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(前編)会社も採用も“インターネット的”であるべき。ミラティブCHROが考えるオープンな採用方針

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この数年で、数多くのスタートアップが生まれ、資金調達や事業開発に関するノウハウの流通が盛んになりました。その一方で、創業期・成長期における仲間集めのリアルなストーリーは共有されていません。

「founders」は、スタートアップのファウンダーの言葉によって、数多くのファウンダーの力になりたいと考えています。スタートアップの競争力に直結する「人」に焦点を当て、ファウンダーたちのインタビューをお届けしていきます。

今回お話を伺ったのは、株式会社ミラティブのCHRO(最高人事責任者)鈴木修さん。サイバーエージェントやグリーなど、日本を代表するIT企業の人事を経て昨年10月同社に参画。社員数が50名を超え、100名規模へと拡大しているミラティブの”採用のいま”について、鈴木さんの想いに迫ります。

創業期だからこそ、会社の「ありのまま」を出していく

――現在50名以上の社員が活躍するミラティブですが、どのように仲間が増えていったのか。創業期の想いなども合わせて、教えてください。

「わかりあう願いをつなごう」という思想のもとに会社がスタートしました。ミラティブでは「わかりあえる瞬間」を増やすことで世界の幸せに貢献できると考えていて、そのひとつの表現として、スマホゲームをメインとしたライブ配信アプリを展開してきました。

この思想は、創業期の仲間集めにも深く関係しています。ミラティブはDeNAから独立した会社なのですが、初期メンバーは代表の赤川が当時一緒に働いた実績をもとに、心底わかりあえるメンバーだけを率いて独立しました。

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ミラティブ CHRO 鈴木修さん。インテリジェンス、サイバーエージェント、グリーにて組織・人材開発や採用などを担う。その後SHIFTでの取締役を経て、2019年10月よりミラティブに参画。最高人事責任者としてHR本部を立ち上げ、採用強化や人事制度構築などを統括している。

その後はリファラルでの採用を続けつつ、20人を目前に採用HPを開設しました。そこで決めたのは、創業期だからこそ、会社の勢いやありのままを、むしろ全面に出していこうということ。

メンバー全員の紹介を入れることで、できる限り会社を肌で感じていただいき、会社の行動指針にも「愛」なんて言葉を入れていますが、恥ずかし気もなく出すことで会社の温度を伝えたいんです。採用広報として外に出すものだからといって、決して着飾ることなく、かといって控えめでもなく「ありのままの今」を伝えることが採用候補者に対してのフェアネスであり、その方ともより深くわかりあえるだろうと。

その後は、メンバー同士が互いにインタビューしあう対話形式の長文記事を発信したり、話題になった「採用候補者への手紙」を公開したりと、とにかく会社の内側をできるかぎりリアルに伝えていくようになりました。

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2019年2月に公開され話題となった「採用候補者への手紙」。2020年1月現在で、21万PVを超えている。現在も採用HPに掲載され、ダウンロードも可能。およそ50ページにも及ぶ。

――「手紙」やnoteを拝見しましたが、コンセプトや思想だけでなく、例えばマネタイズの進捗や昇給額などの内部情報、会社の課題といったリアルなことまで書かれています。そこまで内側を明かす理由は?

前提として、ミラティブでは創業期から、会社経営の思想としてオープンネスやフェアネスに重きを置いてきました。メインのコミュニケーションツールであるSlackでは、他社の人が見たらかなりびっくりするような情報を、部署をまたいで共有しています。

そうすることで、情報格差によって経営陣がメンバーを搾取するような文化を防ぐことができますし、社員は会社に対してより一層の参画感を持ってくれる。さらには、各々が情報を保有することで様々な場面での適切な意思決定が主体的に行われていくことも狙いの一つです。
そういったオープンネスやフェアネスを会社の中で大事にしているからこそ、それは選考を受けてくれる方も一緒であるべきですよね。

そもそも、隠そうと思っても隠せない時代。そして組織と個の関係性が変化している時代。だからこそ、会社のリアルを主体的に、トレースなしで伝えていくスキルが問われている。会社が抱えている課題ですら露わにしていく。会社も採用も、インターネット的になる必要があると考えています。

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エンジニア向け採用資料である「CTOからの採用候補者様への手紙」。チーム構成や課題といったことから、採用後の支給品などの細かいことまで記載されている。

日常を発信し続けることで、やがては潜在的な転職者層にリーチする

――採用候補者に会社のリアルを伝えるにあたって、何かこだわっていることは?

