【ツクルバ里山氏】「リアル×テクノロジー」の新たな挑戦。意思決定とともに積み重なるプロダクトへの愛とリスペクトとは
フォースタートアップス株式会社(以下、フォースタ)では、エンジニアに特化した専門チーム「エンジニアプロデュースチーム」を開設。スタートアップに対してキーマンとなりうるCTO・VPoE・エンジニアの採用支援をしております。
今回ご紹介する株式会社ツクルバは、「『場の発明』を通じて欲しい未来をつくる」というミッションの元、デザイン・ビジネス・テクノロジーをかけあわせた事業を行っています。2011年に創業したツクルバは、2019年7月に東京証券取引所マザーズ市場(現・グロース市場)へ上場し、年間利用者数が200万人を超える「カウカモ」を運営する、注目のスタートアップ企業です。
お話を伺うのは、ツクルバで技術統括本部 デジタル戦略推進室長としてプロダクトの中長期戦略を担う里山 南人氏。エンジニアとしてのキャリアをスタートしてから、エンジニアリング領域とプロダクトマネジメント領域の両輪を経験した知見をもとに、ツクルバを真の不動産テック企業へ導くべくデジタル利活用の中長期的な戦略設計を行っています。自身のキャリアを総動員させ、「リアル×テクノロジー」の業界に飛び込んだ里山氏が考える”影響力”やスタートアップに転職を決意した理由を伺いました。
地元・奄美大島まで届く影響力を。キャリア選択の根源にあるこだわり
ーー最初にツクルバへご入社されるまでの里山さんのご経歴を伺えますか。
里山:大学を卒業後、最初の10年間は、SIerやITコンサルタントを経験しました。その後インターネット企業にてAndroidエンジニアとして技術力を身に着けたあと、ヤフーでプロダクトマネージャに転身、大規模な利用者数を抱えるアプリのマネジメントを行ってきました。並行してヤフーでは第6代Androidアプリ黒帯、エバンジェリストとして活動し、社外のエンジニアコミュニティの運営や本の執筆、外部講師などエンジニア業界に貢献するための活動を並行して行ってきましたね。
その後、ビデオマーケットという会社で執行役員VPoE兼プロダクトマネージャという形で、サービスのリニューアルや60名規模のエンジニアリング組織を率いてきました。
ーー名だたる企業を経験されていますね。どのような想いでこれまでキャリアを選択されてきたのでしょうか。
里山:「世の中に影響力のあるものを生み出していきたい」と常に考えています。根底には、私の出身地に対する想いがあります。出身の奄美大島では、働き口は自営業や公務員がほとんどです。加えて、島を出て働いたとしても、コミュニケーションスタイルの違いを感じて地元に戻る人たちも多く見てきました。
子どもたちは、親や身近にいる大人の姿を見て育ちますよね。未来の選択肢を幅広く抱いてほしいからこそ、奄美大島に住む子どもたちにリーチできるようなサービスを提供する大手企業で、成果を出し続け社会貢献している、奄美大島出身の大人がいることを知ってほしい。そのためにも、自分にできることで「世の中に影響力のあるものを生み出し続けたい」と考えています。
ーー地元への深い愛情を感じます。その想いを叶えるため、選択されたのはサイバーエージェント・GMO・DeNAというメガベンチャー企業ですが、なぜそれらの企業を選ばれたのでしょうか。
里山:先程の「影響力のあるものを生み出したい」という話に繋がります。私が転職した時期は、特にスマートフォン黎明期だったこともあり、新たにアプリを出すだけでもテレビやメディアに取りあげられる機会が多くありました。
取り組んでいるプロダクトが、広い範囲で認知されることに喜びを感じていたので、30代はメガベンチャー企業を積極的に選んでいましたね。
また、「自分でプロダクトを作った」と胸を張って言える仕事をしたいというのも理由の1つです。これまでの経験の中では、Androidアプリの開発においてリリースまで一人で実装していたこともありますし、ひとつのサービスが出来上がるまでの意思決定に積極的に関われる点が魅力的でした。
「リアル×テクノロジー」への挑戦。自分のスキルの集大成をツクルバで形作る
ーーその後、ツクルバに入社されたのはどういった理由だったのでしょうか。
