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真夏の夜におすすめのホラー映画

ホラー映画好きかも、と思い始めたのはわりと最近のことだ。

もともと嫌いではなかったので、話題作は必ず観るようにしている。

ただ、必要以上にグロテスクだったり、音や映像で脅かしているように感じるホラー映画は、私の好きなタイプではない。

私が好きなのは優れたプロットで、そこに人間の本物の悲しさが描写されているもの。ミステリーを読む時と全く同じで、悲しみの実感がないところに、共感できる動機はないと思っている。

紹介するまでもない最高傑作のホラー映画『リング』は、ストーリーが素晴らしい。ミステリー好きの私にとって、クオリティーの高いホラーミステリーというのは、ハンバーグにチーズや目玉焼きをトッピングしてみましたという感じで、贅沢でただただ嬉しい。

貞子を見た時は単純に「怖い」と悲鳴をあげそうになったが、ストーリーを深く理解すれば、貞子の本当の悲しみに共感することになる。背景にある人間の感情や事情を想像し、どうしようもない悲しみが物語の軸なのだと理解する。

また、同じ意味でシックスセンスも最高だ。人間の本当の悲しさ、愛情、そして少しの希望が含まれている。誰もが知る名作であるということだけでなく、ストーリーが完成された、ハイクオリティーな映画だ。

リングシックスセンスは、私にとってはホラー映画の原点とも言える、最高傑作であり、この映画を超えることは並のことではない。

今回は、そんな私が「観てよかった」「面白いストーリーだった」と思えるホラー映画を紹介したい。


GET OUT(ゲット・アウト)

黒人の主人公が白人の彼女の両親の家に遊びに行く、という話だ。
最初から不吉な予感はしているのだが、それが何なのかすぐには分からない。終盤に近づき色々な予測を立てながら、思いを巡らせながら観ていたら、予想を裏切られて驚く。

『黒人』をテーマにしていることはわりに早い段階で気がつく。登場人物に黒人が多く出てくる。でも主人公以外の黒人、みんなどこか変だ。予想外の視点から物語を作っているから、最後までドキドキハラハラが止まらない。

気持ち悪いシーンなどもなく、比較的観やすいホラーで、「一番怖いのは人間ではないのか」と最後には考えさせられる。

監督脚本はジョーダン・ピールで、もともとはコメディアン。自身が黒人であるからこそ、このストーリーを思いついたのだろうか。秀逸で、スピーディーで、色々な感情を思い起こさせてくれる。


Hereditary (ヘレディタリー/継承)

この映画を観た時、ある意味では色々な価値観が崩されるような、考え方が変わるような、大きな変化が自分の中にあった。それくらい衝撃があった。

テーマはカルト宗教だ。カルトのリーダー的存在だった女性が死んでしまったというところから物語は始まる。その女性の娘がいて、その子供である孫は二人。男の子はティーンネイジャー、女の子はまだ8歳くらい。

この女の子チャーリー。祖母からとても気に入られていて仲が良かったので、祖母の死の後奇妙な行動を起こすようになる。

この映画で注目したいのは、従来のホラー(というか私の中のホラー映画のイメージ)をことごとく覆してくるところだ。

とても怖い出来事は、暗闇で起こるというよりは白昼の明るい中で起こる。あるいは朝から。いわゆる幽霊的なものは出てこない。出てくるのは人間と不思議な出来事。

そう、テーマはカルトで、その集団心理の持つ恐ろしさや、あるいは本物の悪魔とは一体なんなのか、ということを考えさせられる。

それなのに、この映画は観終わった後笑ってしまうような、わかりにくいユーモアと、「怖すぎてもう笑っちゃう」というような気持ちを思い起こさせるエッセンスが隠されている。

監督・脚本はアリ・アスター。ヘレディタリーで成功後の『ミッドサマー』の方が有名だろうか。ミッドサマーを観た方であれば、私の言う“ユーモア”のことを分かってもらえると思う。

もう一つ怖いこと。それはこの映画を観終わった後、映画に出てくる“悪魔”とされている者の存在を、つい気にしてしまうようになることだ。

The Blair Witch Project(ブレア・ウィッチ・プロジェクト)

この映画は、私が高校生の頃とても流行った映画だ。同級生は、けっこう映画館に足を運んだと思う。低予算ですごい興行収入をあげて、話題になっていた映画だ。

まるで若者がちょっぴりふざけながら撮っているドキュメンタリーのような始まり。だから見ている方も、何も起こっていない最初の頃はリラックスしていることができる。

「魔女がいるという森に行ってみよう」という軽いノリから始まったのだから。

あくまで素人が撮ったビデオカメラの映像、という感じで物語は進んでいく。走って逃げる時はブレたり、カメラを落としてしまったりする様子が、まるで登場人物の激しい心情とリンクしているようだ。

次第に私たちまで息苦しくなってくる。何かに追われているような感覚になってくる。

しまいには私自身がその森にいるような感覚になり、目を細めて暗闇を凝視してしまうようになる。

「そこに何かいるような気がする」と。

自分に合ったホラー映画を見つけよう

ホラー映画は一緒に観ている人と意見を交換したり、「怖い!」と言いながらワイワイ観ることもできる、楽しいものでもある。

「ホラー映画を観ると落ち込むのではないか」と思うかもしれない。けれど私にとっては、ドキドキハラハラして、終わった後は安堵して、現実の世界に帰って来れたことを喜ぶことができる良きものだ。

また、ホラー映画好きの人を見つけた時の距離の縮まり方は、他の映画のより早いと感じる。盛り上がるのだ。

子供と一緒に見れるホラー映画もある。おすすめは『グレムリン』。ギズモというエイリアンは、良い子なのでとても可愛い。悪いグレムリン達も、そろって映画館で映画を楽しむところなんて、面白くて笑ってしまう。

色々なホラー映画をリサーチしてみて、自分が楽しめるホラー映画を見つけてみよう。そしてその映画を観ている間は、自分の周りの全てのことを忘れて、集中して観ることができるだろう。

「何かが追いかけてくるような気がして怖い」という恐怖の感情が、日々のストレスを上回るからだ。

上質なホラー映画には、そんな素晴らしい効果があると思っている。

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