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それでも私はフォンセカに「ありがとう」と伝えたい

みなさんお久しぶりです。酢ダコです。

前回の投稿(初投稿)から1年以上も経ってしまいました。
※実は1年前に1つ書いていたが現在は非公開(あまりにも適当だったので)

2シーズンにわたるフォンセカローマの旅が終わり、さすがの私も重い腰を上げた次第です。

ところで、モウリーニョ就任は大変驚きました。しかもシーズン中の発表。
ロマニスタたちの来シーズンへの大きな期待のおかげで5月初頭の不出来も見過ごされていましたね。
あの“シーズン中の就任発表”という経営陣の判断は見事だったと思います。
おかげで、フォンセカは想定よりもあたたかく見送られました。

さて、タイトルに戻ります。

私はフォンセカには感謝しています。

と同時に、同情もしています。
あの状況であれば彼以外の監督でも思ったような結果は出せなかっただろうと。

もちろん期待外れの結果を肯定するわけではないですし、不甲斐ない試合をしたとき、交代人数を誤ったときは怒り狂ってます。ご安心ください。

ここからは、私がフォンセカに感謝・同情する理由に触れながら、この2年間を振り返ります。

2年間の備忘録なので長いですよ。覚悟してください。

減俸を受け入れ、沈没船ローマ号へ

2019年6月、フォンセカはローマの監督に就任。

報道によると、彼はローマのお財布事情を理解し、シャフタールで受け取っていた年俸を下回る額での契約を受け入れたと言われています。

給与よりもイタリア主要クラブでの指揮経験というキャリア形成の方が重要だったのかもしれません。

当時のローマはポジティブな未来が全く見えない沈没船状態。

チーム状態は、
ディフランチェスコ・モンチ体制が崩壊し、ラニエリの温情で敗戦処理がされたばかり。次のシーズンへのモチベーションなどありません。

在籍選手は、
ローマの心臓であったデ・ロッシが突然すぎる別れ。
UCLを逃したことに加え、モンチの連れてきた即戦力級の選手たちが軒並み不良債権化したことで、複数の主力選手の放出が予想できました。

2015/16シーズンからローマを応援しはじめ、暗黒期らしい暗黒期を知らない私にとっては地獄のような夏でした。8位転落もありうるぞ、と。
シーズン中よりシーズン後の方がストレスを感じるのはロマニスタの使命ですかね。

結果として、主力はマノラス、エル・シャーラウィが売却されました。
ジェコは奇跡的に残留しましたが。

「誰がこんなチームを率いたいと思うんだ」と絶望していたなか、減俸を受け入れてでも就任してくれたフォンセカが救世主に見えました。

経営陣としても、彼には、国内リーグ3連覇を成し遂げた勝者のメンタリティ・マネジメント能力と、不利なチーム戦力であってもUCLで強豪を脅かした戦術眼・意外性に期待していたのでしょう。
当時のチーム状況・予算を鑑みると、最適なプロフィールだったと思います。

サプライズ起用・システム変更で危機を乗り越える

フォンセカはサプライズ起用・大胆なシステム変更によってチームの危機を三度乗り越えています。

一度目は、2019年10月のサンプドリア戦後です。

ペッレグリーニ、ディアワラ、クリスタンテが負傷離脱。CHがヴェレトゥしかおらず、頭数がそろわなくなりました。

どうするフォンセカ!?

