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【MICIN 酒井氏】プロダクトを9ヶ月でリリース。医療を起点に新たなライフスタイルを創り出すPdMが「納得感」を大切にする理由とは

フォースタートアップス株式会社(以下、フォースタ)では、エンジニアに特化した専門チーム「エンジニアプロデュースチーム」を開設。スタートアップに対してキーマンとなりうるCTO・VPoE・エンジニアの採用支援をしております。

株式会社MICIN(以下、MICIN)は「すべての人が、納得して生きて、最期を迎えられる世界を。」をビジョンに掲げ、医療にまつわる社会課題にアプローチするスタートアップです。オンライン診療サービス「curon(クロン)」をはじめ、薬の受け取りまで在宅で完結できる「curonお薬サポート」などを展開しています。

今回は同社のプロダクトマネージャー(以下、PdM)として活躍する酒井 公希氏に、これまでのキャリアやMICINでの印象的な業務、PdMとしての仕事の向き合い方などについて幅広くお話を伺いました。


酒井 公希 氏
2008年、富士ゼロックス株式会社(現・富士フイルムビジネスイノベーション株式会社、以下、富士ゼロックス)に新卒入社。SEとしてドキュメントソリューションを担当した後、ソリューション事業企画や国内営業戦略に従事。
2016年にヤフー株式会社(以下、ヤフー)に転職し、ID、認証領域のプロダクトマネジメントを経験。2019年に株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)に入社後は、オートモーティブ事業部(現・株式会社Mobility Technologies、以下、MoT)にてタクシー配車アプリのサービスグロースに貢献する。
2021年6月にMICINに入社し、現職。


医療で新しいライフスタイルを創造したい。深い対話ができ、ビジョンに共感したMICINに入社。

──まず、これまでのキャリアについてお聞かせください。

酒井:新卒で富士ゼロックスにSEとして入社し、官公庁や中小企業などにドキュメントソリューション案件を担当し、6年ほどプロジェクトマネジメントの経験を積みました。その後、会社の選抜メンバーと共に新規事業の検討を行ったり、戦略部門に異動し、ソリューション事業や国内営業の戦略検討にも携わりました。

2016年にヤフーへ転職し、ID・認証領域のサービス企画やPoCなどを担当。当時から約4,500万ユーザーもいるYahoo! JAPAN IDの大規模なプロダクトマネジメントやパスワードレス化の急速な立ち上げや推進といったKPIグロースの経験を積みました。

これまでの経験を活かしながら、ユーザーのオフラインの生活に近い社会課題を解決できるプロダクトに携わりたく、2019年にDeNAに入社しました。オートモーティブ事業にてタクシー配車アプリのプロジェクトマネージャーとして、複数のプロダクトマネージャー達と一緒に施策をまわしながら、全体的なプログラムマネジメントに携わっていました。

──どういった軸でこれまでご転職を決められてきたのですか。

酒井:富士ゼロックスは自ら世の中の変化を創っている会社でしたし、社会への価値を問う会社でした。私自身も新規事業の検討をしている際に、社内外の様々な方々からインプットを頂く機会があり、新しいライフスタイルを創造するサービスを手がけたいと思うようになりました。人に新しい価値をもたらせるサービスは、企画や設計に携わる過程でワクワクする感覚を持てますし、何かしらの社会課題にアプローチできるような分野を中心に企業選びをしていました。

──数々の経験を積んできた中で、今回医療業界への転職を考えたきっかけを教えてください。

酒井:ヤフーのように生活の身近なところで使われるサービスやタクシー配車のように生活をより便利にしていくサービスを経験させていただいて、改めて自身の日常を振り返ったときに、「医療」という領域に目が向くようになりました。

私の周囲の人達が、病院に通い詰めている現状や、自身の通院体験を見つめ直して思ったのが、「継続的な通院治療は、時間も取られ日々の生活に負担がかかる」ということです。患者さんの負担を軽減し、通院体験をより快適なものにしていきたいと、医療業界を視野に入れ始めました。

──そこで、弊社のシニアヒューマンキャピタリスト、村上修一がMICINをご紹介させていただきました。最終的にMICINに入社した決め手はなんですか?

酒井:選考の場で会った全員が、医療にまつわる社会課題を解決するためのビジョンを明確に持っていたことです。絵空事ではなく、各々が患者さんや医療機関の実情を交えながら話す言葉に力強さを感じ、自分もMICINで働きたいと自然に思うようになりました。

また、面接で一番頭に汗をかいたのがMICINでした。対話とロジカルが入り混じっているような時間で、頭をフル回転させた記憶があります。自分のキャリアや経験を深く聞いてくれたのも印象的でしたし、逆にこちらが何を聞いてもロジカルに答えてくれる様子に圧倒されましたね。

ひとつのプロダクトを世に送り出し、磨き込みつづけるには、ディスカッションと検証を繰り返さなければなりません。MICINであれば、様々なメンバーと有意義なディスカッションをしながら良いプロダクトが創れると信じて、入社を決めました。


