新型コロナと結婚式のキャンセル費用(式場への言い方)と式場のあるべき対応方法

新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言を受けて結婚式をキャンセルしたが、キャンセル費用を請求されたという場合、キャンセル費用を言われるがまま支払わなければならないのでしょうか?

注意:以下はあくまでも一般的な見解であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。トラブルになったら弁護士に相談してください。

事実設定

緊急事態宣言後、結婚式をキャンセル

結婚式の予定日は緊急事態宣言期間以降(とはいえ夏頃までを想定)

式場との契約書にはキャンセル時にはキャンセル料を支払う条項がある

という場合です。

結論から言うと、

①原則キャンセル料条項通り支払わなくて良い。

②ただし、結婚式会場の業者のキャンセルによる通常の損害程度は支払わなくてはならない。

③それ(通常の損害)は契約書記載のキャンセル料よりも安い場合が多いのではないか?

です。以下説明します。

①原則キャンセル料条項通り支払わなくて良い

民法には、「ある義務を行うことが誰のせいでもなく不可能になったら、義務の対価の支払いも拒否できる」という意味の条文があります(536条)。

本当はもっと深い意味があったり、なんで消滅ではなく拒否なんだとかいう深い議論があるのですが、長くなるのでとにかく「お前の義務が不可抗力で不可能になったら俺も払わなくて良いよね」が原則なんだと考えてください。

結婚式場の場合、仮に新型コロナウイルスが蔓延したことによって「もう結婚式するの社会常識的に無理だよね?」ってなったら、

「結婚式場の結婚式会場をその日に使用させて、付属する様々なサービスを提供する義務を行うことが誰のせいでもなく不可能になったので、その義務の対価である料金の支払いも拒否します。」と新郎新婦は言うことができます。

これが①です。

社会常識的に無理かどうかは、結婚式が予定されている日程や地方の状況との兼ね合い(流石に12月は今から不可能とは言えないかと思います。)もありますが、どうでしょうか。現時点で5月中は絶対無理、6月もあやしいという感じではないでしょうか?ここは具体的事案に応じて判断が分かれるでしょう。いくら「健やかなる時も病める時も」と誓う場所であるとしても、今結婚式、特に披露宴を開催することは非常識とされて開催は不可能なのではないでしょうか。

②ただし、結婚式会場の業者のキャンセルによる通常の損害程度は支払わなくてはならない。

でも「契約書にキャンセル料○万円とか、○パーセントとか書かれているからそれは支払わないといけないんじゃないの?」と言われたり考えたりするかも知れません。

しかし、消費者契約法9条1項1号には「キャンセルするときにキャンセルに伴って業者に発生する平均的な損害を超える約束は超える部分を無効にするからね!」という意味の条文があります。

よって、契約書に何が書いてあろうと、消費者契約法に違反する部分は無効になります。

キャンセル料を契約書に従って式場から請求された場合、新郎新婦は

「でも消費者契約法で、式場さんに発生する平均的な損害を超える部分は無効なんですよね。平均的な損害かどうかについてご説明いただけますか?ご説明がちゃんとなされて納得出来ればその部分についてはお支払いいたしますが、契約書通りだからというだけでは無効な部分についても支払いをすることになってしまいできません。そもそもこの引き出物代ってまだ発注かけていないんじゃないですか?あとそもそも私たちがキャンセルしたからといって「『私たちの予約がなければ他のお客様の式が出来た』状況なんですか?」と言えます。

また、実際に式場を見に行っていたら、「この前日曜日に前通りましたけど式やってなかったように思いますが」ということも出来るでしょう。

これが②です。

③は、②でも触れましたが、通常のキャンセル料の場合にも増して、現状は、そもそも「私たちがキャンセルしなかったら他のお客様の式が出来た状況ではない。」と言えるのではないでしょうか。よって、損害が通常より少ないはずです。

式場のあるべき対応方法

もちろん式場も経営をしなければなりません。

しかも式場は、様々な方の思い出の場所でもあるのですから、出来れば長く経営することは式を挙げた方々の想いでもあります。そういった想いに対する責任もあり、キャンセル料を取らなければならないことも当然です。

よって、キャンセル料の約束をする場合や、実際に請求する場合には、式場側の損害について説得的な細かい明細を出すべきです。式を行うという仕事をする代わりに、やむなくキャンセルに至った新郎新婦に対してご納得いただける細目を作って説明するというのが仕事だと考えるべきですし、それが今後再度ご契約いただく方法かと思います。

また、キャンセル料をいただくとしても、再契約していただいた場合には一部を充当したり、オプションサービスに充当出来るという調整方法もあろうかと思います。




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