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JO1は何に挑戦し、何が新しいのか

本日のテーマは「JO1は何に挑戦し、何が新しいのか」です。

これは「坂口孝則と牧野直哉のオールビジネスニッポン」で話した内容の書き起こしです。

これ、ちょっと逡巡がありましてね。40代の男性が、ボーイズグループ、このキラキラしたグループを語っていいんでしょうかね? 

もうね、やられました。やられたっていうか、これ久々に「来た! これ困ったね」っていうグループなんですよ。いや「これ困ったね」っていう意味は、もちろんダメっていう意味じゃなくて、「これは、すごすぎて、どう評価していいんだかわからない」っていうグループなんです。

JO1なんですけども、本物なんですよね。「ボーイズグループ」あるいは「アイドルグループ」っていうのも失礼で、「メンズグループ、すごいボーカルグループ」「アーティストグループ」と言ってもいいと思うんです。

2019年にいわゆる韓国の人気オーディション番組の日本版っていうのがありまして。そこから選ばれた練習生の皆さんたちが日本=JAPANで本当に頂点に立っていくっていう意味が込められた「JO1」なんですけど。

ファンはJAMって言って、確か、AND MEの意味だったと思うんですけど。仲間たちと共に世界を取っていくぞっていう意味なんですね。

韓国の人気オーディション番組の日本版っていうのがありまして、そこから選ばれた練習生皆さんたちが、ジャパンでね、本当に頂点に立っていくっていう意味が込められたJO1なんですけども。ファンは「ジャム」って言って、「アンドミー」の意味で「ジャム」。仲間たちと共に、世界をなんていうか、取っていくぞっていうやつなんですね。

でね、ここからちょっと深読みなんだけど、このオーディション番組ができたのが2019年ですね。この2019年ってすごい象徴的なんですよ。これ、なぜかっていうと、1989年、ちょうど30年前っていうのが、韓国でエポックメイキングの年だったんですね。

韓国でね、海外旅行が自由化されたのって、ついこの時からなんですよ。パラボナアンテナとかが韓国で輸入許可が降りたっていうのもこの時点なんですね。日本のSMAPとかSPEEDとかは、アンダーグランドでは流通していたでしょうけど、その時に正式に韓国に輸入されたんですよ。ここでK-POPなるものの原型ができるきっかけになったんですよ。

同時に韓国では、アメリカで人気のHIPHOPとか取り入れて韓国ラップを作ったりとかね。絶対に韓国の国内だけでは市場としてはすごい小さいですからね。いろんな統計があるんですけども、どうやら当時は、韓国国内では100億円ちょっとくらいしか音楽シーンの市場規模なかったらしいんです。日本はその当時、5000億円ありましたからね。この違いね。韓国だけでは、さすがに飯が食えないから、どんどん拡大していかなければならない。

K-POPの「K」って韓国のコリアのKという意味だけじゃなくて、グローバルスタンダードになっていくんだよっていう意味も兼ねてきたわけですよ。そこから30年。韓国から生まれたオーディション番組かもしれないけど、それが日本も巻き込んで世界を取りに行くぞっていうのは、めちゃくちゃこれ象徴的な感じですね。J-POPの「J」はジャパンのJだけじゃなくて、いろんなところをまたいでいくような音楽の象徴なんですよね。

早速ここで1曲聴いてほしいと思います。私がまず最初に度肝を抜かれた曲です。JO1「So What」です。

「So What」なんですけど、何がちょっと衝撃的だったかというと、音が良すぎるとか、色々な側面あるし、コーラスワーク素晴らしい。

ですけど、これ全曲一つだけのコードでやってるんですよ。Cmだけ。度肝を抜かれるのが、曲の展開がすごい。Cmだけと思えないダイナミックさがある。これもう、あまりにもすごい。アメリカを中心とした新しいヒップホップの波にも乗ってるし、アジアからこの曲が出たのかっていうのは驚きました。

次に、2021年に耳にした名曲がありましてね。JO1の「Born to be wild」っていうね曲。曲名聞き覚えありますね。イージー・ライダーですね。映画「イージー・ライダー」(1969年)の主題歌ですね。ステッペンウルフの曲です。いわゆるヒッピー文化の有名な映画ですよね。

白人男性2人がバイクに乗って、ロードムービーと言えばいいのか、青春ムービーと言えばいいのかな。主題歌が「Born to be wild」だったんです。JO1の方も「Born to be wild」。JO1のほうは恐るべき完成度なんですよ。コーラスワークがすごい。多連符のボーカルかと思いきや、ロングトーンでいきなりボーカルやコーラスが重ね合う。もう、私はほとんど解説になっていないくらい興奮している。どれくらいすごいかわかりますよね。ファルセットとラップが絶妙に絡み合い、どこを切ってもサビってい。最近の曲作り。最高の曲になっています。