9ヶ月でリリースしたプロダクトの裏側。背中を預けられる仲間と重ねた対話

──改めてMICINでの業務内容を教えてください。

酒井:オンライン医療事業部のPdMとして、オンライン診療サービス「curon(クロン)」を軸に、患者さんの通院体験を向上するためのプロダクトの企画や、機能の仮説検証を実施しています。付随して、オンライン医療事業部の規模が拡大してきていますので、プロダクト開発のメンバーアサイン調整やナレッジシェア、プロセスの整備にも携わっています。
また、全社という視点でMICINのプロダクト群をプラットフォーム化していく取り組みも進めはじめています。

──入社して感じるMICINの雰囲気について教えてください。

酒井:主に2つあります。1つ目は、上下関係をさほど感じず、フラットに対話ができることです。

代表の原や取締役の徐とディスカッションをしたり、メンバー同士で1on1をするなど、気軽に対話ができる場面が多いと感じます。医療における課題を真剣に考えているメンバーばかりなので、誰かがポロッと話したことに対して、活発なディスカッションが行われる雰囲気です。

2つ目は、お互い背中を預けあい、得意不得意を尊重しながら働いていることです。

MICINには、医療分野に精通しているメンバーはもちろん、ビジネス視点、プロダクト思考など、得意領域やバックグラウンドの異なる人が集まっています。そこでバラバラになるのではなく相互を理解しながら、ひとつの課題に向かって進んでいける感覚がありますね。

──これまで取り組まれてきたプロジェクトと、その上で大変だったことはありますか。

酒井:印象的なのは、今年9月にリリースしたばかりの「クロンスマートパス」の仮説検証とプロダクト開発ですかね。クロンスマートパスは、患者さんの通院を今よりもっと快適にするサービスです。医療機関の会計をネット決済で行うことができ、患者さんは現金の準備や会計を待つ必要がなくなります。医療機関にとってもメリットがあり、接触時間の短縮による感染症リスクの低減だけでなく、会計を後回しにできたりとキャッシュレスによる業務効率化が実現できます。

医療機関への初期検証のスタートが今年1月からでしたので、正直、リリース予定日まで非常にタイトで、当初の事業計画から遅れてしまうのではないかと危機を感じる部分もありました。しかしその都度、エンジニアやデザイナーに「絶対間に合わせたい」と協力をあおぎながら進め、無事にリリースできました。

──紆余曲折ありながら、計画通りリリースまで走り抜いたモチベーションはどこにあったのでしょうか。

酒井:初期検証での医療機関や患者さんの声や試験導入をした医師や医療機関スタッフの話を聞き、クロンスマートパスが求められていることを肌で感じたからです。

新たなツールの導入は、医療機関側の業務負担が一時的に増えることにもなるため、ネガティブな反応を示される場合が多いです。それでも、クロンスマートパスは前向きな反応をいただいたので、リリースまで全力で走り抜こうと思えました。同時に、試験導入した医療機関に通う患者さんに「自分のライフスタイルに合った通院が叶いそう」とポジティブな声を聞けたことが、モチベーションを後押ししましたね。

実は、クロンスマートパスの前に担っていたプロダクトの検証が頓挫したこともあり、当時感じた苦い思いが「今度こそ成功させる」といったエネルギーを高める原動力にもなったと思っています。

──今後、酒井さんがMICINで実現したいことを教えてください。

酒井:自分が大切にしている「新しいライフスタイルの創造」を引き続き医療というカテゴリで実現できればと思っています。具体的には、クロンスマートパスのような患者さんの通院体験を快適にするサービスをどんどん拡張させていったり、そこから派生する新規プロダクトも創出しながら、患者さんの医療を支えるプラットフォームにしていきたいですね。


意思決定の軸は「納得感」。自分とチーム全員が納得できるからこそ刺さるプロダクトにできる

──ここからはPdMという職種について詳しくお聞きします。酒井さんがPdMとして大切にしていることは何ですか。

酒井:メンバーとディスカッションを重ねて、チームの合意形成をすることです。

ひとつのプロダクトを開発するにあたって、事業側とプロダクト側が分かれていることは多いですが、PdMはその間を取り持ち、コミュニケーションのハブとなるべきだと考えます。

実際、事業側と議論したことはもれなくプロダクトメンバーに伝達していますし、メンバー側の意見もきちんとビズに伝えています。それぞれの合意形成をはかったうえで開発を進める姿勢が大切だと思います。

──どういったお考えからその考えに至っているのですか。

酒井:ヤフーでパスワードレス化の取り組みを進めているときに、ユーザーへの提供価値をうまく言語化できないことがありました。具体的にはパスワードレス化の取り組みなんですけど、パスワードをなくすってHOWなんですよね。ID領域にいるとパスワードをなくすこと自体が良いことだと、みんな暗黙的にわかっているんですけど、認証を組み込むサービス側のメンバーやユーザーにとっては、その価値が何なのかが分かりづらいんです。実際には「パスワードを覚える煩わしさがなくなる」とか「いまよりもっと安心で安全になる」というのが価値なんですけど、サービス側の声やユーザーからの認知を読み解きながら、プロダクトをどう表現していくのかエンジニアやデザイナーと共に一緒に考える必要がありました。

