世界一にまで上り詰めたピッツァ職人が、人生で1枚目に食べたピザのお話。
ここは、東京・中目黒。
数多くの飲食店がしのぎを削るこの街の大通り沿いに、仕事終わりに歩いていると思わず吸い込まれてしまいそうな、素敵なピッツェリアがあるのをご存知ですか?
中目黒に店を構える「Pizzeria e Trattoria da ISA(ピッツェリア エ トラットリア ダ イーサ)」は、数多くの著名人も愛する都内随一の有名ピッツェリア。そう聞くと敷居が高そうで身構えてしまいますが、実際足を運んでみると、お店の雰囲気は開放的でフランク。そのギャップに少しびっくりしてしまうかもしれません。
日々、石造りの大きな窯の前に立つオーナーシェフは、山本尚徳(やまもと・ひさのり)さん。世界ピッツァ選手権で、イタリア人ですらなし得なかった2連覇を史上初めて達成した、まさに「世界に認められた」ピッツァ職人さんです。
山本さんが焼き上げるピッツァは、気取らず、シンプル。素材の味が最大限に生かされており、女性でも1枚をペロリと食べられるほど。味も、値段も、店の活気も、全てがナポリそのものです。
そんな山本さんの人生に、私たちが手掛ける宅配ピザの「ピザーラ」が何度も関わっていると聞き、初夏の昼下がりにお店に伺いました。ピザーラとの知られざる出会いから、ピザーラとのコラボレーションで大ヒットとなった商品の開発裏話まで、山本さんは軽妙な語り口で、マルゲリータを片手にメモをとる私たちの心を引き込んでいきました。
人生で最初に食べたピザが、
ピザーラの「テリヤキチキン」でした
山本 僕は、静岡県清水市(現在の静岡市清水区)の出身です。学校まで自転車で往復何時間もかかる田舎に住んでいたこともあって、いわゆる「西洋の食」に触れたことがほとんどなかったんです。今でこそピッツァを作る仕事をしていますが、高校生になるまで、ピザトーストくらいしか食べたことがなかったと思います(笑)
人生で初めてピザというものに触れたのは、高校1年生の頃だったと思います。
街に住んでいた友達の家に何人かで遊びに行ったときに、バイクに乗った配達員の人が、箱に入ったピザを届けてくれたんです。友達のお母さんが注文してくれたんですが、当時の僕はまず「デリバリー」という仕組み自体にびっくりしました。チラシを見て電話すると、バイクに乗ったお兄さんができたての料理を数十分で届けてくれるということが衝撃だったんですね。
そして何より、箱を開けた時の感動は、今でもはっきりと覚えています。箱を開けた瞬間の湯気と香り。初めて食べる西洋の食べ物へのワクワク感。味は言わずもがな、もう、最高でしたよ。もう30年も前の話なのに、今でもその情景や味をすぐに思い出します。どこで作ってるんだろう、誰が作ってるんだろう、どうやって作ってるんだろう... 頰張りながら、様々な興味が湧いてきました。相当な衝撃だったんですね。
そんな、人生初のピザが、ピザーラの「テリヤキチキン」だったんです。これが、僕とピザーラの最初の出会いであると同時に、ピザどころか、西洋の料理との最初の出会いになりました。何切れか、家に持って帰らせてもらった記憶があります。
高校卒業後に上京、料理人の道へ
山本 ピザーラとのあの衝撃的な出会いの後も、僕の西洋食への興味は尽きず、地元で唯一といっていい、洋食を提供していた駅前の個人経営のファミレスでアルバイトをして過ごし、高校を卒業してから、身一つで上京することになります。料理人を志し始めたのはこの頃で、やはりヨーロッパの料理をやりたいなと思って、下北沢のイタリア料理店で働き始めました。
上京当初はお金もなく、宅配ピザを頼めるチャンスはなかなかありませんでした。それでも、お持ち帰りであれば比較的安かったので、友人とお金を出し合って、「テリヤキチキン」をテイクアウトしたことがありましたね。街でピザーラのバイクを見かけたりすると、高校生のときの思い出がすぐに蘇りました。料理人の道を歩み始めてからも、デリバリーピザは特別な日のごちそうだったんですね。
その後、初めてのイタリア旅行で様々な地域の料理を食べ歩いた際に、本場・ナポリのピッツァに魅了されました。味はもちろんですが、日常的にピッツァを食べているフランクな雰囲気も記憶に残り、そこからピッツァ職人としての修業に力を入れていくことになります。2006年には、当時青山のレストランで務めていた料理長の職を休職して再びナポリに飛んで、現地で偉大な師匠のもとに約1年半に渡って弟子入りをしました。
世界大会で優勝したのは、その翌年ですね。2007年と2008年のことです。
初めてピザーラに出会ったあの日から数えると、だいたい15年くらいということになります。
ピザーラとの再会は、あのテレビ番組
