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【地方紹介16】ノール・パ・ドゥ・カレー地方

<地方データ>
■【francerでの地方名呼称】:ノール・パ・ドゥ・カレー地方
■【旧地方圏区分/地方庁所在地】:
ノール・パ・ドゥ・カレー地方(Nord-Pas-de-Calais)/リール(Lille)
■【現地方圏区分/地方庁所在地】:
オー・ドゥ・フランス地方(Hauts-de-France)/リール(Lille)
■【旧地方圏区分における所属県と県庁所在地】
●ノール県(Nord /59)県庁所在地:リール(Lille)
●パ・ドゥ・カレー県(Pas de Calais /62)県庁所在地:アラス(Arras)
 
 
★地方概要★
 
フランス最北部に位置し、ベルギーと国境を接する地方。中心地のリールは、工業都市として発展してきましたが、近年は先進都市として、無人地下鉄や新たな都市開発プロジェクトとして、様々な取り組みが行われています。また、北部の都市カレーは、歴史的にも知られる街ですが、地理的には英仏海峡を挟んでイギリスもすぐそこという場所です。リールはフランス・フランドル都市の中心となり、ベルギーに近いこともあり、フランドル風の街並みが特徴です。市庁舎など、それらの街並みはベルギーとフランスの鐘楼群として、世界遺産にも登録されています。地方全体は、森林地帯が広がり、北西部では英仏海峡沿いに美しい海岸も広がり、豊かな緑と海があります。ベルギー風の郷土料理など、北フランスの国境近くという特徴を感じることができる地方です。
 
フランスでは、北の端ですが、国境を先にベルギーがあり、カレーから海を渡ればイギリスというこの地は、古くから商業路でありました。中世には、織物工業が発展し、18世紀以降は石炭産業が盛んであったため、ランス(Lens)付近は炭鉱業で発展しました。街並みとしては17世紀のフランス・フランドル地方の街並みが美しく、アラスの英雄広場やリールのド・ゴール将軍広場の家並みは他では見られない大きな広い場の美しさを感じられるでしょう。位置的に第二次世界大戦の戦場となり、映画の舞台ともなったダンケルクは主戦場の一つとなりました。

美しいカレーの市庁舎

★町や村★
 
北部のリール、南部のアラスが比較的大きな町となりますが、中でもフランスの大都市に数えられるリールが中心都市といえるでしょう。TGVも停車しベルギーへの玄関口ともなる町は滞在拠点としては最適といえるでしょう。フランス・フランドル風の街並みや美しい鐘楼が特徴的ですが、ゴシック・フランボワイヨン様式の美しい市庁舎が残り、中世の雰囲気を今に残すアラス、リール南部で鐘楼と鐘でしられるドゥエ、長い英国領時代があり、いまだに英国への玄関口といえるカレー、アール・ヌーヴォーやアール・デコ、そして英国風の街並みが残る、西部のリゾート、ブーローニュ・シュル・メールなどがあります。都市の再開発の一環で、炭鉱都市ランス(Lens)には、世界的に有名なルーブル美術館の別館が開館し、新しい観光地として注目されています。

ランスのルーブル美術館別館

ノール・パ・ドゥ・カレー地方の中心地リールは、中世のころから商業、毛織物産業などで栄え、近代には鉄鉱など、工業として発展を続けました。パリ、ブリュッセル、ロンドンのどこへも比較的近いという立地もあり、現在でも先進的な都市として発展を続け、歴史的建造物が残る旧市街と近代的な都市が見事に融合しています。グラン・プラスと呼ばれる旧市街のド・ゴール将軍広場が町の中心となり、カフェやレストランが軒を連ねてにぎわっています。この一角にある旧株式取引所は17世紀のフランドル・バロック様式の建物で、壁面に施された繊細なレリーフなど華麗な装飾がなされたとりわけ美しい建物です。そのほか、17世紀にルイ14世が建造を命じた5角形の装飾的な城塞も、当時の装飾などを残しており、城塞とは思えないほどの美しさを誇ります。また、13世紀に創建された施療院、オスピス・コンテスは現在美術館となっている建物ですが、15世紀の病室の木組みやデルフト焼きの青い絵付けタイルなど当時の装飾も見学することができます。市内のリール美術館では、中世美術から現代美術まで、幅広いコレクションを収蔵しており、たっぷり楽しめる美術館となっています。

リールのド・ゴール将軍広場

アラスは、ノール・パ・ドゥ・カレー地方南部の町で、リールとアミアンの中間の地に位置します。中世にはサン・ヴァースト大修道院を中心に発展し、穀物の交易、ラシャ製造などで町は豊かになっていきます。トルーヴェールと呼ばれる北仏詩人たちが劇場のために作品を書き、文化的な発展もありました。その後、タペストリー製造などでも栄えた町は、1572年に、豪華な市庁舎を建設し、塔がそびえる美しいフランドル・ゴシックといえる建築物となっています。(現在物は、1919年に再建されたもの)この市庁舎がある英雄広場と隣のグラン・プラスは、中世の雰囲気が見事にのこっている界隈となっています。残念ながら、第一次世界大戦の砲撃で、街並みはひどく破壊されてしまいましたが、厳密な町づくりがされていたアラスでは、その後、見事に復元され、17~18世紀の街並みが見事に再現されています。

見事に復元されたアラスの旧市街

★名産品と郷土料理★
 
海も大地もあるノール・パ・ドゥ・カレー地方では、特にフランドル(ベルギー)の影響を受けた料理が多いのが特徴です。また、フランス国内でビール生産も盛んであるため、ビールを使った料理も多くあります。
 
典型的なものとして、カルボナード・フラマンド(La Carbonade Flamande)があります。牛肉のビール煮込みで、ベルギー料理ですが、ノール・パ・ドゥ・カレーでもよく目にします。ベースの煮込みにビールを使うので、この地方でもよく作ら得れているのも納得ですが、味付けのベースとなるビールは濃厚で香りも華やかなビールが良いとされています。 お肉に煮込み料理は他の地方料理にもあり、主にはワインを使って煮込み、お肉をやわらかくしますが、この地方では、気候的にブドウの生育にはあまり適しておらず、名産のビールを使っての煮込み料理が生まれました。また、同じく鶏肉をビールで煮込む、鶏肉のビール煮込み(Coq a la biere)などもあります。

カルボナード・フラマンド

オシュポ(Hochepot)は音からも、ちょっとフランス料理ではないような名前ですが、フランス料理でいうポ・ト・フのような料理で、牛肉、羊肉、豚足や豚耳、ソーセージなどに、にんじん、タマネギ、キャベツなどの根菜をじっくりと煮込んだ料理です。ポ(Pot=鍋)をオシェール(hocher=ゆする)する。という言葉から名前がつけられたといわれます。煮汁は別にしてスープとして、煮込んだ野菜やお肉をスープとは別に食します。

オシュポ

ベルギー料理が思い浮かぶワーテルゾーイ(Waterzooi)ですが、ノール・パ・ドゥ・カレーでも沿岸部で食べられる料理です。鶏肉を使ったものもありますが、ワーテルゾーイは、元々は川魚を煮込んだもので、鶏肉を使ったものは、ゲント風ワーテルゾーイと呼ばれます。海の魚を使うこともありますが、主に淡水魚と野菜を煮込み、クリームソースやレモンなどで味付けすることが多い料理。フランドル地方の伝統的な家庭料理といった雰囲気の料理です。

ワーテルゾーイ

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