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CFP®になろう!2021年第2回試験を分析

 11月14日の試験(第1日程)の3課目を分析し、出題内容を振り返ります。
 2020年第1回試験が中止となり、出題傾向の把握が難しくなりましたが、それ以降の開催により徐々に傾向がわかってきました。

❶金融資産運用設計

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 毎回、難易度が最も高い(合格点が低い)課目です。2020年の景気・経済については、世界中が混乱したため、動向(データ)に関する出題が回避されてきました。さて今回は。

≪時事問題≫
 資料については2020年までの動向変化、資料は2021年前半のものでした。前回はたったの2問だった時事関連の出題は従来の8問まで増加しました。どれも知っていて当然の内容でした。

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●経済指標・統計データ政府発表の資料
 GDP(内閣府)、政府債務残高、経常収支、経済・物価情勢の展望(2021年4月/日銀)、金融政策決定会合(2021年6月)、ETFの買入れ
●用語解説
 稼働率指数、機械受注、景気動向指数、国際収支統計、イールドカーブコントロール

≪計算問題≫
 出題の半数が計算問題です。これまでとは商品の種類や取引方法の設定が異なるものが多くありましたが、問われている内容は従来と同様でした。
 外貨建て商品については、前回より問題数が減りましたが、4問(うち3問は時間がかかる)出題で、今回も悪意を感じる内容でした。

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●預貯金
 期日指定定期の元利合計
●株式
 決算資料、投資尺度
●債券
 市場価格、複利最終利回り、デュレーション、個人向け国債の収益
●投資信託
 譲渡所得(解約時)、税引後の受取配当金、トータルリターン
●ポートフォリオ
 標準偏差、共分散、時間加重収益率、シャープレシオ・トレーナ尺度
●外貨建て商品
 劣後債券、ゼロクーポン債、外貨定期預金、一時払い個人年金保険
●デリバティブ商品
 オプション価格、先物取引(株価指数連動型)、先物ヘッジ
●法規と税制
 配当所得

≪商品知識≫
 過去の出題に即したオーソドックスな出題でした。過去問を何度も解答演習していれば、多くの出題が正答できたでしょう。★印の項目は、最近のトピックスとして知っておきたい内容でした。

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●貯蓄性商品
 貯蓄型商品、積立型商品の理解、財形貯蓄、確定拠出年金
●株式
 課税のルール、単元株制度、東証での取引ルール
●債券投資
 イールドカーブ(★)、債券価格の変動要因
●投資信託
 ETFの買入れ頻度(★)、J-REITのリスク要因(★)、つみたてNISA
●ポートフォリオ
 行動ファイナンス、CAPM
●外貨建て商品
 劣後特約付き債券、相対的購買力平価説
●デリバティブ
 オプション取引、大証の先物取引ルール、スワップ取引
●法規と税制
 海外資産、金融サービスの提供に関する法律(★)、犯罪収益移転防止法

≪総括≫
 前回2021年1回の出題に準じた出題でした。統計資料等の理解、時事問題が多く追加されました。2019年以降の過去問で「出題傾向の把握」と「計算問題対策方法の理解」ができていれば十分に合格できる内容です。合格されてからも、この「生きた経済」を経済指標等で確認し、投資活動を始めるとさらに「世界が分かる」はずです。

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❷不動産運用設計

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 不動産の価格動向や法改正等、時事ネタの出題はごく少数ですが、他の受験者との知識の差が生じるポイントです。取りこぼしの無いようにすることが大切ですね。

≪時事問題≫
 前回同様、時事問題の出題が少なく、あまり対策を意識する必要が無かった内容です。法改正についての出題ありませんでした。価格動向については、毎回ざっくりと概要だけ理解しておけば十分です。

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●令和元年空き家所有者実態調査報告書 国土交通省住宅局
●令和3年版土地白書(土地利用、不動産市場の動向)

≪計算問題≫
 すべて定番問題でした。また、久しぶりに譲渡所得の「特例」を考慮した計算が出題されました。どれも確実に得点したい内容でした。不動産収支・所得については時間がかかるので後回しでも構いません。

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●不動産収支と所得
●有効活用

 収益還元、複利現価
●鑑定評価
 土地価格の評価
●建ぺい率、容積率
 角地、防火地域など基本に忠実に
●譲渡時の税金
 居住用財産の譲渡益に対する特例
●固定資産の交換
 借地権と底地の交換による取得可能面積
●有効活用
 等価交換、効用積数

≪文章題(知識)≫
 各問で、特定のことを「何問かまとめて問う」のではなく、「あれもこれも聞きますけど」という統一感のない出題が目立ちました。
 ほぼ毎回出題されている内容でしたが、あちこちで借地借家関連の出題がありました。毎回出題が多いので、確実に得点しておきたいところです。また、譲渡所得の特例に関連した出題が多く、適用要件を正確に理解しておく必要がありました。

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<法律>
●宅建業法
 不動産広告、地位の移転、売買契約、クーリングオフ
●借地借家法/賃貸借契約(頻出)
 契約期間、賃料の変更、
●不動産登記
 根抵当権、競売、借地権の譲渡、建物滅失登記、移転登記
●都市計画法/建築基準法など
 道路予定地、延床面積、土地区画整理
●共有不動産の扱い(初出題)
 抵当権、明け渡し請求、賃貸契約の解除、売却、持分の放棄
●その他法令/デューデリジェンス
 耐震改修の促進に関する法律、文化財保護法、土壌汚染対策法、長期優良住宅の普及の促進に関する法律

