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争いを避ける遺言書には付言事項が必須

相続のことが気になっているお客様がご夫婦で来店されました。ご主人様の母親の相続について兄弟で揉めないために対策をとっておきたいそうです。

お話しを伺ったところ、ご相談者様の考えは分かるのですが、お母様と話し合っていない様子でした。そのため、どのように相続するかは本人であるお母様の意思なので、ここでお話しを進めても解決しないことをお伝えしました。

先妻の子どもに相続権はあるか

同席された奥様はご主人の相続のことが前から気になっていたそうです。お話しを聞くとご主人に先妻とそのお子さまがいらっしゃるようです。
知人からは先妻の子どもには相続権はないと聞いていたそうですが、不安な様子です。

その情報は間違っていること―つまり正しくは先妻の子どもにも相続権があること―をお伝えしました。

そのうえでご主人様のご希望をお伺いすると「万が一の時は全ての財産を今の妻に遺したい」ということでしたので、特定の人へ相続するために有効な遺言書をご提案しました。

遺言の種類

遺言書は主に2つあります。


①自筆遺言書
②公正証書遺言書


今回は公正証書遺言をおすすめしました。


自筆遺言は相続が発生したときに遺言の内容が認められない、もしくは遺言執行できるまでに長い期間を要するケースが多くあるためです。
公正証書遺言は遺言者が公正役場に出向き、遺言の内容を話し、それを公証人が文章にまとめて作成します。遺言書の原本は公正役場で保管されます。
この方法で作成した遺言は内容に法的疑義が生じることはありませんし、遺言執行者を選定しておけば短期間で遺言執行することができます。

先妻の子に遺留分はある

しかしそれで安心というわけではありません。先妻の子どもには遺留分という権利があります。

遺留分とは、相続人が必ず相続できる権利のことです。先妻の子どもの遺留分は法定相続分の2分の1です。
この権利を主張されたとして、もし、相続財産が自宅のみで現金が用意できなかった場合、家を売却して支払わなければならない事態にもなりかねません。

遺言書の付言事項とは

この事態をさけるために、遺言書に付言事項を付け加えることをおすすめしました。
付言事項とは、法的根拠はないものの遺言書に付け加えることができる家族へのメッセージです。
遺言書は法律に従った文章となりますが、付言事項は自分の言葉で書くことができます。

付言事項の3つポイント

「手紙を書くのは苦手」というご主人様に先妻のお子さまへ伝えるべき三つのポイントを意識して書いてもらいました。

1,離婚に至った経緯
2,これまでの感謝の言葉
3,円満に相続を終えたいという気持ち

両親が離婚後に悲しみや苦労もあったことであろう先妻のお子さまの気持ちに寄り添う内容でご主人の言葉で書いてもらいました。

相続問題の本質はお金ではなく、複雑に絡み合う相続人の気持ちにあります。遺言者が相続人へ思いやる気持ちを届けることでしがらみや気持ちのすれ違いを緩和できるかもしれません。

最後に


今回のケースでは「私と母を捨てて家を出ていったお父さんのせいで大変な思いをした」と思われているかもしれません。そのお父さんが財産全部を後妻に与えられるという遺言書を見たときに先妻のお子さんはどう感じるでしょうか。悲しみを超えて怒りの気持ちが湧き出るかもしれません。そんなときに自分へのメッセージが残されていたら、少しは気持ちを落ち着かせてくれるかもしれません。
相続を争う家族=争族とさせないためにも付言事項で相続人への気持ち伝えることが何よりも大事なのではないでしょうか。

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