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筋肉と頭脳の調和

「ミケランジェロ杯」の新味は、舞台に上がる競技者の一人が下剤を飲まされることだろう。これが誰かを推理するのが副次的な競技で、こちらは「ホームズ杯」。筋肉と頭脳の調和こそ「名探偵ボディビルディング大会」の精神である。

下剤は強烈で、予選段階でほとんどの下剤嚥下者は失敗する。笑顔を歪ませる額に汗するなんてのはズブの素人で、これらをクリアしても力んだ瞬間の放屁は免れない。放屁で終わればよいが、ミが出るケースも少なくないから、筋肉とは無縁のホームズ杯の出場者は、五感を研ぎ澄ませて競技に臨む。誰が下剤嚥下者かを答えるのは早押し形式で、正解以上に口上としての推理の鮮やかさが問われている。それを審査するのが、日本探偵小説家協会のお歴々。

決勝ともなれば熾烈を極める。応援団は香を焚き上げブブゼラを鳴らし、下剤嚥下者は涼しい顔して競技を続ける。中には三連続で嚥下している者だってあるのである。

筋肉と頭脳の祭典は今年で百周年を迎える。

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