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A子の結婚【式当日の脇役たちのヘアメイク】

A子の結婚式に、私は母から受け継いだ着物で参加。
母の友人に着付けのプロがいることから、実家で着付けをしてもらったあと、ホテルへ向かい、髪のセットと化粧をプロの方にお願いすることになっていた。

まず、髪のセットをしてくれるという部屋に向かい、着物に似合うセットが完了!
あとは化粧のみ。基礎化粧品で肌は整え、日焼け止めと化粧下地までをつけた状態で、いざ、お化粧部屋へ!
と、思ったら、なぜか花嫁の控え室に案内される。。。

ちょっとおかしいな?と思いながらも、中にはいると支度中のA子がいる
挨拶程度に「おめでと~」なんて声をかけたあと、60代後半くらいの気の強そうな濃い化粧のおばさまに、花嫁の隣の席に座るように促される。。

「え?ここ?」と思いながらも案内された席に座ると、その気の強そうなおばさまに、おもむろに顔にパフをあてられ、
「どこまでやってる?」と聞かれ、
ちょっと戸惑いながら
「あ、は、はい、化粧下地まで」と答えると、「じゃあファンデからね」と、
突然、化粧がスタート!!
「おまえがやるんかーい!!!」
と思う間もなく、化粧はどんどん進む。。。

よくみると、ファンデのパレットや、備品などが、汚い!!薄汚い!!
アイシャドウやチークなどのパレットも、欠けも目立つし、一体いつから使ってるの!?という、古くさいカラーが並んでいる!

なんとも雑に、顔にリキッドファンデを塗られたかと思うと、固形パウダーのファンデをまるで壁の塗装でもするかのように、顔全体に塗りたくられていく・・・・

もはやその現状が恐怖でしかなく、
「早く終わってくれ。。。」と思いながら
そっ・・・と目を閉じた・・・
「チーク塗るわね~」と、ドピンクのチークをシュッシュッと勢いよく円を描いて塗られ、
もはや諦めの境地は近い・・・
「マスカラ塗るわね~。下の方向いて~。」
もう地獄でしかない。

「アイシャドウはこのブルーがいいわね~」
と、ブルーのアイシャドウを塗られそうになったときに、さすがに抵抗した!
「あの!ブルーは苦手で!」
なんとか阻止!
「じゃあアイラインひくわね~」
もはや、目元はアイライン頼み!!
「じゃあ最後に口紅ね。このピンクがいいかしら。まぁ、素敵な唇~。はい、最後に『んぱっ』てしてね~」

ん、んぱぁぁぁっ!!

「はい、できたわよ~!すてきぃ~!」
と言われ、恐る恐る現実世界に戻ってきた私は、
鏡に写る自分の顔を見て、気を失いかけた。。。

「ブス、ブスがいる!すっぴんのときよりひどくなってる!!キャァァァァ!!」と、さすがに声には出せないので心の中で悲鳴をあげ、
「あ、ありがとうございました」と、そそくさとその部屋をあとにし、自分が持ってきた荷物を取りに急いで控え室へ!!
「やばいやばいやばい!これはやばい!」と、自分の持参した化粧品をチェック!!
プロに任せるつもりだったから、お直しレベルのものしか持ってきていない!
でもとにかく、このブスをどうにかしなければ!
と、人があまり来ないであろう、はじっこあたりのトイレの洗面へ!!

とりあえずピンクすぎる丸々したチークをティッシュで拭き取る!
目元のダマになったマスカラをなんとか細かく分ける!あまりにもファンデを塗りたくられ、のっぺりした顔になった部分も拭き取る
とりあえずブルーのアイシャドウだけは阻止して良かった
奇跡的に茶系のアイシャドウを化粧ポーチにいれていたので、目元に少しのせた
ドピンクの口紅も拭き取り、自分が普段使いしている、落ち着いたカラーの口紅を塗り直し、グロスをのせた・・・
でも口紅はベージュピンクだったので、着物にはインパクトのない色味・・・
そこは残念だったけど、昭和歌謡が似合うカラーの口紅よりは、マシだった・・・

最初から自分でやれば良かった・・・

以前友人の結婚式に出席した時、式場でプロの方にお願いしたときは、花嫁さんと同じ部屋で化粧なんてありえなかったし、
もちろん、私の式の時もそう。
きちんと花嫁の部屋は花嫁の部屋として存在し、専属のヘアメイクさんがいて、
ゲストの方たちの着付けやヘアメイクは、また別のスタイリストさんたちがやってくれていて、
A子B子も、私がお願いしていたサロンのスタイリストさんたちに、ヘアメイクをしてもらっていて、イマドキな形に仕上がっていたし、
こんなにも、これはありえない
と思ったメイクは今までになかった。。

いま目の前にいるのは、デブ時代より悲惨なブス・・・
私自身特別整った顔をしているわけではないと自覚しているし、「キレイ」という言葉をかけられたとしても、雰囲気美人や雰囲気可愛いの部類の人間だというのもわかっていたけど、
いま鏡の中にいるのはかわいそうなくらいのブス・・・
これが自分が主役だったら耐えられなかった!!
式場を飛び出すレベル!!

着付けとヘアメイクを現地ですることになっていたB子も、ヘアセットが終了したあと、メイクをしてもらっていたが、同じ現象が起きていた
いや、同じというより、私よりも悲惨だった
B子はA子の絶対的支配を受けながら育ってきた故に、相手に強く意思表示ができないタイプ
だから私が必死に阻止したブルーのアイシャドウが、見事に、施されていた・・・

ちなみに、私がこの日着ていたのはベージュ系の淡いカラーの留め袖。
B子はハタチの成人式で着用した赤い振り袖。
こんなにも色合いもタイプも違う着物を着た人間に、まったく同じカラーを使ってメイクをするセンス・・・

とりあえずB子には正直に言った
A子がいない場所ではまだ話ができる方だから。
「そのメイク、かなり、やばいよ
絶対なおしてきたほうがいい!!」と。
でもB子は、おかしいと分かっていても、長年A子に支配されていきてきて、染み付いた子分気質が現状に抗う力を奪ったのか、
「もうこれでいい。」と・・・

そして、式本番の幕があがる・・・