<投資>
●不動産価格
 収益価格(DCF法)とその変動要因、公的価格
●投資関連尺度
 DSCR、LTV、レバレッジ効果
●有効活用
 立体買換え特例

<税金>
●取得時、保有時
 登録免許税・印紙税、不動産取得税・固定資産税、贈与税の非課税の特例、住宅ローン控除
●賃貸時
 不動産所得の経費
●譲渡時(頻出)
 居住用財産の譲渡益に対する特例、空き家に係る譲渡所得の特例

<その他>
●諸問題
 相隣関係、民事信託

≪出題が無かったもの≫  
 これまでは出題頻度が高かったのに、今回は出題がなかったものです。次回以降に備えて確認しておくべき内容です。

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●デューデリジェンス
 耐震性、地盤調査
●老後の住宅
 サービス付き高齢者向け住宅、終身建物賃貸借
諸問題
 筆界、債務保証

≪総括≫
 知識を問う内容は、初めて出題のあった問題や、他の分野と絡めて質問されるものもあったので、「今までと違う」印象がありました。計算問題は定番問題ばかりでした。
 2019年以降の過去問を繰り返し演習し「文章題の速読」と「素早く計算する方法の確立」が大切です。実務ではあまり活用する機会がありませんが、不動産価格の動向は景気のバロメータですから、知っておきたい情報です。

▼お知らせ

❸ライフ・リタイアメントプランニング

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 計算問題よりも知識を問うことに重点が置かれた出題です。2級AFPで学習したことに加え、
・時事問題(高齢者住居、育児、労働基準、生活困窮者、労働環境)
・他の課目との関連問題(税金や金融商品)
も必須事項です。社会保険をはじめとした法改正にも注意が必要です。

≪知識問題≫
 出題の多くは過去にも類似した出題がありました。資料の読み取りや、図式の理解は、過去問で何度も練習していれば簡単な内容です。出題が多岐にわたるので、定番問題からクリアしましょう。

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●コンプライアンス
 CFP🄬認定者の倫理原則、クーリングオフ(特定商取引法)
●住宅資金
 フラット35
●教育資金
 教育一般貸付、貸与型奨学金
●雇用保険
 特定一般教育訓練給付、高年齢雇用継続給付、基本手当の給付日数
●労災保険
 休業補償給付
●介護保険
 利用者負担割合、介護サービス
●健康保険
 強制適用事業所、任意継続被保険者、傷病手当金
●公的年金
 加給年金額(高齢厚生年金)と振替加算(老齢基礎年金)、繰下げ受給、遺族年金の支給調整、寡婦年金と死亡一時金、障害給付の受給要件
●企業年金
 確定給付企業年金、企業型確定拠出年金、国民年金基金

≪時事問題≫
 専門性の高い出題が多いですが、出題内容が固定化しています。初めての出題については、得点できなくても仕方ありません。得意分野で確実に得点しましょう。すべてを覚えることは効率の良い学習方法とは言えません。

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●情報収集
 男女共同参画白書、医療費控除、行動ファイナンス、紛争解決委員会
●労働基準法
 労働時間
●育児・介護休業法
 看護休暇、介護休業/介護休暇
●高年齢者雇用安定法
 高年齢者就業確保措置
●中小企業倒産防止共済制度
 掛金、借入限度、解約手当金
●老後資金計画等
 後見制度支援信託、サービス付き高齢者向け住宅

≪計算問題≫
 出題形式を大きく変更したようです。しかし、内容はほぼ定番と言えるものでした。ほとんどの出題は回答に時間がかかるので、文章題や時事問題を早々に終えて、計算問題に時間をかけると良いでしょう。
 6つの係数に関する出題は1問だけになったのには驚きました。その代わりに初めて出題されるものをありましたが、過去に類似した出題があったので、いかに過去問に取り組んでいたかが問われています。

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●キャッシュフロー表
●6つの係数
 【過去の解答解説あり
●住宅資金計画
 購入可能な物件価格、元利均等返済・元金均等返済の優劣
●時事問題
 児童扶養手当(月額)、リボルビング払いの返済額
●雇用保険
 育児休業給付金
●健康保険
 標準報酬月額、高額療養費
●公的年金
 老齢給付、遺族給付、障害給付
●企業共済
 退職金
●中小企業の資金計画
 理論株価

≪総括≫
 過去問で繰り返し演習するのはもちろん、あらゆる計算問題に対して「自分なりの解答方法」を確立しておくことが大切です。時間のかかる出題や、まったく見当のつかない文章題などは、受験者を混乱させるための出題ですから、回答ペースを決めておくことも大切です。

▼お知らせ

≪補足≫
 次回以降に受験される方は、今回出題の無かった下記項目についての学習もお願いします。

<計算問題>
●在職老齢年金、雇用保険と年金の併給
●自動車の残価設定ローン
●傷病手当金
●中小企業の資金繰り
●公正証書の作成手数料
<基本知識>
●コンプライアンス;著作権、個人情報保護法
●社会保険;年次有給休暇、年金生活者自立支援給付
●社会福祉;日常生活自立支援、成年後見制度、不動産担保型資金貸付

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