また、富士ゼロックス時代、顧客の課題解決のために常に営業と議論していたのも合意形成を意識する素地につながっていると思います。これら過去の経験が、今の自分の思想や仕事の向き合い方のベースになっていると思います。

──チームの合議を募る立場でもありながら、時にはPdMは割れた意見も意思決定をする立場でもあります。酒井さんが意思決定をくだす基準はどこにありますか。

酒井:「まず自分で納得できるか、納得している理由をメンバーに論理的に説明できるか」を重視しています。

例えば、プロダクトを世に送り出すにあたり、デザイン思考とビジョン思考の二つの面を追求する必要があり、最終的にどういう形で世の中に出していくか判断するのが、PdMの役割だと考えています。デザイン思考で利用者の要求に合わせすぎてしまい、私たちが叶えたいビジョンがぼやけてしまっては意味がありません。

双方のバランスをとりながら、今のベストな形でプロダクトリリースに漕ぎつけるには、自分含めた全員の納得感を重視しています。
その課題に対する利用者のニーズを最も知り、考えていたチームメンバーが納得できていないプロダクトは、利用者にも受け入れられるはずがない。メンバーがGOサインを出して初めて、利用者に刺さるプロダクトになると私は考えています。

──様々な事象に対してバランスをどう取るか、判断が難しいと思うのですが、過去にどういった例がありましたか?

酒井:MoTでのタクシー配車アプリの開発では、乗客とタクシー乗務員の双方のメリットを模索したことがありました。

乗客からすると「今すぐできるだけ早くタクシーに来てほしい」と思っていたとしても、タクシー乗務員からすると「乗客の状況が事前に分かったほうが良い」といったニーズがあります。このあたりベストなバランスを当時のメンバーと一緒に検討した経験は、現在も役立っていますね。


目の前の物事に全力で取り組み、キャリアをつなげる。やりたいことに向き合いたいならスタートアップに飛び込んで

──最後にキャリアについてお伺いさせてください。今後、PdMを目指していきたい方々に対して、どんな目線や姿勢が必要だと思いますか?

酒井:2つあると考えます。1つ目は、エンジニア含めあらゆる職種の人の考えを理解することです。

先ほど話した通り、事業と開発のハブになる存在だからこそ、PdMは事業についてはもちろん、エンジニアやデザイナー、ビズ側が発する全ての会話を理解する必要があると思います。私も今まで色々な職種のメンバーと積極的に意見を交わすことを重視してきました。
2つ目は、プロダクトだけではなく組織やチームのマネジメントを重視する姿勢です。

プロダクトマネジメントは、PdMひとりでは何もできません。私にも、得意な分野と専門性が未熟な分野があります。だからこそ、それぞれの得意分野や専門領域を持ったメンバーと結束し、一人ひとりが最適なパフォーマンスを発揮できる環境を作ることが重要です。

プロダクトを創りつづけるという終わりのないゴールに全員で進むためには、結果的に組織のマネジメントにも踏み込む必要があると思っています。

──酒井さん自身が今までのキャリアを構築していくうえで、意識してきたことはありますか?

酒井:中途半端にせず、真剣に物事に向き合った積み重ねが、自身のキャリアにつながることは間違いありません。

キャリアは狙って積めるようなものではなく、日々の積み重ねだと思うんです。だからこそ、その時々で、自分が納得できるまで物事に向き合えたか、最後までやり遂げられたかが大事になってくると感じます。

私の場合は「新しいライフスタイルの創造」といった、やりたいことを軸に目の前のものに向き合ってきました。自ら率先して手を動かしながら、あらゆるマネジメントに取り組むことで、プロダクトやチームが大きくなり、私自身も成長をつづけられている実感があります。

特にマネジメントにおいては、正解が分からない中で決断せねばならないので、失敗することもあるはずです。ただ、全力で取り組めばその失敗経験が後から活きてくる場面が必ず来るので、結果はどうあれ全力で取り組むことが大切だと思います。

──最後に、スタートアップへの転職を考えている人に向けてアドバイスをお願いします。

酒井:やりたいことがある人、何かしらの社会課題を解決したいと思う人は、ぜひスタートアップに飛び込んでほしいです。スタートアップは、どの企業も自分のやりたいことをやらせてくれるはずです。

飛び込む怖さもあるかもしれませんが、大企業やメガベンチャーで重ねてきた経験は、スタートアップできっと役に立ちます。私もMICINで色々経験できていますが、これまでの積み重ねがまさに今活きていると実感しています。

実現したいことがあるのなら、ぜひ挑戦してみてはどうでしょうか。今まで得られなかった新たな成長を遂げられると思います。

──酒井さん、ありがとうございました!医療にまつわるテクノロジーの発展を、これからも楽しみにしております。


インタビューご協力:株式会社MICIN

執筆:近藤ゆうこ

取材・編集:for Startups エンジニアプロデュースチーム


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