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【見えてきた日本のD2C】D2Cは単なるブームか?日本から世界へはばたく必然性

こんにちは、フラクタPRチームです。今回は【見えてきた日本のD2C】3連載最終回、D2Cは一過性のものなのか、世界で通用するには、についてお伝えします。

各国に配慮したローカライズが世界進出のカギ

ユーザーへダイレクトに販売を行うD2Cブランドは、その特性上ニッチにならざるを得ない傾向にあります。なぜなら、D2Cはブランドにおける全チャネルのコミュニケーションを「自社でコントロールできる」ことが求められるからです。
この制限を超えてビジネスを拡大させたい場合、販路を世界に広げるか、成功したブランド戦略を体系化して、速やかに横展開することが肝となります。しかし、無理なスケールばかり意識してマスに寄せすぎると、ブランドらしさが薄まり、ブランドが陳腐化してしまうケースも少なくありません。これはD2Cブランドに限った話ではありませんが、そのリスクが高いD2Cのブランドコミュニケーションでは特に注意が必要です。

スタートアップブランドの支援を専門とするクリエイティブエージェンシーのGin Lane社も、ブランドコミュニケーションにおける最適化を重要視しています。ブランドらしさを追求した一貫性のあるコミュニケーションを重んじる同社は、社内にコンテンツ部門を設け、ブランドが本当に発信すべきメッセージを何度も打ち出してスケールさせることにこだわり続けました。結果、同社はHarry’sをはじめとする数々のD2Cブランドを成功へと導き、現在ではD2Cアルコールブランドと提携してブランドビジネスを展開するまで成長しました。

参考:

世界進出にあたってのD2C成功要因

欧州の巨大ブランドコングロマリット(ケリング、リシュモン、LVMHなど)や米国のD2Cも、リリース当初から世界進出を意識したブランディングを展開し、その多くが成功を収めています。ブランド自体が素晴らしいことは言うまでもありませんが、成功要因の一つとして、欧州も米国も言語や文化の近い国が多く、ブランドを受け入れてもらいやすい環境であることが挙げられるでしょう。ただ、D2Cブランドの長所であり、短所でもあるのが“文脈形成力の高さ”です。その点に依存したままハイコンテクストなコンテンツを展開してしまうと、国によって伝わり方に差が生じます。
言語やルーツがどれだけ近い国同士でも、文化の違いは必ず存在します。こちらの記事にもあるように、自国で圧倒的な支持を得ているブランドでも、その思想や世界観が必ずしも他国に受け入れてもらえるとは限りません。

特に、日本のコミュニケーションはそもそも非常にハイコンテクストであり、D2Cならではの世界観や“共感への呼びかけ”は、各国との文化や視点の違いを十分に理解した上で、適切にローカライズさせることが大切です。

課題に応じたパートナー選びで“世界の壁”は超えやすくなる

世界進出を考えているD2Cブランドにとってパートナーの選定は悩ましい問題ですが、そのインフラは徐々に整いつつあります。チャネルのひとつに自社ECを持っている、あるいは開設を検討しているブランドはそれを感じているかもしれません。

例えばハード面のソリューションに、ECプラットフォーム:Shopifyのロケーション機能があります。Shopifyでロケーションを設定すると、注文商品に適切な税率を適用し、各ロケーションで行われた注文を追跡することができます。選択されたロケーションの在庫数は、商品が販売・補充されるたびに更新されるというシステムです。Shopifyが優れている点は、これらの多言語・多通貨(現地通貨での決済)展開も容易にできることです。テストマーケティング的に一定量のデータを収集し、どの国にアプローチすべきかを検証することができます。つまり、幅広い国に対する自社ブランドの可能性を簡単に探ることができるのです。


