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「株式投資を社員教育に」経営者からみたメリット5選


はじめに

私が社会人になった1997年は
山一證券や北海道拓殖銀行のような
一流といわれた企業が経営破綻をし
またバブル崩壊後、一向に株価は戻らず
これまで護衛船団方式で官民一体で守ってきた金融業界も
外圧から融解させられていた、そんな時代でした。

社会人になってまもなく
株式投資を始めた私でしたが
当然まわりに株式投資を話題にするような同僚はいなく
逆に先輩に少し株式投資をしているようなことを言ったら
「それは社内の人に言わないほうがいい」と言われるような
そんな風潮さえありました。

上司の世代にあたる方々は
ちょうどバブル経済を生きてきたが故に
大損をして株式投資なんてもうコリゴリ…
そんな人も少なくなかったのかもしれません。

それでも、ホリエモンが出てきた頃の
マンションデベ、不動産投資会社プチバブルの間は
同僚や友達の中にもチラホラと株式投資を始める人も増えてきて
ランチの話題は株式投資
そんなときも一時的にはありました。
(ライブドア事件とともにそんな風潮は消えました)

その後も、代替わりした上司の中には
ぼちぼち株式投資をしている人もいて
仕事の合間に「いま買いだと思う?」と相場観を聞かれることも
度々ありました。

今振り返ると
当時会話に上がっていた内容は
投資対象会社の業務内容や業績といったことではなく
株価が上がった下がったといった
そういう話ばかりだったと記憶しています。

今思えばパチンコで儲かった損したと言ったレベルと
大差ないかもしれませんね。

株式市場が開いている時間は
途中1時間の休憩を挟んで9時から15時まで。
当たり前ですが就業時間内に相場は動いています。

会社としては、そんな就業時間中に株価を見て
上がった下がったと一喜一憂されては仕事に集中してもらえないため
株式投資をしている従業員に対し
否定的な目でみてしまうのは
当然のことだったのかもしてません。

実際、トイレに行くといって、
個室の中でトレードしているのではないかと
疑われた同僚もいたようです。

それでもあえて会社として従業員へ株式投資を推奨し
社員教育の一環として株式投資を教えることの
大きなメリットを5つ取り上げます。

メリット1 将来の幹部候補生を育成できる

株式投資には大きく分けて2つの手法があります。
・ファンダメンタル手法
・テクニカル手法

ファンダメンタル手法は、会社の収益や財務状況
将来性やその他業界での立ち位置などを勘案し
現在の株価と比較して投資判断をする手法です。

テクニカル手法は、株価の値動きに注目し
過去の株価推移との類似点や出来高から将来の値動きを予測し
投資判断をする手法です。

簡単に言えば
ファンダメンタル手法が重視しているのは会社そのもの
テクニカル手法が重視しているのは株価の動き
となります。

会社として従業員へ推奨するのは
ファンダメンタル手法を用いた株式投資になります。

ファンダメンタル手法を用いて株式投資をするのに
最低限、抑えておきたいことは
貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などです。
その他、株価指標といわれるPERやPBRなども
知っておく必要がある知識です。

さて、現在世の中にある会社を経営されている方で
会社経営にも必要とされているこのような知識を
どのぐらいの方が理解されているしょうか?

経理部上がりの経営者にとっては当然の知識かもしれませんが
営業部や製造部といった現場の第一線で会社を支えてきた重役は
売上、原価(コスト)などは理解できるけど
貸借対照表やキャッシュフローを学ぶ機会が少なかったと聞きます。

事実、経営会議で話題にされることは
売上、原価(コスト)にその大半の時間を費やされているのでは
ないでしょうか?

