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ボンジュールおじさん

引越し先を決めた時、近所にスーパーがあることを条件の一つとして選んだのに、いざ引越して来たら閉まっていました。うろたえて、通りすがりの人に聞いたら、工事のために一時的に閉店しているとのこと。

それで、毎週一回、バスに乗って買い物に行くことになりました。
引越して1か月ほど経った頃だと思いますが、買い物のためバス停に行ったら、恰幅のいい体格でハンチング帽をかぶり、小ぶりの買い物バッグをさげたおじさんがいて、近づいてきた私に向かって元気よく
「ボンジュール!(こんにちは)」
と言うので、私も挨拶しました。知らない人にボンジュールって言われることは時々あるので、あまり疑問にも思わず、誰にでも気さくにボンジュールって言う、陽気なおじさんなんだと思いました。

それからも、時々、このボンジュールおじさんとバス停で一緒になり、挨拶し合うようになりました。ハンチングにマスクなので、顔が分かるというより、背格好やいつも持っている買い物バッグで認識しています。

今の世の中、みんなマスクをしていることもあって、よくすれ違う人の顔を全然覚えられなくて、ご近所さんでも、連れているワンちゃんを見て初めて気づいて挨拶している私。でも、私のことは、アジア人だからかすぐに覚えてくれる人がいて、アパートの玄関やエレベーターで一緒になって、親し気に話しかけられる事があり「もう話したことあったかしら?」なんて思いながら返事していることがあります。

それで、もしかして、ボンジュールおじさんが私に最初に挨拶してくれた時、既におじさんは私のことを「よく会う近所の人」と認識していたのかもしれないと思いました。

ある日、スーパーの帰りにバスを待っていたら、ボンジュールおじさんがやって来て、同じようにバスを待っていた一人の男性を見て「お!」という顔になり、私には気づかずに、その人に「ボンジュール!」と言って近づいて行って話をしていました。顔見知りに久しぶりに会ったという感じでした。他にも五、六人は人がいたのですが、おじさんは他の人には挨拶しませんでした。ということは、やっぱりおじさんは、私に「また会ったね」というつもりで、挨拶した可能性が高いですよね。
誰にでもボンジュールと言う、陽気すぎるおじさんではなかったのでした。

フランスは、道でよくすれ違うだけの人でも、顔見知りになってくると、ボンジュールと言うことがあります。いつも行くパン屋の横でよく物乞いをしている人がいて、夫が先にボンジュールを言い合うようになっていて、それで私も挨拶し合うようになりました。
夫の話ですが、何年もボンジュールと言ってすれ違うだけの仲だった人と、ある日どういうきっかけか話をしたら、引越しすることになったと言われて、5分ほど身の上話をして別れたそうです。
もちろん、よくすれ違っても何も言い合わない人もいます。

工事で閉店している近所のスーパーに、「もうすぐ営業再開!」と貼り紙がしてあって、「もうすぐ」っていつだろうと思ったら、3月末ごろのようです。ボンジュールおじさんと、営業再開になったスーパーですれ違って挨拶し合えたらいいなあなんて思っています。

今日も読んで下さり有難うございました!


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