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ゆるりと広告語り。 JR東海「シンデレラエクスプレス」編

はじめまして。広告・コピーが大好きなFRACTA プランナーの鈴木と申します。この記事では、私が個人的に好きな広告クリエイティブについて自由気ままに語ろうと思います!
※あくまで個人的な意見であることをご了承くださいませ。

さて、第一回目に紹介するのは、
JR東海が1980年代に展開したイメージCM「シンデレラエクスプレス」
肌寒くなってきた今の季節にぴったりなCMです。


当時リアルタイムでご覧になった方にとっては、
印象深いCMとして記憶に刻まれているのではないでしょうか。

ちなみに私は1993年生まれなので、放映時この世に生を享けてすらいません(笑)そんな私も、初めてこのCMを見終えたあと目頭が熱くなりました。

前置きはほどほどに、早速語っていきましょう。

時代背景と舞台

1987年、JR東海のイメージCMとして「エクスプレスシリーズ」が始まりました。87年といえば、バブル経済が始まった頃。国鉄の分割・民営化で現在のJRグループが発足した時代でもあり、その影響下でJR東海が民営化間もなくの広告戦略としてつくったのが、この「シンデレラエクスプレス」というわけです。

CMの舞台は、週末日曜の東京駅新幹線ホーム。
週末を都内で過ごした遠距離恋愛カップルが
東京発新大阪行きの最終列車の出発時刻である
21時に別れを惜しむシーンが描かれています。

この光景をシンデレラの魔法が解ける0時と重ねて
「シンデレラエクスプレス」と命名されたそうです。

このCMの放映以前にも、最終列車のホームで
別れを惜しむカップルはいたようですが、
放映後の東京駅ではCMの影響を受けたカップルで溢れかえったそうです。
なんだかいい時代ですね!!
広告がしっかりと機能して社会を動かしているのを感じます。
それほどまでに多くの人の心を掴んだのでしょう。

このCMから伝わること、素晴らしいと思う点。

冒頭のリンク先の動画はCMの第二作目。
出演されているのは女優の横山めぐみさん、
楽曲は松任谷由実さんの「シンデレラ・エクスプレス」。

夜のきらびやかな街並みが流れた後、
横山めぐみさんの表情が映し出され
以下のセリフとナレーションが入ります。​

[横山さん]
 本当は、距離に負けそうな自分がこわいのです。
 それが分かっているから、
 今日たしかにあなたに会ったことを
 心と身体のどこかに焼き付けておきたいのです。
 あなたの頬に触れていたいのです。
 あなたの唇に触れていたいのです。                [ナレーション]
 距離にためされて、ふたりは強くなる。
 シンデレラエクスプレス

たった60秒の映像でも、
別れを惜しむ2人の関係性が想像できますね。
気丈に振る舞う表情の中に
垣間見える寂しさが何とも絶妙です!
そしてユーミンさんの曲も抜群にいい!!

切ないはずなのにどこか前向きさを感じられるのは、
当時の世の中が活気にあふれていたことも関係しているのかもしれません。

感想はここまでにしておいて、
このCMから伝わること、素晴らしさについてです。

民営化まもないJR東海のプロモーションが
目的とされているこのCMですが、
「新幹線」の機能については一切語られていません。
描かれているのは、新幹線を通じたカップルの恋愛模様。

このCMは新幹線を「移動手段」ではなく「人と人とのコミュニケーションを繋げるものである」ということを伝えているのです。

新幹線の機能的価値ではなく、情緒的価値に強くフォーカスをあてて
新幹線をひとつのコミュニケーションツールとして定義していることが、
このCMの素晴らしい点ではないでしょうか。

「もの」単体の価値を伝えるのではなく、
ものによって生まれる、ひと同士の関係性に価値を見出すことによって、
JR東海というブランドを世に知らしめることに繋がったのだと思います。

いまだからこそ思うこと

最後に注目した点は
「距離にためされて、ふたりは強くなる。」
というコピー。

今のようにスマホもケータイも普及していない時代。
遠距離恋愛中のカップルの行く末を一言で表しています。

特に秀逸なのは「ためされて」というワード。
試されているということは、
二人がうまくいくか否か
両方の可能性を内包しており、
嘘のないリアリティある言葉です。
このたった一言によって、
全ての印象に、天と地ほどの差が生まれます。

個人的にとても好きなコピーです。

なぜ今、このコピーに触れたかというと、
CM放映から33年が経った2020年。
新型コロナウイルスにより、
近年で最も社会と人、人と人が距離を
取らなければいけなくなった時代になりました。

いま再び、私たちは距離にためされています。             これは人に限らず、ブランドも同じことです。

距離が生まれた社会の中であっても、
愛され続けるためにはどうすれば良いのか。              様々なブランドを支援させていただく立場として、
日々考えを巡らせなければいけません。

自分が生まれる前のコピーが、
いまだからこそ強く胸に刺さりました。

長くなりましたが、ここまで読んでくださった
皆さまありがとうございました!

次回も、ゆるりと語っていこうと思います。



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ここまで読んでくださったみなさまありがとうございます。

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