さて、そんな通常業務の中ではなかなか身につける機会がない
会計の知識を、従業員自ら率先して勉強してくれる方法
それがファンダメンタル手法を使った株式投資です。

身銭を切って投資するわけですから、本人も本気になります。
基本的に日々の株価に一喜一憂する投資手法ではないため
就業中に株価チャートに張り付く、みたいなこともありません。

おそらく最初は企業分析から始まると思いますが
株式投資に取り組んでいけば
この会社の同業他社の状況はどうなのか?
この会社はこんな興味深い事業を展開しようとしてるのか!?
これってうちの会社でも応用できるのではないか?
と言ったふうに、
目の前の仕事をしているだけでは得ることはなかった
情報に触れることになります。

会計知識と幅広い情報を持った人が
自分の会社の従業員として在籍してくれていたら。。。
経営者としてはこれほど頼もしいことはありませんか?
将来の幹部候補がいなくて困ることはないでしょう。
(絞りきれず、嬉しい悲鳴をあげることになりかもしれませんが…)

メリット2 取引先の開拓や選定眼が養われる

メリット1でも触れましたが、企業分析や幅広い情報が
とくに営業部や資材部などといったような他社と関わりがあり部署の
従業員にとっては、取引先の開拓や選定にも使えます。

当たり前の話になりますが…
いくら自社の商品を買ってくれても、
その取引先の金払いが悪いと余計なコストが発生します。
極論を言えば取り込み詐欺のようなこともあるでしょう。

そう言ったリスクを下げるためにも
財務諸表やキャッシュフロー計算書が読めることは大切です。

より質のいい顧客を開拓するためには
コミュニケーション能力も必要ですが
併せてこういった株式投資で培った知識を活かすことで
より安定・高成長の経営に繋げられます。

もちろん客先でも営業トークとしても大きく役立ちます。
関係する業界の動向を伝えられることはもちろん
お客さんが全く考えもしなかった発想から
商品やサービスをアピールできることもあるかもしれません。
そこまでいかなくてもやはり有益な情報を提供してくれる営業は
お客さんから信頼を得ることができることでしょう。

管理職が部下を指導する立場から鑑みても
より高い目線から俯瞰して物事の良し悪しを判断し
適切な指示をすることは必要であることから
その基準の一つとして株式投資を通じて得られる
企業分析や幅広い情報は心強い武器になります。

メリット3 給料を上げることなく従業員の可処分所得を増やせる

私が20代半ばの頃、
毎月の手取り給料は残業代を併せても25万円前後でした。
その当時はITバブル崩壊後で株価も少しづつ戻りつつあり
先に訪れる不動産株プチバブルの少し前

株式投資にも小慣れてきたときの私の月間の売買利益は
少ないときでも10万円
大きときは50万円になっていました。

株式の売買利益で安定して利益を上げるのは
かなり難しいと考えていますが
不安定ながらも会社からもらう給料より多い金額の
売買益を得る月は少なくなかったと記憶しています。

株式投資から得られる利益が給料を上回るとどうなるか…
人によるのかもしれませんが、私の場合
給料のことに対して会社に不満を持つことがなくなりました。

わざと残業をして残業代を稼いだり
「〇〇手当がない!」と飲み会の席で文句を言ったり
そんな気持ちになることはもちろんありません。
(おそらく社内では浮いた存在だったのでないかと予想されます)

残業をしたり給料が安いと愚痴をこぼす時間があれば、
効率よくさっさと仕事を終わらせて家に帰り
会社四季報でも読んでいたほうがよほど所得が上がる。
と思ってました。

もしかすると私が変わっているのかもしれませんが
私と同じように「いくら給料をもらうか?」より
「いかに気持ちよく働けるか?」という思考に転換する人も
一定数出てくるのではないかと予想します。

実際、組織的な働き方が苦手があるゆえ
専業の株式投資家になった人は数多く存じ上げてます。

辞めて専業投資家になるというのは極端ですが
自分の強みを殺してまで会社のルールの中で生きていくというのは
その人自身だけでなく、会社にとっても大きな損失になります。

