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「天使の歌声」を演じるすさまじさを知る(2022年10月28日『ジャージー・ボーイズ』感想)

久しぶりにミュージカル観劇に出かけた。有給をとって一張羅のスカートに大人ブラウスでちょっとおしゃれして、日比谷駅で降りて日生劇場前で待ち合わせをした。

これだけでもテンションが留まるところを知らないのに、演目は『ジャージー・ボーイズ』である。天使の歌声を持つと言われるフランキー・ヴァリ要するユニット「ザ・フォー・シーズンズ」の結成から成功、そしてメンバーの確執と葛藤を描いた作品だ。

観劇のきっかけはWキャストで主演を務めるDa-iCEの花村想太くん。

もともと、Da-iCEを知ったのはOfficial髭男dismの藤原さんが楽曲提供した「FAKE ME FAKE ME OUT」。

藤原さんの曲って歌うの難しいのに、Da-iCEのダブルボーカル大野雄大くんと花村想太くんがきちんとDa-iCE色に仕立てて歌い上げている。そしてダンスメンバーの工藤大輝くん、岩岡徹くん、和田颯くんたちもDa-iCEの唯一無二のパフォーマンスを見せてくれる。

ミュージックパブで繰り広げられる同曲のMVでは、Da-iCEの観客を圧倒するステージと中盤で展開されるワンカット撮影の世界観がとても素敵で見応えしかない。

わたしは花村想太くんの歌声を個人的にとても推している。力強い低音と伸びやかな高音。めちゃくちゃ好き。こんな歌声出せたら一生歌って暮らしたい。

その歌声を一度聴いてみたいと思ってチケット応募したのが『ジャージー・ボーイズ』。なんと当たった。嬉しい。おしゃれして意気揚々と観に行くぜ。

だがしかし。

おや?

おやおやおや?

推し!本日休演!!!!

なんということでしょう。
この時期の体調不良はとても心配。お大事にしてゆっくり休んでほしい。健やかであってほしい。

だだ、この記事は花村想太くんの歌声が聴けなかったことを嘆くだけの記事ではない。

なぜなら、2022年10月28日に初めて観劇するこの中川Green版『ジャージー・ボーイズ』が、私の心に大層な衝撃を与えたから。そして、フランキー・ヴァリを演じることの凄さに思いを馳せずにはいられなくなったのである。

とにかく、まず思ったのは主演の中川晃教氏がとにかくすごかった。フランキー・ヴァリがいた。天使の歌声がいた。

フランキー・ヴァリといえば、トワング(口腔共鳴)という発声技法を使って、男性にも関わらず超ハイトーンボイスで歌い上げるシンガーである。代表曲「shelly」を聞いてもらえば、誰でもその凄さに納得するのではないだろうか。

ツンと耳を突き抜ける印象的な高音と、一転して柔らかな中音域のギャップ。正直、本当に限られた、それこそ選ばれた人でないと、とてもステージの上で歌うことはできないと思った。

それを中川晃教氏は伸びやかに歌い上げるのである。高音はもちろん、まさに「天使の歌声」だし、ささやくように歌う中音域も、声量を出してるわけではないのにすごくよく響く。本当にひとりの人間が歌っているのかと思うほど、脳がバグりそうになるくらいにすごかった。

しかも、Wキャストとはいえ突然の代役。『ジャージー・ボーイズ』は、「中川Black」と「花村Green」のWキャスト体制でチームを組み、ザ・フォー・シーズンズのほか3人のキャストも完全に分けているため、いわゆる「いつメン」でのステージではない。

それでも、初観劇の観客(わたし)の度肝を抜くほどのステージを見せてくれた。もともと、中川氏は2016年の初演時から一貫してフランキー・ヴァリ役を務めてきた人物。その圧倒的歌声と安心感に、いつの間にか舞台に引き込まれていたように感じる。

すごかった。ただただ圧倒された。夢見心地で日生劇場を後にするほどに。

とはいえ、この記事は中川晃教氏のすごさを称えて終わりはしない。いや、終えても良いくらい満足したのだが、ここで気付いてしまったことがあるので書かせてほしい。

フランキー・ヴァリという偉大な人物を、才能と実績をもつ中川氏という人が日本で数年間演じてきて、そのWキャストに抜擢されるのは相当なプレッシャーなのでは……?

そう、ここで推し・花村想太くんの話である。実際の舞台を観ていない中、こんな感想を持つのは恐縮ものだが、この役を獲得するって、難易度の面でもメンタル面でもどえらいことなのでは?

しかも、音楽を担当するのはザ・フォー・シーズンズのメンバーであるボブ・ゴーディオ。知ってる。作品に出てきた。足長い人でしょ(演じられていた有澤樟太郎さんがくそ足長くてスタイル抜群だった)。

中川晃教氏はもちろん、花村想太くんもザ・フォー・シーズンズのメンバー本人に認められたってこと?すごくない?

フラットに鑑賞したからこそ、この役を獲得し演じるということの果てしなさを感じてしまった。だってそれくらいすごかった、この舞台は。

正直言うと、あと2回『ジャージー・ボーイズ』を観に行きたい。きちんと心の準備をして「中川Black」を浴びに行きたいし、役の難しさに演じることのプレッシャーなどをはね退けてステージでパフォーマンスするであろう「花村Green」も体験しに行きたい。主役以外のキャストの活躍もそれぞれ味わいたいし、そこにどのような変化があるのかも観てみたい。

欲張りなのは分かっているが、観ないと絶対後悔する。

しかし、東京公演のチケットは既に売り切れていたし、全国ツアー公演はスケジュールと予算の折り合いがついていない。近隣の神奈川公演は既に完売御礼という状況。

切に、切に願っている。それぞれの舞台を観に行くことができますように、と。どちらもとても魅力的で、それぞれ観客にとびきりの体験をさせてくれることは間違いない。

あとは私のスケジュールと財布の頑張りに期待するしかない。がんばれ、わたしのスケジュールと財布。

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