世界のクリエイティブ賞に見る「現在地」
こんにちは。FRACTA ブランドクリエイティブ局の石山です。
昨年よりFRACTAにジョインしまして、初のnoteを書かせていただきます。よろしくお願いいたします。
さて、本日2月22日は記念すべき59回目を迎える「世界友情の日」です。ボーイスカウト・ガールスカウトの創始者であるロバート・ベーデン=パウエル卿夫妻の誕生日が同じであるこの日が「世界友情の日」と制定されたようで、ボーイスカウト・ガールスカウトを通して仲間と交流し、皆で友情を深めようという日だそうです。
日本では猫の日なので、猫がかわいいという記事でもと思いましたが、せっかく知った世界友情の日にちなみ、2022年の世界のクリエイティブ賞について調べてみました。そこからクリエイティブ、引いては「表現」において、どんな潮流があるかを考えてみたいと思います。動画などもご紹介しますので、ぜひ一つづつ見ながら読んでいただけると嬉しいです。
なお、賞の全てを網羅的に掲載するわけではなく、テーマに合った内容を一部抜粋しております。
混迷する時代を象徴する受賞作
受賞作の話に入る前に、今、世界は大変混迷を極める時代と言えます。ロシアによるウクライナ侵略開始から約一年が経ちましたが、まだ終結に至っていませんし、そこから端を発したエネルギー危機は日本だけでなく各国を苦しめています。コロナ禍という状況においては、世界では対応が大きく分かれ、さらにアメリカでは「分断」という言葉も頻繁に聞こえてきます。日本よりはるかに二大政党制の色が強いアメリカでは、選挙の度に国民が分かれ、思想・人種・宗教・ジェンダーなどの問題も絡んでいます。
また、ずっと言われ続けている環境問題は、国や世代などによって考えが大きく異なります。
なぜこのような暗い話から始めたかというと、世界のデザイン賞では、このような世相を大いに表した作品が受賞していたからです。
理想を表現すること
Hopeline 19
2022年D&AD賞の最高賞受賞作品です。
医療現場で人命を守るために最前線で働く医療従事者に、一般人から感謝の声を届けるダイヤル「Hopeline 19」の動画です。
前半はとても苦しそうな映像ですが、後半は「ありがとう」の声が少しずつ届いている様子が描かれています。人と人との何かをつなぐ取り組みがあるとわかる点で、大変意義ある取り組みだと思わされます。
The Lost Class.
こちらも2022年D&AD賞の最高賞受賞作品です。
アメリカにおいて、「銃がなければ今年卒業していたであろう」3044人の学生の卒業式を行った動画です。銃規制がなかなか進まないアメリカで、ただの数字を実感あるものにすることで、反銃のメッセージを届ける作品です。
銃規制という一つの問題では賛成と反対で分かれてしまいますが、人の命という点で考えればそこに異論などないはずだ、という視点でつくられたキャンペーンです。
Real Tone
こちらも2022年D&AD賞の最高賞受賞作品です。広告というよりプロダクト部門での受賞となっています。
これまでカメラは有色人種の肌色を美しく正確に表現できていませんでしたが、Googleによって研究された美しく肌の色を捉える「Real Tone」という技術が評価され、受賞しています。
日本版のプロモーション動画では、芸人のアントニーさんや、女子バスケ日本代表に選ばれた馬瓜エブリンさんが出演し、コンプレックスだった自分の個性を前向きに捉えたエピソードを語っています。
着目する視点によってマイナスからプラスへ価値を引き出すというのは、クリエイティブの持つ大きな力だと思います。
The Elections Edition
出版・印刷部門でカンヌライオンズ賞を受賞したキャンペーンです。こちらは作品というより、レバノンの新聞社が行った活動です。政府がインクと紙不足を理由に選挙を遅らせようとしたところ、新聞社がデジタル版に移行し、浮いたインクと紙を寄付しました。このように民主主義を守るために行った活動が受賞に繋がった事例です。まさに問題解決であるとともに、言い訳を排除して政府批判をするというユニークさも感じる行動だと思います。この印刷しない新聞の活動が、「印刷・出版」部門の受賞というのも面白いですね。
Liquid Billboard (The world's first swimmable billboard) | adidas
カンヌライオンズ賞のアウトドア部門での受賞作品です。
アディダスがイスラム教徒の女性用水着を発表し、そのPRのためにドバイのビーチに水槽を設置しました。他宗教・他国と比べて女性が肌を出し、泳ぐことに弊害が多いイスラム圏において、女性が泳ぐこと自体を広告にすることで、水着のPRだけでなく、人々が自分らしさを手に入れることに寄与するキャンペーンのようにも見えます。
Portuguese (re)constitution
カンヌライオンズ賞のデザイン部門での受賞作品です。
イギリスの出版社「ペンギン・ブックス」は、青鉛筆を用いて自由を讃える本を出版しました。ポルトガルでかつて検閲に使用され、人々の自由を縛る目的で使われた青鉛筆。その青鉛筆を使って自由や民主主義を讃える詩やアートを作り、出版された本はベストセラーとなり、認知されました。
かつての抑圧の象徴を自由の象徴に作り替え、鮮やかな青で表現されています。
ポカリスエット 2021年 新CM「でも君が見えた」篇
日本の作品もThe One Showでゴールドペンシル賞を、またD&AD賞でイエローペンシル賞を受賞しています。
ポカリスエットCM「でも君が見えた」篇です。
まず撮影のセットが凝っており、歪んだ廊下は実際に歪み、曲がったドアは実際に曲がっています。そうした制作のやり方自体にもこだわりを感じるのですが、そこで完成した映像からは、若者が感じる心の中の葛藤のようなものと、自己実現を描いているように思います。
意外と身近に、多様性の波は及んでいる
いかがでしたでしょうか。
何か示唆ある言葉でまとめてみようと思いましたが、なかなか難しいですね。
ただ、多くの人にとっての多様性を認め、自分らしくあるというメッセージは、想像より強く世界を包んでいるようです。少々強引に、クリエイティブ賞から「現在地」を定めるなら、「多様性と自分らしさ」でしょうか。他人にとっての多様性が、自分にとっての自分らしさになる。それがどこか遠くのものから、すぐ近くのものになってきているとここ数年感じます。
私はぎりぎりZ世代に入る年齢ですが、それでも少し前まで「多様性」というのはどこか遠くの話で、直接自分に関係があると実感していませんでした。
しかし、クリエイティブという形で世界に発信される時、それがどれだけ多くの人を害さないか、その人らしさを尊重しているかという視点が必須になり、その波に逆らった事例は大きく炎上することも珍しくありません。
逆に、人々の思いが極まったメッセージは賞でさえ取り上げるということがわかりました。
世界のみんなが求める、「自分らしい」生き方
今回調査をしてみて、(私がそういった受賞作を選んだからなのですが)他人と自分が自由にあるがままに生きていけることを求めている、そんな作品が多いと感じました。ここに取り上げなかった作品も、そういった印象を多く受けます。
クリエイティブが世の中を映す鏡だとすれば、日本だけでなく世界中の人が「自分らしく」生きることを望んでいることになります。
当たり前のことですが、辛い状況にある全ての人が、自分らしく幸せに生きたいと願っている。それがクリエイティブを通して受け手に届いているのがすごいことだと思いました。
勘違いしてはならないのは、そんな当たり前のことが脅かされてしまう現実があるからこそ「せめて理想を描きたい」と、そういった経緯の作品が多いのではないかということです。
様々な事例を並べ、社会がどんなことを求めているのかを知り、背景を理解するのはよい経験となりました。ありがとうございます、「世界友情の日」。
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