その人の強みが活かせる働き方が会社のルールに合わないのであれば
会社は非正規や業務委託という形で仕事を依頼することもできます。

非正規や業務委託は、仕事を受ける方の個人にとっては
収入が安定せず一般的には受け入れが難しいものではありますが
それを上回る株式投資からの収入がああれば
このハードルは一気に下がることでしょう。

これをもっと発展させると、
個人は保有している会社の株式の配当で生活を賄い
働く会社は自己実現の場としての役割を果たすことになります。

ここ何年か、ベーシックインカムの導入について
前向きな意見を著名人から聞くことが増えました。

ベーシックインカムは国が税金で集めたお金を
全国民に一定金額を再配分する仕組みですが
これは途中で管理費を指し引かれてるマイナスサムゲームです。

潤うのは元締めです(政府やそれに携わる人々)

だったらそれぞれが自ら株式の配当というベーシックインカムを
作れる環境を提供する方がwin-winの関係になれるのではないかと
個人的には考えます。

話が少し逸れてしまいましたが
従業員が株式投資により、給料とは別の収入口を得ることで
会社は従業員からの給料の引き上げの要求が少なくなる
可能性は高いのではないかと予想できます。

従業員が給料を上げて欲しいという理由は
「生活をするには今の給料では足りない」ということです。

株式投資の教育と併せて
「お金の使い方」の教育をすることで
その効果は計り知れないものになると確信します。

メリット4 従業員を投資詐欺から守れる

古くは「光クラブ事件」「豊田商事事件」
記憶にあるとこでは「西山ファーム事件」や「円天事件」
ここ数年では「ジュビリーエース」といった
その他マルチのスキームを使った投資詐欺事件が相変わらず
なくなることはありません。

以前は、ある程度資産を保有している年配者が
ターゲットにされることが多かったのですが
最近の、FXや仮想通貨の自動売買やワンルームマンション投資は
20〜40代の学生や会社員がターゲットになっています。
中には消費者金融で借金までさせられて
加入(購入)させられるケースも報道されています。

昨年から、新NISAについてマスコミ各社が紹介しているため
これまで投資に全く興味がなかった人も
「このままでいいのかな?」と不安を感じ
少しづつ動き出しているのが統計でも見えてきています。

しかし、株式投資もそうですが投資というものは
そんなに簡単に儲かるものではありませんし
むしろ何度も失敗を経験するものなのです。

だから勉強も必要であり、小さい失敗を繰り返して
トータルで資産を増やすと考えるべきです。

これを理解せず、NISAや投資という言葉に魅力を感じ
投資の世界に入ってきた人は
詐欺師にとっては絶好のカモネギです。

「NISAはいいものだけど、それだけでいいの?」
「株式の平均リターンは5%だけど、こっちは30%だよ」
というような言葉にふらふらとついていき
よく調べもせずに儲かる可能性がほぼゼロの商品に
大切なお金を投じてしまう人は案外少なくありません。

NISAでオルカン、S&P500に黙って投資!
これも良いですが、残念ながら全く学びにはなりません。

株式投資を少し勉強すれば、
その優位性や会社が利益を上げる仕組みを知ることができ
変な投資話に引っ掛かる可能性は激減します。

詐欺師が儲かるよって言っている仕組みは
その詐欺師が儲かるだけであってお金を出す人ではありません。
その詐欺師の仲間になり
自分が騙す側に回らないと儲かりません。

もし、自分の会社の従業員が投資詐欺に遭えば
その従業員は精神的に落ち込み
仕事のパフォーマンスが落ちるでしょう。

場合によっては、詐欺の片棒を担がされて刑事罰を受け
会社の信用失墜につながることになったり
詐欺で失ったお金を穴埋めするために会社のお金に手を出す…
と言った事件は過去に何度も起こっています。

