイルエンドってつよいの?

アーセナルのユースアカデミー、ヘイルエンドは世界屈指の育成組織として有名です。
1887年の設立以来、トニー・アダムス、ジャック・ウィルシャー、近年ではブカヨ・サカなど、世界トップクラスの逸材を輩出してきました。

ChatGPTにもお墨付きをいただいています。

…アレクサンドル・ラカゼット?

でもさ、

ヘイルエンドって「飛びぬけて」強い訳じゃないよね?


シティ相手に0-6で負けてるし。

"イングランド最高級の逸材"と注目されるヌワネリ、ルイス=スカリーが揃って所属するU-18チームも中位(12チーム中8位)なんですよね。

3月時点。
同世代でもトーナメント「FAユースカップ」は快進撃を見せました

まあ必ずしも「チームの強さ」=「アカデミーの優秀さ」とはならないんですが。

そんな一抹の疑問を抱いていたなか、先日タイムラインにこんなツイートが流れてきました。

確かになあ…

特に今季はバイチェティッチ(LIV)やガルナチョ(MUN)のように、ほかのBIG6が若手の積極的な抜擢に成功するなか、アーセナルのユース選手はベンチを温めるだけで、抜擢の機会は少なかったように感じます。

いわゆる「BIG6」と「other14」では、資金力の違いから輩出できる選手の品質に差があるように感じていますが、BIG6に限定するとそこまで変わらない気も…


そこで今回の研究テーマ。

「プレミアリーグのBIG6では、アカデミーの"優秀さ"に違いはあるのか?」

検証していきたいと思います。


〇手法

1. アカデミーと同じトップチームに昇格した、いわゆる「生え抜き」選手を(そのチームの)出身と定義します。
つまり、こういうことです。

Bukayo Saka (Arsenal U-23→Arsenal)
…アーセナル出身
Eric Garcia(Man City U-23→Man City→Barcelona)
…マンチェスターシティ出身
Harvey Elliott(Fulham U-18→Liverpool U-21→Liverpool
…リバプール出身
Romeo Lavia(Man City U-21→Saints
…定義なし

2. 選手の価値を測る指標として「通年合計での」市場価値に注目。
キャリア全体での"実績"について比較することで、プレーした時代の異なる選手どうしの比較を可能にしました。

ブカヨ・サカを例に挙げます。
赤線部分の面積(TMP=日数×市場価値)を計算。

※TMP = Time × Market Price

©ふらんこ(自作)
©️Transfermarkt.jp

市場価格は需要と供給のバランスから成り立つため、ポジションや年齢層によって評価が違う"ムラ"のある指標ですが、今回は「クラブがどれだけ価値の高い(評価される)選手を育てたか?」という観点に絞って分析しました。


〇結果

①クラブごとの比較

チェルシー、リバプールの2クラブがTMPの合計、平均値で高得点を出しています。アーセナルがそれに続いています。
スパーズはトップチームでプレーした選手が少なく、アカデミーがチームにもたらした恩恵が少ないと考えられます。

箱ひげ図を用いて見方を変えてみます。
四分位範囲の1.5倍を超えた値を外れ値として扱っている(テューキー方式)ため、誤差が少なく全体の傾向がつかみやすい特徴があります。

リバプールはスターリング、TAAの得点が飛び抜けて高く、平均値が全体の傾向より上振れしている印象です。
ユナイテッドもラッシュフォードの上振れが影響しています。また選手数のわりに全体の獲得ポイントが低く、選手の「質」がそれほど高くないと考えられます。
チェルシーは飛び抜けて高い選手はいませんが、他クラブより四分位範囲が上に大きく、一人一人の価値が高いと考えられます。
他3クラブの四分位範囲はそれほど変わりませんが、アーセナルは上位25%の得点が大きい傾向があります。

各クラブに焦点をあてて比較してみましょう。


②選手ごとの比較【輩出した選手の特徴】

グナブリー、ベジェリン、サカの3人が60000ptを超えています。長年トップレベルで活躍している選手を育てています。
またスミスロウ、ウィロック、エンケティアなどここ数年で昇格した選手が比較的高い数字を残しています。18/19シーズンに"Director of Player Development"に就任したマルセル・ルカッセン氏のユース改革は成功したといえるでしょう。


(100000ptを超える選手はいませんが)60000pt以上は4人、40000pt以上は8人と、トップレベルで活躍する選手を数多く輩出しています。マウント、リースジェームスら20代前半の、成長が期待できる有望株も輩出しており、総合的な育成力では頭一つ抜けています。
(ユースからの)昇格シーズンとTMPとの関係性は薄く、この10年で継続的に評価の高い選手を育ててきたことが読み取れます。


弱冠22歳のフォーデンが飛び抜けた数値を出しています。
ただ彼以外で40000ptを超えたデータはなく、選手の数も少ないためユース組織の実績は前の2クラブに劣っています。
一方、2014年に設立されたCFA(City Football Academy)のユース改革によりリコ・ルイスやパーマーなど楽しみな選手も増えてきました。3月のイングランドU-18代表には最多6人が召集されています。今後の伸びに期待できるでしょう。


アカデミー最大の功績はラッシュフォードを輩出したこと。15-16シーズンから安定した評価を残し続けており、ポイントは全体2位(151261.5pt)です。10〜20年に一度のスターを育てました。
一方、彼に続く選手がいないのが気がかり。60000ptを超えたのは1人、40000ptを超えたのは3人と、リンガードら中堅の伸び悩みが目立ちます。ガルナチョ、マイヌーら若手が成長できるでしょうか。


※スターリング(262759.8pt)は長すぎてカット。

3クラブで161ゴールを挙げたイングランド屈指の好(?)選手、スターリングが単独トップ。24歳のアーノルド(全体3位)が続き、2人で400000ptを稼いでいます。40000ptを超えた選手はスソを含めた3人で、上位層とそれ以外(伸び悩み組)との差が大きい印象ですが、ワールドクラス2人を育てた点は高く評価できるでしょう。
エリオット、カーティスら若手が上位に入っている点も好印象です。


8人合計での獲得ポイントは142478.2pt。スターリングの1/2程度の評価しか獲得できていません。ここ数年の補強を見ても、デレ・アリやロメロ、ブライアン・ヒルら他クラブで育った有望株を獲得する、アカデミーに頼らない育成方針を立てていることがわかります。
今季は22歳のスキップがアカデミー出身の選手として(久しぶりに)出番を得ています。期待がかかります。


〇まとめ

※私のイメージです

数値に変換して客観的に見るべきなんですが、平均とか標準化を考えるのが面倒になって諦めました。すみません。

時間があればBIG6以外のチームも分析してみたいです。ハマーズとかワトフォードとか。

以上。


この記事が参加している募集

#サッカーを語ろう

10,983件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?