お子様の教育資金

子供がいる夫婦に生命保険の話をする場合、欠かせないのが子供の教育資金をどうするかという問題です。

夫婦が共働き(2馬力)しているケースであれば、夫婦ともども元気で仕事を続けられている限り、その稼ぎの中から教育費を捻出できますので、別に保険に頼らずとも何とかなるでしょう。

しかし、夫婦のどちらかが亡くなり、2馬力から1馬力となると、結構、厳しいものがあります。なので、万一に備えてお子様の教育資金の保障を準備しましょう、ということになります。

そこで使われるデータは、文部科学省などが出している教育費にこれだけかかりますというもの。幼稚園から大学までオール国公立で1,000万円、オール私立ですと、軽く2,000万円は超えてきます。

多くのお客様は、子育てにはそれなりのお金がかかることは覚悟のうえで子供をもうけていると思うのですが、改めて保険セールスの人からこういうことを聞かされると、お先真っ暗です。仮に、中間をとって一人1,500万円かかるとして、子供が2人いれば3,000万円となります。突然、3,000万円の借金を背負わされた感覚になります。

生命保険セールスは、教育資金や遺族の生活資金、葬儀費用、介護・医療費用など、考えつく限りの「お金がかかる将来」を想起させて、いかに保障を「盛り盛り」にして考えていただくかという歴史がありました(今もやっている人がいるかもしれませんが)。

私が保険業界に入った時には、専業主婦の家庭で子供が2人もいれば、普通に5,000万円以上の生命保険が販売されていましたし、夫が上場企業に勤めているなどと言えば8,000万円や1億円という生命保険に個人で加入していることもも珍しくありませんでした。

今は共働きの家庭が普通ですし、世帯主が死亡して経済的に厳しくなる点は変わりませんが、かつてのように何でもかんでも全部の必要なお金を保険で賄う必要性は薄れてきています。

また、もう一つ考えなくてはならないのは、大学に行くことが子供にとっても最良の選択になるか、という点です。

世帯主が死亡して、保険金があるから大学に行けるとして、子供本人の学力や意欲が乏しい場合、大学4年間の学費は賄えても、そこで子供が何かを得て成長するかというと甚だ疑わしい。

進学に必要なものとして、「本人の意欲」「学力」「学費」の3つがありますが、学費だけ用意されていても、意欲と学力が伴っていなければ何にもなりません。逆に、学費は無くとも、意欲と学力が備わっていれば、成績優秀で返済不要の奨学金を受けることもできますし、働きながら大学に行くこともできます。よって、生命保険で学費だけ準備しても、子供の将来が安泰になるわけではないのです。

さらに、そこそこの大学に入学できたとして、その果てに待っているのは就職戦線を勝ち抜いて、企業に就職してサラリーマンになること。親としてはひとまず、それなりの企業にでも就職してもらえれば役目は終わった、と思うかもしれませんが、子供の人生の第2ステージはそこから始まるわけです。

今の企業には様々な問題が渦巻いています。クレーマーのような客、ライバル会社との客の奪い合い、コンプライアンス、社内の人間関係、厳しいノルマ、転勤や出向、各種ハラスメント、うつなどの精神疾患等々・・・。しかも、一般的な企業では、経営陣に参画するようなごく一部の社員を除いて、40代の半ばころから「人件費ばかり高くて業績に貢献しない社員」として扱われ方は粗雑になり、50代になれば早期退職や社外への出向・転籍を打診されます。

子供を大学まで行かせてあげてサラリーマンになったとして、子供たちにはそのような過酷な試練が待っています。大学で教わるのは学問であって、実業社会でのこれらの試練に耐えるためのノウハウは教えてくれません。

そんなための教育資金ですが、世帯主に万が一のことがあってもお子様のために準備しておきたいですね!といわれるとどうですか?

私はサラリーマンを30年してきて、5年前から副業で個人事業主(青色申告)もしていますが、なんといっても事業主(経営者)は最高!自分がやりたいことだけ仕事にできるし、やりたくないことは断ればいいし、経費も誰の承認もいらずに好き勝手に使える。

大企業に勤めて、運よく社長になれたとして、サラリーマン社長の待遇などたかが知れています。収入でいえば、おそらく、そこら辺の中小企業の経営者の方がたくさんもらっています。

中小企業は、自分で仕事を始めて軌道に乗せるまでは大変ですし、様々な困難もあります。しかし、それを乗り越えた暁には、大企業の社長よりも高額な報酬と、仕事は社員に任せて自由に時間を使えるようになり、経費も好きなように使える。全部、自分が決められます。

もちろん、東証に上場しよう!などとなれば、投資家などの外部の目も光りますし、ガバナンスがないといけませんので好き勝手出来ません。

上場するというのは、会社の所有権を株式にして販売すること。株主には利益を配当しなければなりませんし、株価を上昇させて投資家の資産価値を向上させていかないといけませんので、自分だけの会社ではなくなります。中小企業は別に上場なんてしなくてもいいのです。

いやいや、自分で会社を作るとリスクだってあるでしょ?とお感じかもしれませんが、サラリーマンの周りもリスクはいっぱいです。サラリーマンのことを「社畜」ということがありますが、これは「会社の家畜」ということ。動物はいったん家畜化されると自分で餌を探せなくなるので、飼い主から餌をもらう一択しかなくなります。つまり、自分の生殺与奪を飼い主に委ねることになります。飼い主が死んだら餌は途絶える。これは、長い人生で極めて大きいリスクです。仕事は与えられるものと思い込んで目の前の仕事だけする習慣がついてしまうと、野に放たれたときに餌を探せずに餓死してしまう。

サラリーマンと事業主の両方をしている私は、例えてみれば、半分家畜で半分野生。餌が探せないときには、手っ取り早く飼い主から餌をもらう。しかし、野に出て美味しい獲物も味わう。

つまり、大学を出てサラリーマンになるよりも、例えば、高校を卒業して事業を起こし、経営者になる方がよっぽど本人にとって幸せであるということもあり得るのです。

そして、その事業は、別に、アマゾンやアップルやグーグルのように、世界に革新的なイノベーションをもたらすような事業でなくても構いません。フランチャイズオーナーでもいいし、ラーメン屋を開業してもいいし、最初の数年は修行して独立する形式でもなんでもよいと思います。いずれにしても事業主(経営者)になるんだ、という意欲があれば誰でもなれます。

世帯主が亡くなった際に、残してくれた保険金があるから大学の費用は心配しなくてもいいのよ、などと言って大学に進学させて、子供をサラリーマンにすることだけが子供の幸せにつながるとは限らない、ということもお伝えすべきです。進学のためには、お金の準備だけではダメで、意欲と学力が備わっていないといけないことをご理解いただき、その上でお客様に判断いただくことが大切です。大学進学資金の代わりに、事業を立ち上げる子供に出資するお金を準備する、という考え方もできると思います。

大して役に立たない大学の学費に数百万円を払ってサラリーマンにするくらいなら、事業を起こす子供にそのお金を出資して支援してあげた方が、はるかに役に立つお金の使い方だなあと思います。

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