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日々の事44

淀を愛した、孤高のステイヤー

ウマ娘シーズン2第7話『祝福の名前』、めちゃくちゃ泣いた。
ので、今日は馬のこと書きます。
この話の主役はライスシャワーだ。略歴については詳しく触れないが、メジロマックイーン、トウカイテイオーと同時代の名馬である。
伝説の馬として名前が挙がることが多いが、実は戦績的には25戦6勝と、他の2頭に比べると見劣りする。だが、中身は素晴らしく、そのうち半分の3勝がGⅠ勝利。しかも2レースはレコード勝ち(1992菊花賞・1993天皇賞春)だ。

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そして何より存在感を残したのは、ウマ娘でも描かれているように三冠馬に王手がかかっていたミホノブルボンとの菊花賞対決、そしてメジロマックイーンの三連覇がかかった天皇賞春対決だ。

両馬の栄光を打ち砕き、「関東の刺客」と呼ばれたように当時は半ば悪役のような扱いを受けていたし、実際そう記憶しているファンも多いだろう。かつて放映されたJRAのCMでも「ヒールか、ヒーローか。悪夢か、奇跡か」と紹介されているように評価は分かれるところでもある。ウマ娘でもそのあたりはクローズアップされている。7話はまさにそれがテーマだ。
だが、こうした世間の風潮に主戦を務めた的場均は後年に自著でこう語る。

僕らは勝つために、最大限の努力をしている。その努力には、さまざまな思いや戦略が、たとえひとつでも違っていたら勝利を勝ち取ることなどできないほどの緊密さ、複雑さで絡み合っている。そのあたりをこそ見てほしいのだ。それこそが勝負の面白さ、レースの面白さでもあると僕は思う。
アイドルだとか悪役だとか、馬たちを擬人化しては、ドラマ仕立てで眺めるのも競馬のひとつの楽しみ方なのかも知れないが、そうした見方では決して感じ取れない、ずっと奥の深い、面白い世界が、そこには広がっているはずである。

何かと競馬にドラマを追い求めてしまうものだが、関係者や、なにより馬自身は正義感や悪心で走っているわけではない。馬はいつでもひたむきに走っている。
さて、ライスシャワーの話に戻るが、悲しいことに彼自身は1995年の宝塚記念で非業の最期を遂げてしまう。これは思い出したない人には決して思い出したくないことだろう。自分もそうである。
では、ライスシャワーは果たして世間のイメージ通りずっと悪役だったのだろうか?
決してそんなことはない。そう断言できるのは、彼が宝塚記念で人気投票1位になって出走したこともあるが、前走にあたる1995年の天皇賞春を見ればハッキリする。

最後の直線、大外から強襲するステージチャンプの猛追をクビ差で退け、見事な勝利を飾った。
ゴール後には万雷の拍手と歓声。2年越しの復活劇にかつてヒールと称された不穏な影はもはや無かった。彼はこの時まさにヒーローだったのだ。
実況の杉本アナが「おそらくメジロマックイーンもミホノブルボンも喜んでいるでしょう」と述べるのがなんとも憎らしい。

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淀を愛し、淀に散った孤高のステイヤー。ライスシャワーよ永遠に。
彼の記念碑は京都競馬場に建立されている。現在、京都競馬場は全面改修中であるので競馬は開催されていないが、また折を見て訪れようと思う。

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今日はここまで。

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