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「気ままにクリエイティブ観察」第5回は”エクスクルーシブなメディテーション”編

観察が日課のFRACTA AD(アートディレクター)宮崎です。「気ままにクリエイティブ観察」第5回は”エクスクルーシブなメディテーション”編です。

https://inscape.life/

今回ご紹介したいのが、ニューヨークエリートたちに人気を誇る会員制メディテーション専門スタジオINSCAPE。創設者はサンローラン、クロエなどを扱うセレクトショップ ”Intermix / インターミックス” の元オーナー、 カージャク・カレディジャン氏。専用アプリとウェルネス商品も販売しています。近年健康的な食生活と定期的な運動という生活習慣を身につけた人が、精神的な向上を追求するウェルネス思考が強まっていますよね。2015年くらいからニューヨークではメディテーション施設が増え始め、日本国内にもおしゃれなスタジオはいくつかオープンしましたが、INSCAPEのエクスクルーシブな世界観と瞑想をコミュニティの場として展開するブランディングは非常に参考になりますでご紹介させていただきます。

※本noteに掲載している写真は公式サイトより引用したものです。

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洗練されたブランディング

瞑想というと、日本では素朴でネイチャーな表現であったり、パーソナルな精神世界といった表現が比較的多いのですが、INSCAPEは全く違い、まるで高級スパのようなエクスクルーシブで幻想的な世界観です。スタジオの外観もニューヨークにふさわしい洗練された佇まいです。ニューヨークでは、バーに行く代わりに瞑想スタジオで社交するのがトレンドとも言われており、このような会員制のエクスクルーシブなスタジオでは、スタートアップの創設者がパートナーや投資家候補を探しにくることも少なくないそうです。瞑想は自己に向き合うパーソナルな行為ですが、INSCAPEは瞑想をきっかけとしたハイエンドなコミュニティスペースになるよう設計されています。

食事や運動に気を使う意識の高いニューヨーカーにとって瞑想は自己のマインドケアが目的ですが、コミュニティをビジネスチャンスであったり、日常の楽しみとして大切にされている方も多いので、非常にFITしたアプローチであると言えます。併設ショップではウェルネス商品も充実しており、自分だけでなく周りの人の健康にも気遣えるようなギフトも揃っています。サイトやSNSでもドームの照明イメージとリンクするような色合いでオリジナルのメディテーションの世界観を作り出しています。自分を高められそうな素敵な空間ですよね。

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ブランドの象徴となるメディテーションスペース

スタジオには、完全防音で照明サウンドにこだわったドーム型の部屋とアルコーブ型の部屋があります。瞑想のレッスンは大体ドーム型の部屋で行われ、ボディースキャンなど仰向けで寝転ぶレッスンは専用のマットレスが置いてあるアルコーブ型の部屋で行われているようです。
ポイントは、このドーム型の空間がそのままブランドの象徴となっている点です。誰が撮影してもこのブランドだと認識できるアイコンを作ると当然SNSでも拡散されやすいですよね。照明デザインにもこだわっており様々なパターンがあるので、同じ場所の写真がたくさん並んでいても一辺倒な見え方にならないのも魅力の1つです。拡散した見え方まで非常に戦略的に考えられています。

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もう1つのあるアルコーブ型のお部屋にはアーティストによるロープのデコレーションが施されており、デザインやアートを重んじる姿勢が受け取れます。

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講師がいない

他の瞑想スタジオとの違いは最新の設備だけでなく、瞑想をリードする講師がいないということです。代わりにファシリテーターというスタッフが、入り口で受講者にアロマを数滴ずつ配って部屋に案内します。時間になるとオーディオが流れ、まずストレッチが始まりますがファシリテーターがデモをしてくれます。その後もオーディオで瞑想のナレーションが流れてくるので、それを聴きながら瞑想します。 ナレーションのボイスは200人以上のプロの声優の中から、最もメディテーションに適した声色と発音の持ち主を選び抜いたとあって、 脳に浸透するような語り口だそうです。やってみたい。。
講師を設けないというのは、今までの常識を覆すユニークな発想ですよね。瞑想の良し悪しはインストラクターにかかる部分もあり、創設者のカージャク・カレディジャン氏がこだわった、いつでも快適に瞑想できる独自のメソッドなのです。講師のコストも削減できる効率の良いビジネスとも言えます。

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コミュニティースペース

クラスが終わった後はおしゃれな待ち合わせ室でフルーツウォーター(無料)を飲みながらくつろぐことができます。また併設ブティックで最新の瞑想関連グッズやスーパーフードや書籍をチェックして過ごす方が多いようです。ブティックでは「あなたと周りの人の心と体に栄養を与えるために贈り物を」と謳っていて、ヴィーガン用のチョコレートやアロマオイル、キャンドルなども揃っているようです。

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EC兼ブランドサイト

要素はミニマムで洗練されていますが、温度を感じる工夫が随所に施されています。例えばファーストビューのゆったりと変わるグラデーションの色合いはドーム状の空間とリンクし、抽象的な瞑想の世界を体現しています。また瞑想とリンクするパルスのような波状のエレメントを映像やメニューをホバーしたときに使用しています。商品カテゴリーはオリジナルアイコンがデザインされています。こういった有機的なエレメントが、シンプルなデザインの中で効果的に機能し、ただミニマムで使いにくいサイトとは一線を画した、サイトとしての直感的な使い心地も考慮されたものになっています。
シンプルでミニマムなデザインのトレンドは続いてますが、シンプルな中にちょっとしたあたたかみを取り入れるスタイルはほかの業界でも共通して求められていると感じます。

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まとめ

INSCAPEはターゲットにかなり寄せたブランディングの例として参考にできる部分がたくさんあります。瞑想というと自分に向き合い気持ちを鎮める行為ですが、これをどのようにライフスタイルに取り入れたいのかというニューヨーカーのマインドをしっかり掴んでいますよね。イメージとしてただ優れている巨匠的なブランディングは、ブランドが溢れる現代では生き残れません。今までの当たり前を疑ってみることや、拡散されたときの絵面まで考慮したシンボルを設定するといった工夫、またサービスの体験に連動するサイトの使い心地にすることは近年のブランディングでは必須かもしれません。

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