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社会的行動障害? でも、そう考えれば合点がいくことだらけ

テレビドラマの『アンメット ある脳外科医の日記』を毎回楽しみに視ています。

こないだ、岡山天音くん演じる綾野先生のお父さんが、頭をケガして病院に担ぎ込まれまして。一命は取り留めたものの「社会的行動障害」という後遺症に悩まされてしまうというシーンがありました。

急に怒り出したり、泣き出したり、笑い出したり。
看護師さんたちとババ抜きをやっていて、自分がババを引いてしまったら「クソっ」と汚い言葉遣いで感情を露わにする。逆に誰かが自分の手札からババを抜いていくと「ギャハハ」と下品に大はしゃぎ。
ドラマですから、わかりやすく誇張されている部分もありましょうが。心の声がダダ漏れになって、これまで理性的に立ち振る舞っていた勲先生(天音くんのお父さん)が、人が変わったようになってしまってかなりショックでした。
そして、これが脳の損傷による機能障害だと知って、なおのことショックを受けました。そういうのも病気に括られるんですね。

これって実はウチの母にもいえることなんです。
頭を打って硬膜下出血を患い、一応は血腫が消えて完治したものの、認知症が進行してゆくにつれ、徐々にそれが酷くなっている印象を受けるんです。今まで他人の悪口をいったり、罵ったりなんてことなんぞ一切なかった母が、わりとダイレクトな物言いで、誰かに対する不満をぶちまけるようになってきたからです。これまで散々っぱら振り回されてきた父にさえ、わたしの前では文句ひとつ、陰口ひとついわなかったのに。

こないだは、なんでかわかりませんが、息子のわたしを施設の職員さんと誤認していたようで。「アンタたちはお金をもらって仕事してるんでしょ! だったら、ちゃんと私の言う事を聞きなさいよ!」などと大声をあげられました。
悲しくなりましたね。理性の箍が外れているんでしょう。…ということはです。心の中には「お金をもらって〜云々」という本音を抱えていることにほかならない。そんな風に賤しく考える人ではなかったのに。仮に思っていたとしても口に出すような人ではなかったのに。ちょっと前まではついてた分別の境界が、ここへきて曖昧になっています。

この「社会的行動障害」というのは「高次脳機能障害」の一種で、記憶障害や注意障害、遂行機能障害などと並んで典型的な症状のようです。
感情をコントロールすることがにわかにできなくなったり、欲求を抑えられなかったり、些細なことにこだわって他者の意見を頑として受け容れなかったり、意欲低下や対人コミュニケーションが不得手になったりもするようです。場合によっては行き過ぎた正義感から、マナーを守らない他者に対して怒りをぶつけることなども症状として挙げられるようです。

そして、この障害への対応は、周囲が冷静になって見守る、ただそれだけのようです。ご本人が自分自身に起きている行動障害を把握できる状態なら、温かい言葉をかけて気持ちを落ち着かせたり、別のことに目を向けさせ気分転換を図ったりすることで改善できるようです。また、不適切な行動を回避できた時は褒めるとか、そういう地道な繰り返しがリハビリにつながるみたい。しかしながら、うちの母のように認知症を患っていると、それさえ難しいかもしれません。なにしろ自分が問題行動を起こしていること自体、自覚できていないのですから。


でも、よくよく考えたら、程度の差こそあれ、こういう人ってその辺にいくらでもいますよね。怒りっぽい人。頑固な人。マイナス思考で悲観的に捉える人。大人気なく、場の空気を読まず、子どものように喜怒哀楽を面に出す人。社会の中でそれほど目立たないから、「あの人ってちょっと変わってるよね」くらいに認識されているだけで。

身近にそういう方がいらしたら、ぜひ寄り添ってさしあげてください。
意見が対立しても決して感情的にならず、同じ土俵に立って怒りや叱責をぶつけず、火に薪をくべるような過剰なストレスを与えず。とにかくまずは冷静にさせてから、次の行動をそっと促すのがよさそうです。


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