ソフト面(実際のコミュニケーション)では、各国に対して文化的背景まで考慮したマーケティング戦略が必要です。実際、米国のいくつかのD2Cはローカライズの重要性に気づいており、その試みとして地方のPR会社やエージェンシーと連携しながら現地のリードユーザーコミュニティーを構築し、テストマーケティングを行っています。
また、海外進出を想定したEC:越境ECの海外版ページに関しては、自動翻訳などに頼らず、各国のライターに書いてもらうのが理想的です。もちろんコストも時間もかかることなので、どこにマーケティング予算をかけるかはブランド側の戦略次第ですが、D2Cというスタイルが確立され、どれだけ技術が進歩したとしても、商売の本質が変わることはありません。お客様への真摯なコミュニケーションを着実に積み上げていくことこそが、世界を市場にする近道なのです。

その点を理解していても、何から始めるべきか分からない方もいると思います。そのような方々に向けて、近年では海外進出を視野に入れた企業やブランドを支援する会社も成長を続けています。
英語圏の越境ECやBtoBマーケティングに特化した「世界へボカン」社は、

海外進出にともなう課題に対して包括的なソリューションを提供しているコンサルティングファームです。市場調査から戦略立案、英語によるSEO対策、CRM施策にいたるまで、ブランドの目標達成に合わせたあらゆる解決策を提案しています。海外販路をゼロベースから創り上げるケースが多いD2Cブランドにとって、同社は非常に心強い存在となってくれるでしょう。
ハード面・ソフト面のいずれにしても、ブランドの課題に合わせて最適なパートナーを見つけ出し、うまく連携することが、“世界の壁”を超える重要なポイントとなります。

日本の魅力を発信する「手段」としてのD2Cを

とはいえ、世界を相手に商売するという点において、日本はとても優れた力をもっていると思います。
先日、ある海外ブランドの日本支社長が印象的なことを仰っていました。

「日本は、実はつい最近まで鎖国していたんですよ」

他国のスタイルを受け入れずに独自の文化を尊重するあまり、日本は長年“ガラパゴス化”した状態にありました。しかし、外国人観光客の増加やオリンピックの開催決定などが追い風となり、日本人全体の意識が少しずつ変わり始めました。海外諸国が発展して経済的に豊かになったことも理由として考えられますが、日本国と日本国民が外国人観光客を受け入れる体制を率先して整えてきたことも大きな要因だと思います。


浅草・合羽橋に店を構える弊社クライアントさまである「ぬま田海苔」では、外国人観光客の方たちにも海苔に興味を持ってもらうために、海苔の試食や、海苔と洋風食材を組み合わせたビジュアルの掲示、英文でのレシピ提供などを実施しています。言葉だけでなく、五感にも訴えかけるコミュニケーションを積極的に行い、今では海外の料理家の方にもお越しいただいているそうです。日本人が本来もっている強みは、五感に訴えかけるコミュニケーションができること。こういった試みはデジタルネイティブなD2Cにおいても学ぶべき要素が多くあると感じます。

日本のブランドが世界へはばたく必然性

日本という国はその昔、原始人が「日が昇る方角」に向かって行き着いた場所、ともいわれています。(「オリエント」の語源は、ラテン語で“日が昇る方角”を意味するオリエンス(Oriens)です。)控えめで謙遜しがち、そしてどこか不思議な民族といわれる私たちの国は、かつて冒険家・チャレンジャーだった人々が行き着いた“安住の地”でもあるのです。
日本の伝統文化や伝統工芸、そして、今こうしている間にも日本各地で生まれているD2Cブランドのほとんどが、世界に誇れる魅力的なものばかりです。しかし、自分たちが良いと思うものをただ並べただけでは、人々の心は掴めません。

日本のD2Cブランドを世界に認めてもらうためには、D2Cをただのブームで終わらせず、ブランドを再構築し確立させていくチャレンジを続ける必要があります。チャレンジをしなければ、他文化圏の人々へはもちろん、この先ブランドに出会うであろう全ての人々にもブランドの魅力は伝わっていきません。
日本のブランドが最適なソリューションを用いながら課題を乗り越え、世界へはばたく「手段」としてD2Cを昇華できるようになることを強く願い、私たちはその支援に全力を注ぎ続けます。

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