一つの方法としては、実際に体験してもらうことです。選考プロセスで、時間の許す限り仕事の一部に参加し、社内イベントにもでてもらう。場合によってはSlackにも入って社員とコミュニケーションをとっていただくなど、とにかく社内の世界観に没入してもらいます。

それから、よりミクロなことで言うと発信する際の言葉遣いもそうですね。外に出る資料も、内向けの資料も、文体で日常感を出していく。広報観点で考えれば、綺麗な言葉を使うべきなのかもしれないけど、温度感を優先することを大切にしています。

中身も大切なのですが、発信を通じて会社の「ありのままの今」をそのまま感じていただきたい。直接の対話だけでなく、テキストを通した対話も、まさにメラビアンの法則を意識することが大切だと考えています。

赤川の文章も非常に長くて哲学的で、「どういう意味?」みたいなところが結構あります(笑)。でもTwitterなど見ていただければ分かるんですけど、そもそも赤川は日常がそういう人物なんです。なので翻訳するのもなんか違いますよね。長くて分かりづらくていい。そのまんま、ある意味での”ミラティブの生々しさ”を伝えていきたい。

――例えば多くの採用媒体では、会社の輝かしい実績が大きく謳われています。そのような情報と「リアル」や「生々しさ」は相入れないように思うのですが。

「○○アワードを獲った」とか「ユーザー数が○○人に達した」とか、そういうポジティブな情報を発信することも当然大切ですし、それも会社のリアルだと思います。

一方で、それは一朝一夕に生まれた結果ではないし、プロジェクトチームだけが頑張ったわけでもない。ミラティブの日常生活のなかで育まれてきたチーム感だったり、とにかく小さな出来事の積み重ねの結果なんですよね。結果より、たどり着くまでのプロセスを感じ取っていただくことの方が大切。

ですから、ミラティブでは、そういったポジティブなことがあったときだけリリースを出したり情報発信するのではなく、常にリアルな状態を発信し続けることを大前提にしています。

そういう意味で、ミラティブってナラティブ(物語的)なことも大事にしているんです。会社の日々の出来事や、社員が普段何を思っているのかみたいなところも、ちゃんと伝えていきたいんです。その結果として、ミラティブの歴史=物語が創り上げられていく。

そう考えると、採用だからと言って飛び道具的な奇をてらったコンテンツをつくる必要はなくて。むしろ経営とか、会社の日常そのものを常に外に発信していって、そのなかから、しかるべきものが採用広報に出ていくという流れがいい。

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――「採用」が独立してあるのではなく、「日常」のなかに含まれている。そのように考えると「何が採用に結びついたのか」という確認が難しいように思うのですが。

例えば「この記事がどれだけ採用につながったのか」という視点でKPIを置いてしまうと、ちょっと違うかなと。それよりも、ひとつひとつを資産として捉えて、どれくらい発信したかを”量”で追っていくことが良いのではないでしょうか。

採用は一過性のものではなく、そもそも長期的なものと考える必要がある。これは非効率的な考え方に見えて、人が転職するという思考と行動のパターンや時間軸を考えるとそう考えざるを得ないし、それが結果的に良い成果を生み出していく。

「いま転職する気はない、でもいつかは転職する」ならば、いま知ってもらって、転職したいと思ったタイミングで想起してもらう。当たり前ですが、まさにそれがブランディングであって、広報。

僕がサイバーエージェント時代に書いた記事を読んで覚えていてくださった方が、僕のミラティブへのジョインを機に選考にきてくださることもありました。そうすると、十何年越しの成果か、みたいな(笑)。

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いますぐ転職どうこうではないけれど、ミラティブって会社の中が見えやすいな、そう思っていただける発信を続けていきたいですね。その積み重ねのなかで、時を経て、いつか思い出してもらえると嬉しい。そうやって入ってきた方とは、早くにわかりあえる気がします。

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続く後編では、「採用担当はどうあるべきか」「具体的にはどういった手法を取るべきか」といった一歩踏み込んだテーマから、鈴木修さん自身が思う「採用の失敗」について聞いていきます。


取材:清水 翔太
編集:安部 紗乙莉

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