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フランスワインを巡る旅 太陽とぶどうとオリーブと。リュベロンのワインは自然の賜物 前編
フランスワインを巡る旅、まだ続いています。
今回の旅先はプロヴァンス地方の北東部、リュベロン地方へ。
◆
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9月中旬の時期のプロヴァンスは、ちょうど黒ぶどうの収穫時期だった。車窓から広がるぶどう畑に目をやると、時々、たわわに実ったぶどうがなっている風景に遭遇した。日中はあふれんばかりの陽光に、気温は高く上がっても乾いた空気が心地よかった。
リュベロンといえば
リュベロン地方というと、ワインよりも風光明媚なフランスの美しい田舎村の印象の方が強いかもしれない。ガイドブックにはよく「1990年代にイギリス人作家のピーター・メイルがこの地へ移住したエッセイ『プロヴァンスの12か月』をきっかけに一躍有名になった」と書かれているのを目にする。
私も何かのきっかけでこのエッセイを読んで、リュベロンという場所に漠然としたあこがれを感じていた。
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リュベロンはエクス=アン=プロヴァンスよりもさらに北東にある。山がちで、一帯が自然公園となっている。この山々の間に「鷲の巣」といわれる小さく美しい集落が点在しているのが特徴的だ。
そうそう、この地方は、私の地元と友好関係にあることもあり、昔から興味があった。
AOCの区分でいうと、ローヌ渓谷地方南部にあたる。ローヌ渓谷地方を東西に分けるローヌ川の東側にある広大な地域で、南部でリュベロンと、北部でこの地で一番高いヴァントゥー山から名前をとったヴァントゥーの2つのAOCワインが作られている。
※ローヌ渓谷地方については、こちらの記事参照。(ヴァントゥとリュベロンのコメントはナンセンスであったことを、これから痛感するのである……)
そんな魅力たっぷりのリュベロン地方だが、この地域は車がないとかなり辛い。旅人には不便だが、このおかげで古き街並みが今も残っているのかもしれない。
今回は念のため、事前に国際免許証を取得した。日本の運転免許証を持っていれば、申請書と手数料の支払いと書類審査のみで、行き先の国で有効な運転免許証が簡単に交付される。運転に自信のある方は、自力でレンタカーを調達するのは良いと思う。今でもマニュアル車が多く、右側通行なので注意は必要だ。
そんなわけで、一日半かけて西から東へ、リュベロンを横断した。
この地域に点在するリュベロンの田舎町を寄り道しつつ、2つのワイナリーを訪れた。
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北にヴォーグリューズ山麓が広がる
Cavaillon
ひとつめの訪問先は、リュヴェロン地方で最も西にあるカヴァイヨン。
現在はメロンの首都という異名を持つ農業のが盛んな町だが、とても古い歴史を持つ町だ。川と運河が交差する場所にあり、ローマ時代から交通の要衝として栄えた。その時に建てられた建築物の一部は、今でも残っている。
ここで入ったレストランは、その名も、「Le Bouchon Lyonnais」
ここはこの街からやや、いや、かなり離れたリヨンという別の都市の名を冠したお店だ。
GoogleMapで高評価だったこのお店。
今回リヨンに行けないけれど、リヨン料理が食べられてラッキー。(発想の転換)
しかしさすが人気のお店。
メニューには地元のメロンを使ったサラダがあったので、そのメロンを少し分けてもらえないかお願いしてみた(図々しい)。
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分けていただけた。
ここのメロンは赤肉だ。果肉がしっかりして食べ応えがあるが、日本のマスクメロンのような甘さはない。生ハムなんかと一緒にサラダとして食べたりするからね。でも、ジューシーでおいしかった。
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フランス滞在中はどうしても夜がグルメになるので、昼はサラダで済ませることが多かった。でも、サラダに肉やチーズ、豆が入っていることが多く、食べ応えがあった。
腹ごしらえをして、レストランを出ると
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白い岩肌に、古い教会建築という独特な景観が目の前に広がっていた。この白い岩肌はリュベロンでよく見かける石灰岩だ。これはこの地域のワインにも大きな影響をもたらしている。
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車を東へ走らせる。
山麓のふもとには、古い石造りの家屋が続く。時々スーパーやガソリンスタンドなどの看板を見かけはするが、ここも他の地方と同様、町全体が古くて、時が止まったかのような気分になる。
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車窓から見える風景は、次第にぶどう畑とオリーブ畑に変わる。プロヴァンスの海側との大きな違いは、山がとても近いことだ。そしてどの方向をみても、そこには必ず山がある。
Goult
2つ目の村、グー(Goult)に到着。
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ここに来た目的はもちろん、ワイナリーだ。
ゴルド、ルシヨンやメネルブなど、周りの村が有名過ぎるため、少なくとも日本でグーが注目されることはあまりない。しかし、あたりの風景を見渡すだけでも、十分に美しい村だ。
訪問したワイナリーはこちら。
Domaine de la Verrière
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「ステンドグラス・ワイナリー」という意味の、とても小さなワイナリーだ。ブティックの前に車を停めて、辺りを散策した。