さて、もちろん、ギターのカッティングとか、リズムとか、いろんなことに注目してほしいんですけども……。

ここで私が注目した、もう一つの側面があるんです。それが、さっき申し上げた、ステッペンウルフの曲「Born to be wild」。邦訳は「ワイルドで行こう」ですね。その当時の歌詞と、今回のJO1の歌詞の違いに、僕は注目せざるを得なかったんです。著作権違法にならないようにね、ある歌詞を引用しつつ、私の解説を付け加えます。

まずステッペンウルフの「Born to be wild」。この1969年って何ですか? 日本もそうだし、世界的にも学生運動が敗北した年です。学生たちが社会や国を変えられませんでした。

ステッペンウルフは、「Born to be wild」で歌うんですね。

モーター動かして行こうぜ
ハイウェイに行こうぜ
冒険を探して行こうぜ
銃をぶっぱなそう
俺は死にたくない
(わざとざっくりした訳です)

これ、すごい皮肉ですよね。この映画、最後に主人公は殺されるんですよ。農夫からショットガンで撃たれる。あれは象徴的なシーンですね。学生運動の敗北の意味ですね。

全世界の大学生たちが、俺たちは革命を起こしてやるって、大人に反抗した、政治に反抗した。けれども、結局は、大人や社会・政治を何にも変えることができなかった。俺たちはワイルドだ、俺たちはこの機関銃とバイク、ハーレーさえあれば、何でも変えていけるんだって思ってたけど、全然変えれなかった……。この映画が1969年から70年に大ヒットしたのは時代の無意識を封印してますよね。学生運動に失敗した若者は、結局、偉そうに言ってるけど就職するしかなかったじゃないかっていう。

次が、JO1の「Born to be Wild」です。私たちは、テクノロジーとかデジタル革命の時代を経ています。ほら、みんながデジタルですべてが変わる、グローバリズムですべてが変わるっていっていましたけれど、私たちの社会の格差はそのままだし、幸福度があがったわけじゃない。何も変わらなかったじゃないか、と思っていますよね。

そこで、このJO1「Born to be wild」ですよ。2021年になると、体制を変えようとか、政治を変えようとしてないんです。何を変えようとしてるかっていうと、自分自身を変えているんです。音楽とこれまでにないダンスと、恐るべき密度によって、自分自身を変えている。そして、いままでにない音楽であるJO1を見せつけられて、たしかに世界は変わった。JO1は新しい思想運動なんですよ。自分を変えたほうが世界や社会が変わるという逆説。

なので、JO1の方の「Born to be wild」には、こういう風な歌詞があるんですね。*著作権があるため、全部は引用しません

誰もいない
キミとふたり 未知を行く

ステッペンウルフの道と違って、未知ですね。同時に、ステッペンウルフを意識したと思うんですけどもがhighwayって単語が出てくるんですね。「続くhighway」。そして「Keep on running」。繰り返し重要なのは、親とかおじいさんの世代が社会とか政治を変えようとしたりに対して、JO1は自分を変えてるっていうことです。

ハラハラするreality, 揺れるfantasy
隣にキミgravity, 確かなenergy
扉開けば全ての縛りから解放

解放され、むしろ新しい何かを作っていくっていう。これが、JO1の新しさであり、実際に新しい音楽とダンスで、まさに世界を変えてしまった。

これは、「Born to be wild」のステッペンウルフの曲のイメージがありすぎたら、すごい違うでしょう。

JO1なんですけど、「JO1 in Wonderland!」ていう、展示会というか、新しい試みを六本木ヒルズでやっているんです。

技術と組み合わされてます。スマートフォンでロケトーンをインストールすると、ある特定の場所に行ったら、特定の音楽とか、特定の音楽が流れるとか、すごい工夫があるんですね。ユニークで、特殊な、ヘッドセットで、ライブを経験することもできます。メンバーが、すぐ近くにいるかのような、新しい経験です。

最近、「イマーシブ」っていう言葉ありますよね。没入とかね、単に、視覚的に見るだけじゃなくて、聴覚、あるいは、実際に触ってみて、体全体で味わうような展示会が話題になっています。

唯一、私にとってハードルが高かったのが、ほぼお客さんが女性だった点ですね。まあまあ、それは、予想していたんですから、しょうがないよね(笑)。

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