彼は「マンチーニのアンカー起用」を選択します。
守備力のある彼をフィルター役に置くことで中盤の守備が安定。
足元も十分あるので攻撃力も落ちませんでした。

その場しのぎとも思えるこの起用で、難敵ミラン、ナポリの撃破に成功。
一時は3位にまで順位を上げました。

二度目は、コロナ中断明けの2020年7月からのシステム変更。

19/20もシーズン後半に入り、イタリア国内でフォンセカ対策が講じられます。徐々に試合にも閉塞感が出てきました。
それを示すかのような直近9試合で2度の3連敗。自身の首も危うくなってきたこのタイミングで決断します。

就任以降続けていた4バックを諦め、ナポリ戦で初披露した3バックを基本に戦いはじめます。
3-4−2−1を使いはじめたパルマ戦以降、残りのシーズンをリーグ戦7勝1分で駆け抜けました。

とはいえ、フォンセカは2シーズン通して離脱者だらけで可哀想でしたね。
(具体的な数字は、現地メディアや他のロマニスタの方がツイートしてくれているので割愛します。)
もともと出場メンバーを固定することを好むことから、練習では負担をあまりかけないと聞いていました。彼のマネジメントのせいではないでしょう。

これはローマが呪われているとしか考えられません。もしくはラツィオのせい。
原因究明は続けるべきですが、スタッフの問題でもなさそうでしたし、しばらく続くかもしれませんね。

孤立無援で過ごした夏

そんななか2020年6月にSDペトラーキが契約解除されます。
彼をクビにした本当の理由は表に出ておらず、今もゴタゴタが続いています。

モンチ体制の反省からか、フォンセカ・ペトラーキ体制では、
・監督は希望プロフィール(ポジション、タイプ)を出すのみ
・SDはそのプロフィールに適う選手のうち、予算内で最も投資対効果の高い選手にアタックする
という二人三脚のメルカート戦略を徹底していたように感じます。

この2人は相性が良かったのか、スモーリング、ムヒタリアン、イバニェス、ビジャールなど新加入選手の多くが期待以上の活躍をしていただけに残念でした。

そして、8年続いたパロッタ体制が終わります。フリードキン体制の発足です。

経営体制がゼロから作られるなかでSD不在、まともなメルカート戦略がとれるはずもありません。
本当はチームづくりに専念したいフォンセカが、メルカートを手伝わなければならなかったことは想像に難くありません。

この本職SD不在という状況がフォンセカにとって最大の痛手だったと個人的には思います。
心底同情します。

結局、新シーズンのスカッドが固まるのは開幕直前でした。
既定路線であったスモーリングの合流も遅れ、彼のコンディション不良にもつながりました。

シーズン前半でのサプライズ快進撃

大波乱の夏を過ごしたローマですが、コロナ明けの勢いそのままに快進撃を見せます。現地メディア、ご意見番たちも驚いていました。

上手くハマった3−4−2−1を継続し、前シーズンからの無敗記録が11月パルマ戦まで続きます。
※ヴェローナ戦の没収試合は除く

その頃、CBの大黒柱スモーリングが長期の離脱。3バック存続の危機です。

ここで三度目のフォンセカのサプライズ采配が光ります。

クリスタンテのCB起用」です。
正確かつ強烈なキックを持つ彼を最終ラインに置くことで、ビルドアップが安定かつ多彩に。縦に早い新たな攻撃スタイルを手にしました。

ムヒタリアンの大活躍も重なり、勝ち点を重ねます。

負傷者を多く抱えながらも「順位表9位以下の相手に全勝」という偉大な(?)記録とともにシーズン前半戦を折り返しました。スクデットも狙える位置をキープです。

一方、ELでもターンオーバーを駆使しながら、安定かつ着実に勝利を重ねて決勝トーナメントに駒を進めました。

この時期のローマは、戦術がチーム全体に浸透し、(ムヒタリアンを除くと)誰が試合に出ても一定のパフォーマンスが出せる、再現性の高い状態でした。
ガスペリーニのアタランタに近いかもしれません。

格下にしか勝てない問題

一方で、同格または格上とされるユベントス、インテル、ミラン、ナポリ、アタランタ、ラツィオには2シーズンを通してほとんど勝てませんでした。
この事実はフォンセカ続投への反対意見としてよく使われていました。

