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リアルZEHを目指そう!

こんにちは。
一般生活者普及啓発委員会の川端だったはずが、
現在は基盤情報作成委員会にも少し関わっております。

前回まで、辻さん、中野さんが、
2050年までのシナリオを分析してくれたわけですが、
実際に私達がどのような家づくりを目指さないといけないのかを、
私から解説をさせていただきます。


カーボンニュートラルは未来の話、光熱費上昇は今の話

今年も暑い日がつづいていますが、
全国的に見れば、北海道より、沖縄が涼しいというような
着実に温暖化が進んでいることを感じます。
二酸化炭素削減は未来の話で、なかなか自分ごとにならなかったですが、
現在の光熱費上昇は、住まい手にとっても、
現実的に直面している大きな問題です。

これから、私達実務者は、
住まい手には光熱費上昇リスク削減のための提案をしながら、
その先にある2050年のカーボンニュートラルの社会を
しっかりと目指さないといけません。

これから、私達が目指さないといけない家づくりを見ていきましょう。

その他エネルギーも含めたリアルZEHを目指す。

上記はホームズ君のZEH判定の画面ですが、
ご存知の通り、算定プログラムで消費エネルギーを太陽光発電で相殺することで、
認められるZEHは、暖房、冷房、換気、給湯、照明を対象にしており、
家電などの「その他エネルギー」は計算上、除外されています。

これはその他エネルギーが住む人によって、
大きく変化することが原因となっていると推測しますが、
1985は家庭のエネルギーを半分にすることを目指しています。

ということで、その他エネルギーを無視したZEHではなく、
その他エネルギーを含めたリアルZEHを目指すべきと考えます。

ただし、その他エネルギーをそのまま計算に入れるのも
1985の団体としてふさわしくないと考えました。

実はその他エネルギーを個別に計算できるプログラムがあります。

その他エネルギーの省エネを個別に評価する

上記は自立循環型住宅のサイト内にある、
省エネルギー効果の推計プログラムです。
この中に冷蔵庫、テレビ、便座、洗濯機、電気ケトルを
詳細入力することにより、
その他エネルギーの削減量を推計できます。

興味のある方は、無料ですので触ってみてください。
推計プログラム

基盤情報作成委員会では
冷蔵庫の年間消費電力を330kWh
テレビの定格消費電力電力を125W
暖房便座、電気ケトルなしで試算しています。

その他エネルギーを圧縮した上で、
それぞれの地域で、どれくらいの太陽光発電を搭載すれば、
1985が提言する「リアルZEH」になるか見ていきましょう。

年間日射区分により必要な太陽光発電容量は変わる

ご存知の通り、日本では北海道から沖縄を8つの地域区分にわけて、
断熱やエネルギーの基準をつくっています。
しかし、ZEH計算では、断熱性能や、
住宅設備のみではなく、
年間日射区分によって、計算結果が変わっていきます。

上記は、今回リアルZEHを計算する上で作成したエクセルシートです。
暖房冷房はホームズ君にて、シミュレーション
その他エネルギーは前段の自立循環型住宅のプログラムより試算。
それ以外の換気、照明、給湯は建築研究所のプログラム結果です。
※冷暖房運転計画はパッシブデザイン プランニングガイドブックの条件にあわせています。

6地域の代表地点の一つである年間日射区分がA4の名古屋において
Ua値 0.41、ηAC 2.4、ηAH 2.4で、
エコキュート JIS効率3.9、各節湯機器採用
照明はLED、調光・センサー採用した場合、

太陽光発電システムは5.0kWを搭載すれば、
その他エネルギーを含めて、
年間のエネルギー収支がゼロとなり、
リアルZEHが達成となります。

しかし、同じ条件で、

年間日射区分 A3の石川県小松市で同様にシミュレーションすると、
太陽光発電は6.1kWを搭載しないと、リアルZEHになりません。

もちろん、上記のように省エネ地域区分が6から4に変われば、
断熱基準もかわります。
6地域ではUa値が0.46以下であれば、G2性能(断熱等級6)となりますが、
4地域で、G2性能を満たすためには、Uaが0.34以下必要となります。

断熱性能が6地域より、上がっているにも関わらず、
リアルZEHを満たすには、
太陽光発電は7.6kWと大きな設備が必要となります。

もちろん、これは寒冷地になることにより、
必要暖房エネルギーが増大し、
それに応じて、創エネも多く必要になります。

逆から見れば、6地域などの温暖地は、
少ない太陽光発電で、リアルZEHを目指せる。
つまり、北海道などの厳しい気候の場所で、
リアルZEHが目指せない代わりに、
温暖地は、リアルZEHを超えた太陽光発電を搭載することにより、
2050年カーボンニュートラルに貢献できるということになります。

もちろん、脱炭素社会への貢献だけではなく、
電気自動車や蓄電池を使うことで、
住まい手が経済的メリットを享受できることも忘れてはいけません。

4から7地域のリアルZEHシミュレーションのまとめ

今回はリアルZEHが比較的容易で、1985地域アドバイザー拠点の多い
4から7地域において、それぞれの地域での断熱基準G2、G3でシミュレーションをしました。

ここで、1985基盤情報作成委員会のこだわりで、
できるだけ南面の日射取得を行い、冬の暖房に貢献するという
考えが入っています。
個人的には日射取得についてはさまざまな考えがありますが、
それはまた、別の機会にご紹介します。

詳細を書き出しますと、
6〜7地域 
G2
天井 高性能GW 310mm
外壁 高性能GW 105mm
窓  全方位 樹脂LOWEペア
基礎 ミラフォームラムダ 75mm

G3
天井 高性能GW 360mm
外壁 高性能GW 105mm+付加断熱 ネオマ 80mm
窓  南面 樹脂LOWEペア その他 樹脂LOWEトリプルガラス
基礎 ミラフォームラムダ 75mm

4〜5地域
G2
天井 高性能GW 310mm
外壁 高性能GW 105mm+付加断熱 ネオマ 40mm
窓  全方位 樹脂LOWEペア 
基礎 ミラフォームラムダ 75mm

G3
天井 高性能GW 360mm
外壁 高性能GW 105mm+付加断熱 ネオマ 80mm
窓  全方位 樹脂LOWEトリプルガラス
基礎 ミラフォームラムダ 75mm

上記の表にもどると、
6地域、G2で、5.0kWの太陽光発電で、
リアルZEHになるのに対し、

4地域では、G3であっても
7.0kWの太陽光発電が必要となり、
断熱性能もかなりしっかりと行わないといけないのに加え、
屋根の形状も考えて、設計を行わないと、
7.0kWの太陽光発電が搭載できず、
リアルZEHになりません。

繰り返しになりますが、
温暖地こそ、住まい手にメリットを大きく享受できるZEHが向いています。
お客様のためにも迷わず、ZEHを提案していく必要があります。

リアルZEHは街、国全体で広げていく必要がある

2050年のカーボンニュートラルに向けて、
社会は動いています。

しかし、神社仏閣や、床面積に対し屋根面積が小さい集合住宅は、
ZEHにはそぐわない、もしくは物理的に難しいところです。

これは豪雪地帯や、隣家がひしめき合う都市部も同じことです。

現在のような光熱費が上昇し、家計を圧迫する時代には、
二酸化炭素削減と同じくらい、
ZEHによる光熱費削減は重要になります。

地球を守るためにも、
お客様の資産を守るためにも、
私達、実務者の役割は重要です。

新築住宅はもちろんのこと、
大規模リノベーション、中規模リフォームも含めて、
リアルZEHを意識しながら、
財布にも地球環境にもよい、家づくりをしましょう。

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