見出し画像

第26話 瑕疵担保責任って何?前面道路が「公道」と「私道」の場合の違いは?


【登場人物】


〇藤堂さおり(32歳)・・主人公
大学職員として勤務している。夫の啓補は警視庁勤務。
気が強く、はっきりと言うタイプ。地図が好き。初めての住宅購入に向けて、不動産業者だけの話では納得いかず、FP事務所に相談へ行くが・・。

〇神崎勘太(36歳)・・祐天寺うぐいすFP事務所所長
CFP認定者、1級FP技能士、宅建士。「脱カモ」サポートをモットーに、龍太と二人でFP事務所を切り盛りしている。

〇藤堂啓補(34歳)・・さおりの夫。
警視庁勤務。素直で人を信じやすく、そのせいで営業マンのトークに乗せられやすい。基本的におっとりした性格。

〇神崎龍太(36歳)・・祐天寺うぐいすFP事務所 勤務 宅建士。
不動産業界での経験を活かしながら、勘太のサポートをしている。無口で勘太とは体型含めて正反対。

〇G不動産 花積亮介(36歳)・・勘太の高校の同級生、親友。    勘太のFP事務所と連携して、不動産事業を行っている。

前回までのあらすじ。

主人公の藤堂さおりと、夫の啓補。ある日夫の啓補が気に入って一気に購入しようとしていた建設予定のマンションがあった。そんな展開に不安なさおりはFP(ファイナンシャルプランナー)の無料相談をきっかけに、その物件の調査依頼をした。災害に弱い危険な立地であることを理由に購入をやめるように勧められ、実際にその建設予定地は後日台風で冠水してしまった。それがきっかけで、2人はここのFP事務所の住宅購入サポートプランを申し込む。それから、様々なレクチャーをしてもらいながら物件探しをするが、気に入った物件は、再建築不可だったり、FP事務所の龍太同行で他社不動産紹介物件も回ったが、と中々うまくいかない。しかし、やっととある中古戸建て物件を気に入り、申込むこととなった。銀行の仮審査や、住宅診断、契約までの準備は整い、数日後に売買契約日を控え、不安になった二人は勘太の事務所を訪ね、あらゆる質問をしていくのだった。


第26話 瑕疵担保責任って何?前面道路が「公道」と「私道」の場合の違いは?


「まぁでも、それよりも、さっき話の途中にでた『瑕疵担保責任』についてやけど」
「これって、ネットでも調べたけれど、何か売主でさえ知らなかった問題が発生したときにどのように対処するかってことよね」
「そう、まず『瑕疵』というのは傷、不具合、欠陥という意味ね。おっしゃった通り、購入後のトラブルを防ぐために、売主も知らなかった瑕疵について、売主が責任を持つ期間や範囲を取り決めしておくということ。具体的に建物の瑕疵の範囲に入るのは、雨漏り、シロアリ被害や構造上主要な部位の腐食、給排水管の故障などかな」
「売主が知っていたのに隠していたとかはどうなるの?」
「その場合は、瑕疵担保責任ではなくて、不告知または不実告知などによる不法行為の問題になるね。基本的に売主には告知義務というものがあるから」
「なるほど、一般的にはこの瑕疵担保責任の期間ってどうなんですか。この契約では2か月となっているわよね」
「まず新築物件だった場合、法律で物件引き渡しから10年間と定められとります。今回のような中古物件の場合、売主側が業者の場合は最低でも2年間設けるように宅地建物取引業法で定められているよ。だけど、今回は売主が個人の方でしょ。その場合は1~3か月というのがだいたいほとんどかな。」
※2020年4月の民法改正により「契約不適合責任」という概念が取り入れられました。
「そっか、だから2か月って書いているのか、契約前にホームインスペクションをしたのも、事前に瑕疵を見つけるためだったのね。確認ありがとう。他に今回気になったことはあったかしら?」

「他で気になったのは、今回購入する予定の土地の前面道路が一部「私道」になっているでしょ」
「あ、そういう記載ありましたね。これって何かまずいんですか?」
「国や各自治体が所有している道路が『公道』と言われるけど、『私道』は書いて字のごとく、個人や団体が所有している道路のことね。極端な話をすれば『通行料を払え!払わないならば道路を通行させない』と言われる可能性がゼロではないわけ」
「ええ!それじゃ、まずいじゃないですか。こういう場合って実際売買契約の時などはどうしているんですか?」
「登記謄本で、これまでの所有権の順番を追っていると、今回R社が土地の造成を行い、今回購入する物件の土地含めた4区画を分譲しているのがわかる。おそらくその時に、私道の所有者と、「道路掘削等承諾願書」を交わしていると思うんよ」
「どうろくっさく?何それ?」
「道路の下には、ガス管・上下水管の埋設してあったりするでしょ。それの引き込み工事なとか付随する工事することを承諾してください。無償で通行することを承諾してください。みたいな内容の願書を所有者へ提出し、その承諾をもらっているものってこと」
「なるほど、じゃ、それを今回の売主が願書を持っているかどうかってことね。」
「そう、だから今回M不動産の花積を通して、売主の方へ確認してもらおうと思うけど、いいかな」
「もちろんです。契約した後に気が付いてなかったら大変なんでしょ」
「うん。例えば今後住宅ローンの借り換えや、売ろうとなったときに、提出を求められたりすることもあると思う」
「じゃ、花積に早速確認させるね。まあおそらく大丈夫とは思うよ」
「色々助かったわ」


「まだまだ。売買契約が終わったら、銀行との金銭消費貸借契約(金消契約)と、抵当権設定契約、それが終わるといわゆる物件の引き渡しとなる。あと火災保険、地震保険にも加入しないと」
「まだまだ終わりじゃないのね。怒涛の勢いで続いていく感じよ」
「まずは、明後日の売買契約しっかり。」


私たちはお礼を言って、その日は事務所を後にした。
契約の2日前というこのタイミングで勘太と直接会って話せたことは、2人の気持ちを心強くさせたし、物件の申込以来、怒涛の勢いで過ごした日々を少し整理して契約に臨むことができそうだ。
契約日の前日、M不動産の花積より連絡があり、道路掘削等承諾願書は売主さんが契約時に持参されることが確認できたとのことだった。少し安心した。

(第26話終わり) 次回は12月13日(日)に更新予定です。

Twitterでは、日々のゆるいつぶやきや、おすすめの投資本などを紹介中です。


https://twitter.com/ASpKHbpOR0yXU3I


※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?