里山:これまでのキャリアを活かせる職場だと感じたからです。前職では執行役員として、メインサービスのリニューアルや、外部企業とのアライアンス基盤開発の指揮をとり、いずれも一定の形になったときに、会社の経営体制の刷新がきっかけで転職を考え始めました。
その当時、あらためて業界を見渡してみると、インターネット完結のメディア事業はテクノロジーの使い所として退屈に感じてしまったのがあります。
テクノロジーを介して、リアルの世界の負を解消すると考えたとき、既存業界にテクノロジーを持ち込む「リアル × テクノロジー」の部分に興味が湧き、そこで出会ったのがツクルバでした。
ーーご支援を担当した宮本健太はどのような印象でしたか。
里山:すごく丁寧な方だなと感じました。フォースタさんが経営層と直接経営課題を話し合い、各社の採用背景から事細かに理解して、説明をしてくださるという印象を持っております。
次のステップはより経営に近いところで挑戦したいと考えていた私にとってはとても有り難かったです。
ーーご入社時と現在で担われている役割が変わられたそうですね。
里山:入社当初は、前職までの知見を活かしエンジニアリングとプロダクトマネジメントの両方を統括する開発責任者としてマネジメントしていました。現在は、デジタル戦略推進室の室長として、プロダクト開発に関わらずデータやSaaSの利用まで含めたデジタル利活用における戦略立案とリードを行っています。特に直近は個別最適化された業務プロセス、それに紐づくSaaSなどを全体的に見直し、全体横断での目的整合性やコスト整合性の最適化実行や方針策定を行っています。
ーー実際に入社してみて見えた発見や気付きはありますか?
里山:入社した最初の印象は、顧客に提供する価値に徹底的に向き合っている会社だなと思いました。どの仕事もそうだと思うのですが、プロダクトやプロセスを改善していく最終的な目的は「お客様に価値を提供するため」ですよね。不動産においての顧客価値って、物件を買ったその先にある生活や未来そのものだと考えると、物件そのもの以上の価値がそこにあります。
その価値をわかっているからこそ、様々な職種で構成される社内のメンバーもお客様視点に強い意識を持ってそれぞれが強い主張を持ってちゃんとぶつかってきますし、私自身もぶれずに、顧客志向の目線を大切にしていきたいと思えます。
大変なところとしては、「リアル × テクノロジー」の会社であるがゆえに、サービス内でリアルとテクノロジーが複雑に交差するところです。
カウカモやウルカモといった不動産仲介サービスでは、プロダクトで接点を持つものの、実際に内見から成約に至るまではリアルな場でエージェントが接客します。プロダクトの一部を変えるとそこに紐付いて接客プロセスに影響したり、逆に接客プロセスを変えるとプロダクトにまで影響したりします。そういったひとつひとつの取り組みの中でいろいろな職種のメンバーと意思疎通を図りながら形にしていくのはやりがいを感じるのと同時に、難しさも感じることは多いです。
リスクをとってでも絶対にブラさない。真剣に向き合って積み上げるプロダクトの価値
ーー「自分がプロダクトを作っている」という手触り感は、どのようなシーンで体感してこられたのでしょうか。
里山:以前にいた会社で、開発チームの評価のためにリスクを避けるのか、顧客に価値を提供するためにリスクを取ってチャレンジするのかを決めなければならない場面がありました。
その際プロダクトがより顧客にとって使われるものになるために、大きくリスクを取ってチャレンジする意思決定をしました。時間はかかるので他の施策はできないかもしれないですが、顧客価値を見据えたときに、現状のプロダクトで出てきた課題にまっすぐ向き合う判断をしたんです。
その結果、プロダクトのレビュー評価が跳ね上がりました。世の中の人に刺さったという手応えも感じましたし、強い達成感を感じたことを覚えています。
ーーエピソードの節々にプロダクトへの愛やリスペクトを感じます。
里山:事業会社としての立場だからこそですね。
所属する会社の事業内容にもよりますが、SIerに所属していたときは、お客様からきた「このプロダクトを作ってほしい」といった要求に対して、QCD(Quality、Cost、Delivery)を意識して開発を進めていました。その後の利用者の反応や作ったものが目的を達成したかどうかなどは見えづらいですよね。また、有期の「プロジェクト」という形で開発が動いていくので、プロダクトが完成した段階で受注者としての契約は終わります。あとから「この部分を修正したい」と伝えても、受注企業のいちエンジニアの要望は通りにくいですよね。
