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ショートショート#5 『立方体の思い出』②

アッシの立方体もだいぶおとなしくなりやしたがね。

そりゃ昔はムチャしたもんです。人生の節目節目にゃ、ダイスとして振りまくり、気に入らねぇ奴がいりゃあ、目ん玉に喰らわす鉄砲玉に早替わり。

それが今となっちゃアッシの手のひらで大人しくなってる。

これがまた、変幻自在なんで。あるときゃ豆粒みたいに萎れてる。かと思えばいきり立って、とても片手には収まりきらねぇ。

アッシがイキってた時分、コイツを見失いましてね。ついに来る時が来たと一年もベソかいてたら、なんのことはない、肘ついて泣いてる壁がさ、ほかならぬコイツの内壁だったのよ。そうなんだよ、アッシは長らくコイツの中に囚われてたってワケ。

アンタもとんだ勘違い、自分は変幻自在どころか、生まれてこの方形から大きさから変わらないって、この頃ではコイツも問わず語りにナマ言いやがる。てぇと、なにかい、アッシの一人相撲だったと。

いや違う。言いたいのは、それが人生。

立方体風情が洒落くせぇ。

(409字)

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