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ここはナチュラ2000という、EU規模の自然保護地区に指定された区域内にあるワイナリーだ。
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ぶどう畑沿いを歩いていたら、作業着のおじさんに遭遇した。おじさんについていき、ブティックへ。試飲をお願いしてみたら、快くOKをくれた。
さて、ブティックで試飲。
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カウンターでワインを開ける時、おじさんは無口で、奥さんと思しき派手な雰囲気のマダムが顔を出した途端、そそくさとどこかにいってしまった。
田舎の親戚にこんな感じの夫婦がいたことを思い出した。
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Blanc – 2022 – AOP Ventoux
白ワインの中で一番高価なキュヴェだった。
このワインの銘柄名になっているPampeluneという区画の畑とドメーヌ周辺の石灰質の土壌で育った特別な白ぶどうで造られているようだ。
ルーサンヌ50%、クラレット35%、ヴィオニエ15%
パイナップルやかりんなどの丸みがあって、甘く、華やかな香り他にもミネラルなどの複雑さが感じられた。
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ムーヴェードル70%、グルナッシュ30%
華やかな見かけによらずパワフルで、スパイシーなワインだった。
次に赤。私たちの試飲のために3種類もあけてくれた。
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Les Ocres
オークル色の土で作られたぶどうでできたテーブルワイン。その名もオークル。(そのまま)
ぶどうはグルナッシュ50%、シラー40%、サンソー10%。
土が赤っぽいのは、鉄分を含んでいるかららしい。だからといってワインに鉄っぽさは全然感じなかった(ほっ)。
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こちらは粘土質の土で育ったグルナッシュ60%、シラー30%、サンソー10%。
一気に重みを増したのは、土の違いというやつだろうか。
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シラー95%、グルナッシュ5%
Haut de la Jacotteというこのワイナリーの畑の中でも特別な区画で栽培されたぶどうを利用しているそう。土壌は粘土質。
シラーの割合が多めなこと、そしてマセラシオンの期間が長いこともあり、いちばんスパイシーで複雑だった。
この最後の赤ワインはマダム一押し。
3種類の赤ワインを飲み比べて、オークルの砂っぽい土壌、粘土質の土壌の違いのようなものの違いをなんとなく感じた。
敷地内の土壌はリュヴェロン地方の特徴と同様に多様性に富んでいる。土壌のほかにも、日射や地質など、テロワールに適したぶどうの品種が栽培されているらしい。
中でも特徴的なのが、グーから隣町ルシヨンにかけての土壌で、これはオークル(黄土)の天然顔料の原料だ。砂礫で水はけがよい性質で、クラレット、ヴェルメンティーノ、ルーサンヌ、ヴィオニエなどが栽培されている。グルナッシュやサンソーも栽培されているが、黒ぶどう系はもっぱらロゼ作りのために栽培されている。丘よりは粘土系で石灰質。そんな土地にはグルナッシュ、シラーやムーヴェードルなど、しっかりめの赤ワイン用に栽培されているようだ。
もしかしたら聞き間違いがあるかもしれないけれど、つい最近、ワイナリーにアンフォラを導入したらしい。アンフォラというのは素焼きの土器で、8,000年前ジョージアでワインづくりが始まった時に使われていた、とても歴史の古い熟成容器だ。リュベロンの北の方、AOCヴァントゥが作られている地域には、1世紀にはアンフォラでワイン作りが行われていた記録があるらしい。原点回帰というやつか。今年の醸造から、このアンフォラでワインを寝かせる予定のようだ。
このマダムはとても軽い口調で皮肉を言うのが面白かった。そしてもう何本もワインのコルク栓をあけているはずなのに、コルクを抜く途中でコルクがねじれてしまい、「あぁもう無理、代わって❤︎」といってお客さんににあけてもらうのだ。
ちなみにこのワイナリーにはストーリーがあって、中世に、この地を治めたルネ王の指示で、イタリアからやってきたガラス職人がこの地でガラス工芸を営んでいた。これがお店の名前(ステンドグラス)の由来のようだ。
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1時間もブディックに居座り、マダムを拘束してワインを何本も開けてもらったのに、あくまで試飲だからお金はいらないと言われてしまった。
ただより高いものはないとはいうが、私も何となく「義理」で何か買いたい気分になった。しかしまだ旅の途中、ここでワインを買い込むわけにいかない。フランス人の友達も義理とは言わないがマダムの心遣いに対する感謝の気持ちを抱いたらしく、自分がいちばん気にいったという赤ワインをカートンで買っていた。太っ腹。
こういう人の感情が微妙に交差する場面でうまくふるまえるようになりたいと思いつつ、マダムに感謝しこの場を去った……。
お店の人がおもしろい人だと、そのワイナリーにも愛着が湧くし、ワインも美味しく感じてしまう。もっとフランス語ができれば、冗談?皮肉?なマダムの面白さがもっと分かるのだろうに、と歯痒さを感じたのであった。ぎしぎし。
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リュベロンは後編も長くなりそうなので、今日はここでおしまい。ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
次回もぜひ、お楽しみに。
参考資料
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