一定のパフォーマンス以上は発揮できない(=同格以上には勝てない)という点では、これもある意味、再現性が高かったと言えるでしょう。

各チームとの4試合、全24試合のうち勝ったのは、
19/20シーズンはミラン、ナポリ、※ユベントス ※順位確定後の消化試合
20/21シーズンはラツィオ
のそれぞれ1勝、計4勝でした。

なぜ強豪に勝てなかったのか。
もちろんサッカーには様々な要因が絡み合い、正解は誰にもわかりません。
ただ、強いて挙げるとすれば「圧倒的な個の不在」です。

具体的には
・ジェコの不調
・ザニオーロの不在
と考えます。

正直に言うと一番の原因は、ビッグマッチになるほど浮き足立つのか、後方でつまらないミスをしての失点が多かったことかと。

セリエAにおける、強豪相手や強豪同士の試合を見てみると、
整った守備組織を崩すシーン(カウンターは含まない)は、
・個での突破
・セットプレー

でほぼ構成されています。

そして、ローマで相手の守備組織を破壊する系の個人突破ができるのは
ジェコ、ザニオーロ、パストーレ、ヴェレトゥ、スピナくらいでしょう。
これ以外の選手はビッグマッチだと消えがちです。
(なぜムヒタリアン等が入らないかを説明しようとすると煩雑なので割愛します。)

先述の(ユベントス戦を除いた)3勝の内訳を見てみると以下の通りです。
・ミラン戦 ジェコ:1G1A ザニオーロ:1G
・ナポリ戦 ザニオーロ:1G
・ラツィオ戦 ジェコ:1A

結果の数字だけでなく内容全体を見てもらっても、ジェコかザニオーロがMOM級の活躍をしています。

やはり好調時のジェコはワールドクラスです。
年齢によるものなのか、最近は調子の波が大きすぎます。若手か。

均衡した試合を引き寄せるのは個の力。私はそう信じています。
数年前のジェコだったら、3−4−2−1でザニオーロを起用できていれば、フォンセカの未来は変わっていたかもしれません。

フロレンツィ、ジェコとの不和の噂

時系列的におかしいですが、フロレンツィとジェコのことに触れないわけにはいかないでしょう。

19/20シーズン前半、4バックがメインの頃、
左には攻撃性能に優れたコラロフがいたので、戦術上、右サイドバックはバランスをとって守備的に立ち回ることが求められていました。

守備に強いサイドバックはいませんでしたが、スピナ、サントンには上背がありました。
フォンセカにとってフロレンツィを優先して使う理由はなくなったわけです。

結果として、彼は出場機会を減らし、1月のデルビーもベンチで見守りました。
直後にユーロを見据えて継続的な出場を求めて、バレンシアへのレンタル移籍。

この頃からフォンセカとフロレンツィの不和が噂されはじめました。

コロナ明けに3バックへとシステム変更が行われ、フロレンツィの強みを生かせる環境が約束されます。(フォンセカも彼の残留を希望したと言われています。)
しかし、彼はPSGにまたもレンタルで移ります。

この事実が彼らの不和の噂を決定づけるものとなりました。

一方、20/21シーズンを折り返す頃、ジェコはチーム練習に参加しなくなり、キャプテンも剥奪されました。
戦術面で食い違いがあり、言い争った結果と予想されています。

しかし、内部情報が流出しまくっていたパロッタ体制とは異なり、フリードキン体制は完全クローズ。
フロレンツィはなぜ他所に行くのか。ジェコとの間に何があったのか。おそらく彼らが移籍するまで真相はわかりません。

内部情報のガードはすごい固いのに、フリードキンJr.の恋愛事情はダダ漏れだったのは笑いました。

このクローズな状況はメディアとっては面白くなかったでしょう。
よほどネタがなくて困ったのか、ジェコの件をきっかけにゴシップネタが増えつづけました。
ファンにとっても真相がわからず不安が募り、あたかも事実かのように書かれたゴシップに騙されるロマニスタも散見されました。

