ふらじーる

私の胃袋は、金の叫びを揚げた。水筒の中にはもはや、一滴の水もなかった。私は砂漠の中にい…

ふらじーる

私の胃袋は、金の叫びを揚げた。水筒の中にはもはや、一滴の水もなかった。私は砂漠の中にいた。私の胃袋は金の叫びを揚げた。しかし私は悲しみはしなかった。

最近の記事

『やがて君になる』への覚書

『やがて君になる』が完結した。主にタイトルにまつわる雑感を書きたい。この作品における「百合とは何なのか」を語るものではないので、そちらを期待されている方には適さないものとなるだろう。 内容についての詳しい記述は割愛する。最終巻まで読んでいる人を前提にここでは書いていこうと思う。 結局「君になる」とは何だったのか。最後まで読んで、最初に疑問に思った。タイトルの回収をするものだと思っていたばかりにやや肩透かしの感があったのだ。もちろん、小糸さんと七海先輩の選択は、およそ百合作

    • 『夜と海』への誘い

      郷本氏がラバココミックスで連載している漫画『夜と海』がとても良かった。 内海彩と夜野月子という性格が全く異なる二人の少女。 「時折、どうしたって興味が向いてしまうものがある。それは天上のシミだったり、壁を這うナメクジ、不規則に欠けた灯りーー」 夜野月子のモノローグから物語は始まり、ある日プールで泳ぐ内海彩を見かけた時、彼女は「わずか一瞬」の間「沈んでしまった」。 同じクラスであるのに名前も知らなかった内海に、どうしようもなく興味を持ってしまった夜野。端正な顔立ちで、周

      • 『ドグラ・マグラ』への雑感

        「胎児よ胎児よ何故躍る。母親の心がわかっておそろしいのか」 そんな冒頭の詩から物語は始まる。夢野久作の書いた長編小説である『ドグラ・マグラ』は、日本の三大奇書と呼ばれている。奇書かどうかはともあれ、どちらかというとアンチミステリの系譜であると言えよう。 主人公は目覚めると記憶を失っており、監獄のような場所に居る。隣の「六号室」には少女がおり、自分を「お兄様」と呼ぶ。 記憶喪失の謎を解き明かすため登場する若林教授は、ヒントをたくさんくれるが、一向に主人公は思い出すことがで

      『やがて君になる』への覚書