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CLAMP展とかつて恋した少年

2024年7月3日、国立新美術館で開催されているCLAMP展を見に行った。創作集団CLAMPは、私のマンガ原体験となった作品『カードキャプターさくら』の生みの親である。

マンガ大好きっ子(私)爆誕のきっかけとなったクリエイターの展覧会。行かないなんて選択肢はない。仕事を休む前提で、初日の朝10時の予定をぶち込んだ。

楽しみすぎて2回ほど夢に見たCLAMP展。遠足前の子どもかと単純な自分に呆れつつ、久しぶりに夢見る少女でいられる気持ちを楽しみながら当日を迎えた。


CLAMP展

東京メトロ千代田線乃木坂駅の地下深くからエスカレーターに運ばれて、国立新美術館直結の6番出口を抜ける。美術館入口までの通路には、CLAMP展のテーマを表す掲示が並んでいて、早速テンションが上がる。

館内に入り早速、展示室を目指す。様々な場所にキービジュアルポスターが貼られているが、それにしてもデザインが素敵。

今回の展覧会は、「CLAMP」という名前にちなんだ「COLOR」「LOVE」「ADVENTURE」「MAGIC」「PHRASE」という5つのテーマと「IMAGINATION」「DREAM」の2つを加えた、7つのテーマから構成されている。

これまで読んできたCLAMP作品のすべてにそれらの要素がある。相手を思いやる恋愛観も、不思議な世界を旅する冒険譚も、心に響く台詞の数々も、全部味わってきた。

入場してすぐに広がるのは「COLOR」の世界。美しいカラーイラストが作品ごとに展示されている。ビビットな色合い、パステルで柔らかな色合い、パキっと凛々しい色合い、どこか不穏な雰囲気を感じる色合い……。年代を追って作品ごとに作品の雰囲気と色使いを変化させていく様子が窺える。

近づいて作品をじっくり見てみると、どれも繊細なタッチでキャラクターが表現されており、いくら見ていても飽きることはない。正直、この「COLOR」の展示を見るだけでもチケット代を払う価値がある。本当に「美麗」という言葉がしっくりくるのよ……。

「LOVE」以降の展示に関しては、なんとスマホによる写真撮影が可能(一部展示を除く)。私自身、撮影OKでもあっても展覧会で写真を撮ることはないのだが、大好きなシーンが目の前にあるとついつい写真に収めてしまう。

「好き」を伝えたり、必殺技を叫んだり、自分の行く道を決めたり、「こんなのってないよー‼」と絶望に打ちひしがれたりするキャラクターたち。マンガを読んだ時の様々な感情が沸き上がってくる。絵で、物語で、言葉で、心を揺さぶられるマンガの醍醐味を改めて実感する。

展示室も様々なイラストやデザインで装飾されていて、どこを見ても眼福である。

「PHRASE」がテーマの展示室には「PHRASE BOX from CLAMP」という箱があって、箱の中からセリフが書かれたシールを1枚引くことができる。光を反射する銀色のそのシールは来場者が展示室内に貼ることができ、シールがたくさん貼られるほどキラキラとした言葉があふれる仕組みである。素敵な企画すぎないか?

わたしは『魔法騎士レイアース』の風ちゃんの言葉を引いたので、先にどなたかが貼られた光ちゃんの言葉と並べることにした。

次の「IMAGINATION」の展示室には、刊行時の単行本が年代ごとにならべられている。単行本の装丁も作者自身が手掛けており、そのデザインセンスと企画力に脱帽である。

例えば、『東京BABYLON』の大胆なカラーリングと文字の配置は、今見ても超絶格好良い。『魔法騎士レイアース』は当時の少女マンガとしては珍しいB6サイズで、あの迫力かつ美麗なマンガを楽しむのであれば、刊行サイズを大きくすることにも納得する。特典付き特装版の元祖は『ちょびっツ』であることを知り、圧倒的感謝を伝えたくなった。お世話になってます、特典付き特装版。CLAMP氏のパイオニアが過ぎる。

『カードキャプターさくら』掲載当時の「なかよし」も展示されていて、懐かしすぎて爆発するかと思った。全部のタイトル知ってる。『デリシャス!』もめちゃくちゃ好きだった。あと、秋元康が『あずきちゃん』原作者なのはじめて知ったよ。手広いが過ぎるよ、やすす。

最後の「DREAM」の展示室では、CLAMP展のための描き下ろしイラストが展示されており、大変尊い気持ちになった。そして、『ツバサ』『xxxHOLiC』の侑子さんの台詞で、この会場から外の世界へ送り出してもらう。この一連の流れがとても素敵で、CLAMP作品の世界観を本当に味わい尽くすことができたように感じる。