一方、事業会社では、自分たちの事業のためにプロダクトを作るので、プロダクト自体が会社の資産になるんです。だからこそ、プロダクト資産のROIが高くなるためにはどうするのかを徹底的に考える。ROIを向上させるために内発的な開発を行うと、自然と開発者自身の技術力や質を高めるきっかけにもなるんですよね。真剣に向き合った結果、愛が育まれていきますし、その意思決定に関わることでより愛着が湧いてきます。
ーー愛やリスペクトのほかに、里山さんが考える優秀なプロダクトマネージャーの素養は何ですか。
里山:中長期のビジョンを持てるかが大切だと思います。日々の業務では短期での成果が求められることもありますが、時間軸で右往左往せず、絶対にブラさない価値やビジョンを持てるか、そしてそれを行動に落とし込めるかが肝です。
繰り返しになりますが、この姿勢がプロダクトへの愛を育てます。自身と利用者の間に分断が生まれてないかという点も重要な要素ですね。
スキルの掛け合わせで個を活かせる場所へ羽ばたいて
ーースタートアップだからこそ面白いと思えるポイントを教えてください。
里山:既に大きくなった会社は、大きな冒険がしづらいですよね。一方、自分の動き方次第で新しい未来を形作れる可能性を秘めたスタートアップは、冒険できます。
私自身、ツクルバに入社した当初はEM領域とプロダクトマネジメント領域から入りました。ですが、今取り組んでいる仕事は、どちらかというとCIO領域やDX領域に近いです。この働き方ができるのも、これまでの経験を掛け合わせることができるからこそだと感じています。
つまりは、自分のいままで築いてきたキャリアを総動員することで動ける幅を広げて、新たな未来に積極的に関わっていけることが魅力ですし、面白いと感じるポイントです。
ーー複数のスキルを手に入れるためのリスキリングが最近トレンドとなっています。里山さんは多くのリスキリングをされているかと思いますが、なぜそれができたのでしょうか。
里山:ゴールやビジョンが定まっており、なおかつ、自身の専門性を把握しているからこそ、 ロールや山の登り方は問わないと考えています。だからこそアンラーンできます。手段を目的化しないことが大切ですね。
ーースタートアップに飛び込みたいと考えているエンジニアに向けて、メッセージをください。
里山:「個性を活かしきれていない」と現状に悶々とするくらいならば、自分が大きく飛躍できる場所を探し求めてほしいと思います。私がSIerを離れようと決めた理由は、自分の個性を活かせないと感じたからです。決められた枠組みで進めなければならない仕事に、もどかしさがありました。だからこそ、個性を活かせる場所を探し求めて、転職をしてきたのです。
また、個人的には、若いうちはプロジェクトを変えるように転職しても良いのではと考えています。キャリアには、スキルを得る時期とスキルを成就させる時期があると思っており、私自身も振り返ると35歳まではスキルを集めていました。それ以降は、スキルを成就させる時期と捉えていたので、特定の領域を深掘り、スキルを掛け合わせていきました。自分はいまどの時期にいるのかを考慮したうえで、挑戦したいと思える環境に飛び込んでみてほしいですね。
ーー最後に、今後里山さん自身がどういったキャリアの広げ方をしていきたいかを教えてください。
里山:今所属しているツクルバが大きな会社になるために全力を尽くすのは大前提として、副業などもうまく使いながら自分が関われる領域を広げて「世の中に影響力のあるものを生み出し続けたい」と考えています。
過去から積み上げてきたエンジニアリングマネジメント、プロダクトマネジメントなどの他にもDX/CIO領域のノウハウも溜まりつつあるので、より幅を広げながらユニーク性の高いパフォーマンスを出していければと思います。
ーー今後の里山さんの活躍とツクルバさんのさらなる発展を楽しみにしております。本日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
インタビューご協力:株式会社ツクルバ
執筆:矢野 桃
取材・編集:フォースタートアップス エンジニアプロデュースチーム