不和を噂された相手が、ロマニスタからの人気も根強いフロレンツィとジェコだったことが、彼らのファンにとってフォンセカへの疑問視が強まる原因だったのかもしれません。

その後もチームに関して根も葉もない噂ばかり流され、とうとう紳士フォンセカもメディアを糾弾していました。
その際も自分を主語にせず、チームを主語にする姿勢は崩れませんでした。

このジェコ騒動の頃、某氏の発言が大きなきっかけとなりフォンセカを解任すべきか否かという議論が日本人ロマニスタの間で行われました。
そこから派生して「ローマに何を求めるか」の議論も起こりました。

それぞれのロマニスタが「ローマに何を求めるか」なんて、政治思想や信教、仕事に求めることのように十人十色ですし、傍観してTwitterで色々な意見を覗いていました。
チームの全体最適を優先する人、特定の選手を起点に考える人、さまざまでした。ローマのことで日本でここまで議論が白熱するなんて、と興奮したものです。

論点の異なる2つの議論が並行して行われた結果、いつのまにか「フォンセカ擁護派」というグルーピングがされ、安直な二項対立になっていたのは残念でした。ローマを愛する気持ちはみんな同じなのに複雑ですね。

まぁTwitterは口喧嘩のためのプラットフォームみたいなとこありますから仕方がないのかもしれません。

国内ボロボロのまま閉幕へ

チームの不調・危機を独創的なアイデアで乗り切ってきたフォンセカ。
しかし、クリスタンテのCB起用以降は、結果が出ない時期も大胆な起用・システム変更をしなくなります。
その結果、国内では3−4−2−1への対策が確立され、格下相手にも勝ち点を落とすことが増えました。

個人的にはマンチーニをアンカーに置いた4バックをフォンセカにはもう一度試してほしかったです。
コロナ明けからシーズン前半までの成功体験と、変にイジって大敗すれば解任されてもおかしくない状況がブレーキをかけたのかもしれません。

また、イタリアで唯一ヨーロッパの舞台で生き残り過密日程をこなすローマ。
選手の疲労・負傷離脱も重なり、ますます勝てなくなります。
勝ってもギリギリ。同格以上の相手には勝てる未来が見えません。

3月から5月にかけて4位→7位へと順位を落としました。
残念ながら「フォンセカ、セリエA限界説」に反論の余地はありませんでした。
シーズン限りでの退任も発表されます。

一方、ELでは見事でした。
ターンオーバーを駆使してのベスト4。ワンチャン優勝?と本気で思いました。
準決勝のユナイテッド戦でも、1stレグ前半でのヴェレトゥ、パウ、スピナ負傷交代による後半の壊滅さえなければ、2ndレグとの合計で勝ち上がっていたかもしれない・・・という期待のもてる内容でした。
ヨーロッパの舞台でのローマは立派で誇らしかったです。

そして、退任が決まっていたなかでのデルビー完勝。
「終わりよければすべてよし」と言わんばかりに彼のローマでの旅は終わりました。

おわりに

ライバルチームの戦力と完成度を客観的に見ると、19/20シーズンの5位、20/21シーズンの7位という結果は妥当かと。
もちろんファンはそんな理屈では納得しないし、それを頭使って覆すのが監督の役目ですが。

① 昨夏における本職SDの存在
② ベストメンバーの継続的な出場
③ ザニオーロの存在 or 早期復帰
④ シーズン後半の大胆な采配


のどれか1つさえあれば、UCL出場権獲得圏内、続投もあったと思います。
④以外は不運としか言えないです。

2年間色々ありましたが、波乱の時期にローマに来て最後まで投げ出さず指揮してくれたこと、何度かタイトル獲得の夢を見せてくれたことに感謝したいです。

ありがとう、フォンセカ。


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最後までお読みいただきありがとうございました。

次回は「選手の市場価値」をテーマに、最近興味のある行動経済学と少し絡めて書きたいと思います。ちょうど移籍期間ですし。

大体ネタは固まっているので投稿は1年後、とかにはならない予定です。

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