かつて恋した少年・妹之山残様について

突然だが、私がこれまで恋に落ちてきた人物を紹介しよう。「推し」という概念ではなく、ガチで恋した人たちである。

1人目は幼稚園の頃の初恋の人・みずしまこうへい君。2人目は『CLAMP学園探偵団』の妹之山残(いものやま のこる)様。3人目は高校のときに付き合った人。そして、最後が夫である。

妹之山残様

唐突に2次元のキャラクターがお出ましになったが、この人物こそかつて恋した少年、その人である。小学生の私は、CLAMP作品を片っぱしから読み始めた。そして『CLAMP学園探偵団』の彼ーー妹之山残様(12歳)に出会ってしまった。

彼について簡単に説明をすると、日本が誇る大財閥・妹之山家の末弟でCLAMP学園初等部6年生かつ学生会会長。容姿端麗・頭脳明晰・自由闊達の三拍子を備え、面白い事好きでお茶目で遊び心があり、女性にはすこぶるお優しい。超完璧少年かと思いきや、運動神経が不自由という一面をお持ちである。いやそんなの逆に完璧すぎて愛おしいが過ぎます(ここまで早口)。

そんな彼が、同じ初等部の学生会書記・鷹村蘇芳と会計・伊集院玲と共に、世の中の女性幸せを願い、難事件を解決するために(やや強引に)結成したのが「CLAMP学園探偵団」である。

ちなみに、人当たりがよく誰からも愛される残様だが、その出自と才能から過去多くの誘拐犯に狙われ、周りを巻き込まないために友人を持たなかったという人でもある。そんな彼がCLAMP学園探偵団を結成する以前の、鷹村蘇芳との出会いがあんまりにも素晴らしすぎるので全人類に読んでほしい。

CLAMP展に展示されていた1枚。本当にこのシーンは最高なので、全人類『CLAMP学園探偵団』を読んでくれ。それにしても原画が美しすぎる……。(早口)

マンガのキャラクターについて、私は関係性込みで好きになる人間だ。例えば、小狼君は可愛いし格好いいと小学生の頃から思っている。でも、それはさくらちゃんを好きな小狼君が可愛くて格好良くて、当然のことながら、小狼君を好きなさくらちゃんも可愛くて素敵なのである。ふたりの関係性を含めて、「好き」なのだ。

ただ、妹之山残様については、ひとりの人間として好きになってしまった。NASAが求める頭脳(どんな頭脳なんだ)を持ちながら、日常のささやかなことにも楽しみを見出し、ときどき後輩たちをおちょくっては怒られ、困っている人には手を差し伸べるのに、それでいて自分のことは顧みない。何もかもが好きすぎる。(『ツバサ』で出てくるスターシステム上の残様も、変わらずお優しいので安心して読んでいられる。)

当時、小学生の私は妄想力を駆使して、どうしたら残様と出会うことができるかを本気で考えた。東京タワーでの劇的な出会い、もしくはお忍びで訪れた田舎でひと夏の出会い、はたまた、お呼ばれしたパーティーで運命の出会い……。

だがしかし、神奈川県相模原市の最寄り駅から徒歩50分の住宅街に住む平々凡々な私は、どんなに頑張っても残様と出会えない。出会えたところでどんな女性にもひとしく優しい彼は、私に恋なんてしない。

残様が恋する人がいるとしたら、それは彼が『CLAMP学園探偵団』では見せてこなかった孤独や葛藤に寄り添う(もしくはそれを吹き飛ばすくらい魅力的な)人であろう。繰り返すが、私ではない。

なんだこれ。好きな人と出会う妄想をしていたのにも関わらず、その人が私のことを好きになるのは解釈違いだ。齢10歳にして、そんな現実知りとうなかった。

そんな切ない(?)思い出とともに、かつて恋した少年・残様。CLAMP展で久しぶりにお会いしたら、当時の雰囲気そのままで(それはそう)とても懐かしい気持ちになった。やっぱり素敵な人だなぁ、今も好きだなぁ。昔好きだった人に会うのって、こんな感覚なのか。思いがけず初めての体験をした。

まとめる気のないまとめ

CLAMP展の感想のはずが、いつの間にか残様について語る会になってしまった。一方で、創作集団CLAMPの作品が、私の人生においてたくさんの影響を与えてくれたことを実感する。

そういえば、才能にあふれ人懐っこく、自身を犠牲にしても他者を大切にする性格の「推し」が何人かいる。そのルーツが分からずにいたのだが、今、唐突に理解した。残様だ。過去に好きになった人の面影をこんなところに追い求めていたのか私は。いつでも探していたのかどこかに君の姿を?こんなとこにいるはずもないのに……?

人生でCLAMP作品に出会った事がある人は、今回のCLAMP展にもぜひ足を運んでみてほしい。作品の思い出を紐解くとともに、自身の「好き」のルーツが見つかるかもしれない。

何が言いたいかというと、CLAMPはそれだけすごいクリエイターだということである。

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