山本 僕は今でもピザの研究を欠かさないんです。地域によって異なる製法や具材について情報を仕入れたりする傍らで、デリバリーピザの動向もチェックしています。ピザーラも含め、人気のブランドは定期的に食べていて、我ながら「デリバリーピザマニア」といっても過言ではないほどになりました(笑)
デリバリーピザの魅力をお伝えする役割で「マツコの知らない世界」(TBS系列)に出演した際には、スタジオにピザーラのバイクを持ってきてもらいました。懐かしい思い出が一気に蘇りましたね。
あとは、なんと言っても、「ジョブチューン」(TBS系列)ですね。「ピザーラ×一流ピザ職人」の企画で、ピザーラの人気商品をジャッジする役割になりました。
放送では、「ナポリピッツァ職人」として、厳しい意見を言うシーンも多々ありましたが、ピザにも様々なスタイルやジャンルがありますからね。ナポリピッツァの観点から評価すると不合格になってしまうことはあっても、日本人の生活に溶け込んだごちそうとして見れば、美味しくないものなんて一つもありませんでした。
ナポリピッツァ職人としての評価じゃなくていいのであれば、全部合格を出したいくらいでしたよ(笑)
実はその番組収録の数日後、フォーシーズの役員の方々が僕の店を訪れてくれたんです。話題に上がったのは、僕が辛口コメントをした「マルゲリータ」についてでした。ピザーラの皆さんから、「ぜひコラボして、もっと美味しいマルゲリータを作りたい」という、真剣なオファーを頂いたんです。
本当に、収録後すぐのことでしたから、ピザーラの皆さんの本気度をひしひしと感じましたよ。一緒に商品開発に取り組むことになりました。
25年の時を経て、
コラボレーションが大ヒット!
山本 ピザーラの方々と一緒に仕事をしてまず最初に感じたのは、皆さんのピザづくりに対する「本気度」でした。これだけの数の素材やソースにこだわり抜いて、これだけの店舗数を持っていて、数をこなすだけではなく、お客様への熱い思いをみんなが共有できているのは、簡単なことじゃないですよ。ある意味では、ピザ職人たちの素材や製法へのこだわりを超えてしまっている部分もあると思います。しかもそれを、商品開発の方から、全国の店舗のアルバイトの方まで、皆さんが共有されているんですよね。
監修をさせてもらうなかで、色んな場面で「この人たちのことは、心から信用できる」と思いましたし、そんな「心のこもった美味しさ」だからこそ、僕の人生を変えるようなピザを届けてくれたんじゃないかな、と思いますね。
2018年、僕の方がピザーラのみなさんから色々と勉強させてもらいながら、最初のコラボレーション商品「女王のマルゲリータ」が完成しました。ネーミングにはかなり悩んだのですが、「そもそもマルゲリータというのは、イタリアの王妃の名前なんですよ」という話をさせてもらったところ、その気品や優雅なイメージを是非名前にも反映させたいということになり、「女王」という冠をつけることに。
全国のお店のスタッフの皆さん向けに、作り方をレクチャーする研修動画を収録したりもして、とても楽しい監修になりました。おかげさまで、ヒット商品として多くのお客様に受け入れていただいて、感謝の気持ちでいっぱいです。
今も変わらない、大切な思い出の味。
山本 こうしてピザーラの方々と触れ合っていて凄いなと思うことがもう一つあります。
それは、みなさんの本質が変わらないことです。毎シーズン様々な新商品を開発している一方で、ピザーラらしい味付けや製法は、私が高校生の頃から変わっていないんです。
今年でピザーラは誕生35周年だそうですが、それだけ長い間変わらないことって、簡単なことではないと思うんです。世界中の食を研究しているみなさんが、今でも日本の多くの人々に愛される最も普遍的な味覚を忘れずに貫き通しているのが、すごいことだなと。
だからこそ、僕は今でも、ピザーラを食べると、高校生だったあの日のことをありありと思い出すことができるんです。
日本人の味覚に合ったピザを突き詰めた結果、ピザーラには「カレーモントレー」「エビマヨ」などの日本にしかない独自のピザがいくつもありますよね。でも、これはイタリア人でも美味しいと思ってくれる美味しさだと思います。奇抜なように見えて、ピザとして成立する味にしっかり仕上げている。そのこだわりに触れられるので、今でもピザーラの皆さんとお話するのは、僕にとってとても楽しい時間です。
だから、いつまでも変わらないでいてほしいですね(笑)
いつまでも、あの感動した日のピザーラのままでいてほしいな、というのが、私の心からの思いです。
山本さん、素敵な思い出を共有してくださって、ありがとうございました。
日本中のお客様の大切な思い出になれるように、これからもスタッフ一同、頑張ります!
山本さん監修のピザを、ぜひご家庭で!
店舗情報
Pizzeria e Trattoria da ISA
〒153-0042 東京都目黒区青葉台1-28-9
メニュー・営業時間などはウェブサイトからご確認ください。