ショートショート#15『罠の中の地味に怒る』

そりゃ、あんな夜中に、あんな際どい格好の女の子に部屋を訪ねてこられちゃ、お酒も入ってるからね、劣情がほら、ムラムラっとならないわけないじゃない。そういう弱みにつけこんでさ、部屋を盗撮するなんざ、人が悪すぎるよ。それをネタに私をゆすろうってんだからね。

俗にいうハニートラップってやつでしょ。引っかかった私がぜんぶ悪いよね。こんなん公にされたら、私は一巻の終わりだし、嫁も子どもも外を出歩けなくなる。外遊先で、ハニートラップにかかって職を失い、一家離散だなんて、ご先祖様へ顔向けはおろか、末代まで呪われるでしょうよ。

いや、でもね、こうなった以上、腹くくるしかありません。なんです、あなた方の要求は。え、これから決める？　そりゃあ、野放図もいいとこでしょうが。なに？　ここぞというときの切り札にする？　だから私にはもっと偉くなってもらわないと困る？　いや、それ、励ましてるから。こんなときに人を励ましてどうするのって話なのよ。

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