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「どんな映画にも一つだけはいいところがある」

 もう十年以上前のことだが、日比谷シャンテに、ゴダールの『アワーミュージック』という映画を観に行った。上映前に「おっ」と思ったのが、スクリーンのサイズが「スタンダード」に切り替わったこと。昨今の映画は、大体「シネスコ」か「ビスタ」の場合が多いので、洒落てるなあと思った。

 映画は昔から好きで、以前は映画館にもよく通っていた。子どものころ、親に連れられて立川の映画館に『ドラえもん のび太と竜の騎士』を観に行ったとき、同時上映された『オバケのQ太郎』の立体映画を立体メガネ(赤と青のセロファンが貼られたもの)で観たのだけれど、今どきの3D映画なんかよりもよっぽど飛び出して見えたものだ。

 昔はテレビでも映画番組がいくつかあったが、「さよなら、さよなら、さよなら」で有名な、「ヨドチョーさん」こと、淀川長治さんが解説をしていた「日曜洋画劇場」が好きだった。

 ヨドチョーさんが言っていたことですごく印象に残っているのが、「どんな映画にも一つだけはいいところがある」、という言葉。以来、どんなB級、ときにはC級と思えるような作品と出合っても、その作品のいいところを探すようにした。ヨドチョーさんのその言葉は音楽やほかの芸術にも言えることだと思うし、もっと言えば人間に対しても言えることだと思う。

「苦手だなあ」と思えるような相手と出会っても、その人のいいところを探してみる。たとえどんなに小さなことであっても、何か一つはいいところがあるはずだ。そこを徹底的に自分の心のなかで褒めてみる。最初は心からそう思えなくてもいいから、褒めてみる。すると次第に、その人に対する見方も変わってきて、それはきっと相手への感謝にもつながるし、自分を見つめ直す貴重な機会にもなると思う。

 好きな映画をいくつか挙げてみる。セルゲイ・パラジャーノフの『ざくろの色』、『サウンド・オブ・ミュージック』、クリント・イーストウッドの『グラン・トリノ』(これぞ映画だという感じがする。最近の『運び屋』も面白かった)、『フェリーニのアマルコルド』、ジム・ジャームッシュの『コーヒー&シガレッツ』など。邦画だと『Laundry』や『かもめ食堂』あたりが好きだ。最近、ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラの『CAROL』を観たが、すごく良かった。

 高校生のころ、ケビン・コスナーが監督、主演をした『ポストマン』という映画を観に行った。この映画は全くヒットせず、評論家筋からも酷評された作品で、確かに劇場には、僕ともう一人か二人くらいしかいなかった。
 
 僕はこの作品が好きで、その後DVDも買った。ケビン・コスナー自身もこの作品にはかなり入れ込んでいたようで、あまり知られていないが、いまは亡きトム・ペティも出演しているし、ロック・フリークのケビン・コスナーらしい、"リチャード・スターキー"、"ゲッティング・ベター"なんて台詞も出てきて面白い。

 この映画は崩壊した世界が舞台になっているのだが、人々が外で『サウンド・オブ・ミュージック』を観ているシーンがあり、みんながうっとりとしながら、ジュリー・アンドリュースが歌うのを観ていたのが印象に残っている。

 先述したように、『サウンド・オブ・ミュージック』も大好きな映画の一つだ。何度観てもいい。雷を怖がった子供たちがマリアの部屋にやってきて、マリアが「私のお気に入り」を歌うシーンが好きだ。歌は心を救い、生きる希望となる。

 ちなみに、ケビン・コスナーの作品だと『8月のメモワール』もお勧め。隠れた名作だと思う。

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