「自分を殺してまで叶えなければならない誰かの願いなんて…ないよ」
(前世のお話です)
名前はタオア。男性。
アジア系(黒髪)
ある、領主の血筋の嫡男。
タオアは正室の子。
血筋がものをいう時代…。
タオアは幼い頃から当主となるための教育を受け、育った。
物静かで、淡々としている。自分は“個”ではなく、国を治め、繁栄させる為に存在している。そう思っていた。
タオアには、側室の子であるが二つ上の兄トンアがいた。
トンアは普段ニコニコと笑い、タオアにも好意的であった。
「タオアが当主になった時は支えるよ」
いつもそう言っていた。
しかし…。
年月が過ぎ…いざ、自分が当主になる。
継承儀式の時…トンアは目の前に立った。
あの笑顔のまま…。
“義”を申し込まれた。
悲鳴を上げる従者もいた。
王の血を持つものはその権利がある。
これは、当主争いの宣言。
そして、どちらかが死ぬことを意味する。
拒否はできない。
状況は誰が見てもタオアの方が圧勝のはずであった。
いくつもの試験が行われ…。
そして…。
負けた。
やられた…。
背景には…。
陰謀が渦巻いていた事…。
トンアも命を懸けていた事。
トンアが当主になることは、自分の大切な人の願いであった。
すべてを理解した…。
当主争いで負けた瞬間に毒薬を飲まされ、血を吐いた。
トンアの足元に転がり…
そして…連れていかれた。
トンアの表情は見えなかった…。
本当は…負けた瞬間、状況をひっくり返す事はできた。
それくらいの準備はできたんだよ。
気付いてないと思ったのか…?
僕は
大切な人の願いを叶えた。
必要とされた者がここに立てばいい。
だけど…。
その後は地下で目を覚ます事になる。
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「自分を殺してまで叶えなければいけない誰かの願いなんて…ないよ」
毒薬を飲まされた時は、悲愴感もなく、悔しいとか、悲しいとか、何の感情もなかった。
顔色一つ変わらない。
国が自分を必要としなくなっただけ。
領地の繁栄こそ自分の存在意義。
トンアが引き継ぐ事になっただけ。
自分個人には価値がない
そんな自分にも…
“大切な人”は、二人いた。
一人は幼い頃から知っている、当主の妻になる人の事。
彼女は…トンアが好きだった。
ずっと知っていたが…
私も
彼女が好きだった…。
そして…。
もう一人…。
トンア。
トンアの事も大切だった。
自分が我慢して、誰かの願いを叶えてる…そんな事してませんか…?
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