本のすすめ歌集編

こんにちは。永田佑衣です。

突然の本のすすめ。

短歌、特に現代短歌が好きだ。大学に入ったばかりの時に週7で一緒にいた先輩に穂村弘を教えてもらったことがきっかけで短歌にはまり、それからずっとちまちまと歌集を集めている。

本を読むのが遅く、何冊も並行して読んでそのうち放置してしまうタイプなので家には読んでない歌集や歌論の本がたくさんあるのだけど、現時点で好きだなと思う本をまとめたくなった。短歌のいいところは、サクッと読めるところと、小説のようにつまらないから読むのをやめてしまうようなことが起こらないところだと思う。それぞれがよくわからなく、それぞれがなんとなくいい。疲れた時に眺める用の一冊としておすすめの歌集を紹介していきたいと思う。


恋人不死身説/谷川電話

絶対に、寒がりで冬はマフラーぐるぐる巻きの人が詠んだんだろうな。一貫してなんだか冬っぽい。そんでいい意味でアホっぽい。

クーラーをつけたら寒いだけだった なんでクーラーつけたんだろう

歌集を読んでいると、なぜこんなことを詠もうと思った??というそのまんま短歌がよくあるけど、本著のそれはそのまんまの純度がめちゃくちゃ高くてちょっと怖い。

平素よりお世話になりたい者ですが少し咀嚼を見せてください
ゴキブリがきみへと走るぼくからのラブを具現化させた感じに

あんまりにもあけすけで、目がくらむ。この本は歌もいいけどあとがきもすごくいい。本当に「ラブ」の人で、この人がこの歌を詠むの、超わかる、という優しくて可愛いあとがき。


玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ/木下龍也・岡野大嗣

ここ数年で一番衝撃を受けた歌集。二人の歌人が上段、下段に分かれて二人の男子高校生の7月1日から7月7日を詠むコンセプト。とにかく打ちのめされた。

「『ぼく』と『僕』のミステリーでありサスペンスでありBLであり遺書でありそのすべてを内包した青春の31文字」という感想、1年後に見てもマジで「それ」って感じ。

おまえとはできないことをしたくなるおまえの部屋でだらけていると
(ぼく/きみ)のからだはきっと(きみ/ぼく)に(ふれ/ふれられ)るためだけにある

オーディションの日、練馬区の稽古場に向かうまでの電車の中でこれを読み切り、自己アピールの時に「来るまでの電車でやばい歌集を読んでしまい今何も考えられません」みたいなことを言ってしまったのを覚えている。木下龍也さんの「きみを嫌いな奴はクズだよ」と岡野大嗣さんの「たやすみなさい」もいい。

水銀飛行/中山俊一

会うと開口一番に「おっぱい触らせて」と言ってくるあんまり好きじゃなかった大学の先輩が出した歌集。大学の広場みたいなところで4階?5階?のゼミ室まで聞こえるでかい声で弾き語りをするような変な人だったけど、

逆になりふたたびはじまることさえも砂時計に似た裸体を抱く
AVの検索窓に【すずらん】と打ち込めば空 朝焼けである
雨が降ってて、ふたりは別の傘さして、でも、手はつないでて、手だけが濡れて

こんな歌を詠む人だから嫌いになりきれなかった。いつだったか、友達と彼と授業の合間に、同じテーマで短歌を詠み合ってとにかくお互い褒めまくる会をやったことがあって、あれはたいそう楽しかった。


短歌って、31文字の中に途方もない情報が入ってたり入ってなかったりして、それが歌人と呼ばれる人の感受性と読者である自分の感受性でボンと膨らむのがとても楽しい。あと自分でいい悪いがあんまり分からないからこそ、自分で適当に詠んでみると意外となんか様になって見えるのでそれも楽しい。興味が沸いたらぜひ読んでみたり詠んでみたりしてください。

ということで私もしばらく書いていなかったのだけれど、久しぶりに短歌を詠みました。有料部分にて、大昔に詠んだのと合わせて、

ピクニック 理想の形はクマがいて あときりんバク クレープ焼き器
学校の外周したことないやつがグラウンドでガソリンをまいてる

こういう感じの短歌を20首くらい載せたのでよかったらぜひ。

本のすすめ歌集編でした。

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