マウスピースの旅

 長いこと趣味でトランペットを吹いているけど、他のトランペッターに比べるとマウスピース遍歴は少ないほうだと思う。特にフリューゲルのマウスピースについては、元来トランペットに比べるとバリエーションが少ないこともあり、お気に入りのマウスピースひとつをかなり長いこと変えずに使っている。
 なのだが、ここのところフリューゲルのマウスピースを変えてみようと思うことが増えた。今のも気に入っているけど、ちょっと他のも試してみたいというか。サイズが小さく感じるようになったってのもある。出したい音も微妙に変わっているようにも思う。


 もともと、フリューゲルの音は何よりこの人が理想だった。

 そう、TOKUセンセイ。この人の音がとにかく好きで、なんとかこれに近づけたいと思っていた。ボーカルもいいんだけど、フリューゲルをもっと聞きたいと思うことが多かった気がする。
 ただ、こういう音を出すにはやっぱり楽器がインダービネンじゃないといかんのではないだろうか。そもそも自分自身の音色、そして自分の楽器ではこういう音難しいんじゃないだろうか。最近そう思うことが増えてきた。

 他の奏者で好きなフリューゲルといえば、この人だろうか。

 そう、トム・ハレル。この人が the night has a thousand eyes を演奏している動画がyoutubeに上がっているのだが、その演奏にものすごく感動して何度も聞き返したりしている。
 こういう、明るいけど柔らかくふくよかな音もいいよなあって思う。自分の楽器の特性と自分の本来の音色は、むしろこっちに近いのかもしれないとも思う。…いや、もちろんトム・ハレルのような演奏はできません。この人は本当にうますぎる。


 そして何より、マウスピース再考の動機は、録音して遊ぶようになって以来、マイクを通した自分の音がどうしても気に入らないということだ。
 もともとマイクを通さない音楽をすることが圧倒的に多かっし、そのほうが好きだった。ビッグバンドのフィーチャーものをさせていただく時も、しばらくマイクに向かって吹くことに違和感が付き纏った。
 けれども、ライブをやめて録音して遊ぶようになり、どうしてもマイクを避けて通るわけにはいかなくなってしまった。ここは何とかしないといかん。音色の問題もあるけど、演奏それ自体の安定性も考えないといかん。そう思い、マウスピースを見直してみようかと思ったりしているわけだ。いやまあ、道具を変えても、自分自身の力量が上がらないとどうしようもないのはわかっているつもりなんだけど。



 そうして、ネットで試しに手に入れるに至り、届いた新兵器を本日川辺で試してみた。吹いてみた印象の記録と、簡易版の動画を保存用にここにもあげておくことにする。演奏が拙いのは考えない。

 ひとつ目がこれまでのもの。二つ目が新しいもの。
 新しいほうはサイズ的にはかなり小さい。カタログスペックの数値はなんだあれってくらいのもの。本来、サイズを上げることを考えていたので、その意味では逆方向なんだけど、リムの形は割と合うようでサイズの割には吹きやすかった。流石に低音が苦しいが、中音域より上はかなり安定する。
 音色を比較するなら、従来のは暗くてエアーの音がよく入る感じで、新しいのは輪郭がはっきりして明るいがこもる感じ。ある意味、これまでのほうが音色は暗いけどオープンなのかもしれない。
 新しいの、サイズは確かに小さいために慣れが必要だが、決して悪くないなーという印象。軽く吹ける感じがするのはいい。これまで、ダークでハスキーな音が欲しかったのだけれど、明るいけど柔らかくふくよかで、「ぽー」って感じのかわいらしい音に聞こえるのなら、それはそれでアリだ。

 カラオケ屋も再開するようだし、もう少し吹き比べたいな。


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