日本は移民を受け入れるべきか?


2018年に入管法が改正されたことにより、日本は移民の受け入れを拡大させる方向に動いた。近年、日本では急速に高齢化が進んでおり、労働人口が減っていく人手不足の状態にある。そのため今回の法改正は外国人労働者を増やすことによって労働人口の減少を補うことが狙いである。

しかしながら、安倍総理の答弁を聞いていると、移民という言葉に対して国民は未だに抵抗感を持っていると感じられる。答弁を行ってる間、安倍総理は一貫して移民という言葉を使わず、「外国人労働者」という単語を用いることで日本に今後入ってくる外国人が恒久的に滞在するのではなく、短期的なものであるという風に装った。これは自民党の支持母体である保守系の人々への配慮を含めたものであるが、短期的に日本に滞在するだけなら、どうやって安定的な労働人口の確保が可能なのか甚だ疑問である。

結論から言うと、筆者は移民の受け入れは不可避だと考える。だが日本で現存している移民に対するステレオタイプや偏見のせいでファクトに基づいて議論がなされていない。本稿では移民受け入れに消極的な人々が用いる前提条件に反論する形をとることで日本の移民政策の議論を活発化することが目的である。

移民は犯罪率を増加させる?

日本において移民受け入れることで最も懸念されている事項のひとつが犯罪率の増加である。そんな決めつけは差別主義だと非難されるだろうが、実際にその現象はヨーロッパで起きている。シリア内戦に伴うISISの台頭により数多くの難民が家を追われて、新拠点を求めるためにヨーロッパ諸国に流入した。とりあえずは身の安全を確保のは良かったものの、彼らが直面したのは貧困であった。言葉や文化が全く違う環境に移住してしまうと職を得るのは簡単ではないことは容易に想像できよう。そのため、市場などで食べ物を盗んでしまい、最悪のケースでは絶望のあまり人を殺める場合もある。

また実際に数字が移民を流入による治安の悪化を示している。

‐2016年に国連が発表した統計によると国別10万人あたりのレイプ件数においてはスウェーデンは66.5人で世界第二位の数字。

‐スウェーデンの銃撃事件の被害者は2004年から2016年までに50%増加した。

‐イタリア、ドイツでは移民が住んでいる特定の地域では法の支配が及ばない事態が発生している

これらの事例を考慮して反移民は国民を守るために移民流入を防ぐべきだと主張する。そしてこの主張は二つの根拠に基づいている。

‐日本は移民を受け入れていないのだから安全である。

‐移民を受け入れたら犯罪率が大きく上昇する。

しかしながら、これらの事例、根拠を日本に直接当てはめることは間違っている。なぜなら、日本は世界第4位の移民大国である。

2018年のデータによるとOECD加盟国内での移民受け入れ数において、日本は韓国を抜いて第4位になった。ちなみにトップ3は上から順にドイツ、アメリカ、イギリスである。移民という言葉を聞くと「貧しい国から働きに来た人」を連想するかもしれないが、国連での定義は「経済状況にかかわらず外国で一年以上働く人」のことである。そして、その定義の枠に入る人が約247万人、在留外国人として日本で滞在している。

意外な数字だと思うかもしれないが、大都市のコンビニやファーストフード店に行くと、ほとんどが中国や東南アジアのから来た人で営業されており、日本はカナダに次いで海外のホワイトカラー人材の受け入れに積極的な国である。ヨーロッパ諸国の現状のようにカオスな状況ではなく、移民は日本社会で日本人と共存している。

移民は仕事を奪う?

トランプ氏は大統領に就任してから不法移民に対して厳しい姿勢を見せている。国境警備を厳格化することにより、不法移民の流入を大幅に減らし、今年度の一般教書演説では不法移民に甘い対応を行う”聖域都市’への対決姿勢を露わにした。

これらのトランプ大統領による不法移民に対する強硬的な政策は犯罪率の低下を目指すものであると同時に不法移民によって奪われる雇用を守ることが目的である。

企業からしたら人件費は安いほうが望ましい。そのため、告発されたら強制送還になる不法移民は格好のカモである。普通のアメリカ人では働かない賃金で働いてくれるためでる。その影響で企業は人件費の高いアメリカ人ではなく、不法移民を優先的に雇用して、自動的に高いスキルを備えていないアメリカ人は淘汰されてしまう。そして、そのスパイラルを止めるための政策を一定の成果を見せている。

アメリカが不法移民により仕事にありつけない人が出てくる状況で、日本も同じように雇用が無くなってしまうと主張する人いるが、それは論外である。なぜなる日本は仕事が余りに余っているからである。急速な少子高齢化の影響により消滅の危機にある地方自治体が出てきており、中小企業では経営が安定していても後継者がいないために潰れてしまう企業もある。また、ある予測値によると2065年には人口が8808万人まで下がると想定されている。

今のままでは日本の労働人口は膨張していく社会保障費を支えることができないのは当然のことであ。しかし、日本に永住してもらう移民の数を増加することにより労働人口を補填できれば、未来の今の予測値より悪くなることはない。だからこそ、変なプライドを持たず日本社会が直面している危機を反移民派の人々は理解しなければいけないと筆者は考える。

移民を受け入れなくてもAIで何とかなる?

いくら統計や事実は示して必要性を説いて、頑なに移民を拒否する人もいる。その人たちはAIが何とかしてくれると主張する、彼らはAIを使用することにより移民が受け入れなくても日本の生産性を維持もしくは向上できると考えている。百歩譲ってそれが事実だとしても問題はそのような人材が日本に残るかどうかである。

日経新聞のグラフによると成長分野で日本の賃金は割安である。


画像1

また、2017年に中国の通信機器大手ファーウェイが日本で大学卒のエンジニアを「初任給40万円」で募集して大きな話題になった。

アジアは今最新のテクノロジーに精通している人材の争奪戦を繰り広げている。そんな中、日本の大卒の初任給は20万円台前後をうろうろしている。本当に優秀な人材からすると日本に残りインセンティブはないに等しく、中国やシンガポールの企業の方が魅力的である。

それだけでなく、日本は優秀な若者が国を離れていく事態より、低技能、高技能外国人労働者の日本離れを危惧しなければいけない。

芹澤氏によると、技能実習制度は、低賃金、長時間拘束など、ブラックな環境で働かされることも多く、国際的には「現代の奴隷売買」などと揶揄される場合もある。2017年には半年間で失踪者が3000人を越え、国際貢献をタテマエとしながら、実質的には現場の労働力不足を外国人で穴埋めしているにすぎないと主張している。それに加え、外国人留学生を相手に“国際貧困ビジネス”ともいうべき商売をしている学校も存在する。それらの学校は授業料が年間70~80万円かかり、留学生はそれによって困窮していき勉強がままならなくなっている。

日本が何もしなくても移民が入ってくるというのは傲慢な考えであり、こちら側から日本で働くことのインセンティブを示さない限り、日本人さえも日本から出ていく未来も想定しなればならない。

まとめ

冒頭でも述べたように日本における移民の受け入れは不可避であり、既に多くの移民が日本で生活している。このことから移民を受けいる、受け入れないの議論が現状に即していないことが分かる。私達がなさねばならないことは日本が移民を受け入れているという前提に立って移民政策について議論することである。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?