一緒に働いている仲間を
そういった詐欺師から守るためにも
教育の機会を与えても良いのではないかと思います。

メリット5 次の世代を豊かにすることができる

「会社は社会の公器」と言われます。

会社は現金を生み出す装置であると同時に
社会的な責任も負っています。

分かりやすいのが、法人住民税でしょう。
その場で業を営むからには、赤字であっても
行政が設置したインフラを使わせてもらうために
一定の負担をしなくてはなりません。

また、会社を興すということは
新しい田畑を開墾し、後世の者たちが食べていけるだけの
食い扶持を残すという意味合いもあると考えています。

それは、雇用と形もありますし
世の中にモノやサービスを提供するといった
様々な形があります。

会社を興し、多くの従業員をかかえている会社は
存在しているだけで大きな社会的意味合いがあるでしょう。

ただ、その会社の中で働いている多くの従業員が
苦しんでいたとすると…
その会社の経営者の生活は一時的に潤っているかもしれませんが
永い時間軸で考えると未来はないかもしれません。

これはこれまで滅亡してきた国の歴史を振り返れば理解できます。

国の支配者は、民が力を持って反乱を起こさないよう
黙って低賃金で働くように力を削ぎ落とします。

物理的に身体を傷つけることもありますし
多くは生きていくだけに最低限必要な物品やお金をわたし
抵抗出来るような余裕を持たせません。

もしそんな余裕を持たせて仕舞えば
支配者の言うことを聞かなくなるとおそおれたためです。
日本にも「水呑百姓」という言葉が残っているぐらい
多くの国で行われている国民を支配する方法です。

現在の日本においても
大企業の正社員は給料が上がってきつつあるとはいえ
飲食店やコンビニ、工事作業現場などは低賃金の割に
仕事内容がキツいため募集に企業は苦労していますが

本来であれば安い賃金しか出せない企業は淘汰されたり
もしくは経営努力により収益改善をし
賃金が上がっていくのが自然の流れです。

しかしながら
低賃金でも働いてくれる海外の方を受け入れることで
延命措置がなされていると考えます。

この延命措置は、いったん始めてしまうと
それが基準となり元に戻るのは非常に困難です。
そしてある日、コロナ禍のような異常事態が発生すると
そんな企業は突然死を迎えてしまいます。

「子孫の為に美田を買わず」と言う言葉がありますが
これは、良く収穫できる田畑を子供に遺すと
苦労を知るチャンスが失われるから遺さないほうがいい
と言う言葉ですが
これは全く何も残さない方がいいと言っているわけではありません。

子や孫が自分たちの力で田畑を開墾し
いい作物が収穫できるための「知恵」は遺してやるべきです。
そうでなければこれまでの人類の発展はなかったでしょう。

会社という公器は、この「知恵」であると考えます。
後世に引き継いでいくための「知恵」であると。

会社やその経営者だけが「富む」のではなく
そこで働く従業員も「富む」仕組みを会社が提供することで
その従業員だけでなく、その家族、その子孫までが「富む」ことになります。

会社という公器にはそれができる可能性があると考えてます。

今の従業員の子孫が「富む」ことで
その子孫が顧客となり、場合によっては従業員になって
何十年先の会社を支えてくれることにつながることでしょう。

おわりに

株式投資は金儲けの手段として考えられがちです。
もちろんその一面があることは否定しませんし
金儲けの手段としては、かなり有効な手段だと思っています。

しかし、これまで述べてきました通り
株式投資を勉強することで
社会に役立つたくさんの副産物があります。

また現在、日本の大企業の大株主は海外の投資家です。
日本の企業で従業員が一生懸命働いてくれた利益の何割かは
海外に流出して行っているのが現実です。

会社の利益は株主のものです。
従業員がそれら多くの大企業の株主になってくれれば
利益は従業員に還元され、国内での消費につながります。

そうすれば周り回って、身近な経済も潤ってくるでしょう。

今回は株式投資を従業員に推奨するメリットを整理しました。
社員に対し株式投資を推奨する会社が世の中に
どんどん出てくること心から願っております。

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