見出し画像

Vol.45「円安も円高も永遠には続かない」

 2022年以降大幅な円安の要因は日米金利差でした。アメリカは5%台まで金利を上げましたが、日本は2024年に利上げしたといっても、ずっと0%近辺。「金利の高い通貨を持っていた方がお得」という観点から円を売ってドルが買われやすくなりました。

 もう一つの要因は「デジタル赤字」です。

 デジタル赤字とは、日本人や日本企業がグーグル、アマゾン、ズーム、スラックなど海外企業のデジタルサービスを多く利用することで、国際収支におけるデジタル関連収支が赤字になる状況のことを指します。

 2023年は、その額が5.4兆円におよびました。その分だけ日本の企業や個人が円を売ってドルを買い、アメリカ企業にお金を払っていることになります。

 アメリカのテックジャイアント(グーグルやアマゾンなどの巨大IT企業)による寡占は簡単に収まりそうにありません。米企業が巨額の利益をもとに優秀な人材を囲い込み、積極的な投資を進めることで、サービスがさらに強くなるからです。デジタル赤字による円安圧力は今後もボディブローのように効いてくると見られます。

 とはいえ、円安も円高も永遠に続くわけではありません。

 極端ですが、仮に円安が加速し、1ドル=200円になったとしましょう。そうなれば、インバウンドはもっと盛り上がるでしょう。観光客が日本のホテルを「安い」と感じるのと同じように、海外企業が日本企業の買収を「安い」と感じます。こうした観光客や海外企業が「外貨を円に換える」、つまり円高圧力になってくるのです。

 人気が落ち気味の商品でも、半額セールにすれば「すごくほしいわけではないけど、そんなに安いなら」と、客が急に増えたりします。為替も同じで、円安が行きすぎると、別の観点を持った人たちが円買いをはじめます。つまり、為替には綱引きのような性質があるわけです。

 実際に、日経平均株価が歴史的な乱高下を記録した2024年の夏には、世界的な株安と同時に、長きにわたった円安基調に変化が訪れました。米景気が悪化するとの懸念から「ドル安・円高」が進んだのです。

 「円安(円高)が続きそうだ」という理由づけがもっともらしくても、それに乗じた投機の動きが強まれば、あとで急激な反動が起こることもあります。

 金利差や貿易といった構造的な円安圧力がかかり続けたとしても、いずれは歯止めがかかったり、急速な調整が入ったりすることは頭に置いておきましょう!

いいなと思ったら応援しよう!