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【アンドパッド 土居氏】データ利活用推進で建築・建設業界の未来をよりよいものに

フォースタートアップス株式会社(以下、フォースタ)では、エンジニアに特化した専門チーム「エンジニアプロデュースチーム」を開設。スタートアップに対してキーマンとなりうるCTO・VPoE・エンジニアの採用支援をしております。

今回ご紹介する株式会社アンドパッドは、「幸せを築く人を、幸せに。」という社会的なミッションを掲げ、日本の建築・建設業界をITで変革するクラウド型建設プロジェクト管理サービスを自社開発。現場の効率化から経営改善まで一元管理できる『ANDPAD』は、2016年にサービスを開始してから、利用社数15.6万社、41.3万人以上のユーザーに利用されています。

今回は同社のデータスチュワードの土居啓司氏に、これまでのキャリアやデータ利活用推進において意識していること、データスチュワードとしてのキャリアを掴むまでについてなどお話を伺いました。


土居 啓司氏
新卒でソフトバンク株式会社に入社後、コンシューマ向けのWi-Fiルーター、訪日外国人向けのフリーWi-Fiサービスの企画、推進を経験。通信キャリアデータを用いた新規広告ビジネスの立ち上げに関わった後、機械学習のプロジェクトの企画、開発を自ら提案する。Wi-Fi位置情報を用いてソフトバンクショップへの来店検知を高精度に実現し、特許も取得。2
019年には、LINEモバイルにデータサイエンティストとして参画。サイロ化されたデータの集約化を行うため、DMP(Data Management Platform)の企画立案、導入の他、DMPと連携する形でMA(Marketing Automation)ツールの企画立案、導入も実施。
2022年4月より、データスチュワードとして株式会社アンドパッドへ入社する。


裁量とは「ミッションを理解し、自律的な思考と行動をすること」。より幅広い活躍環境を求めスタートアップへ

ーーこれまでのキャリアをお聞かせください。

土居:新卒で株式会社ソフトバンクに入社後、ビジネス企画の立案・推進の他ビックデータを用いた新規広告ビジネスの立ち上げプロジェクトを経験しました。その後、LINEモバイルへデータサイエンティストとして出向することになり、サイロ化されたデータを集約するため、DMPの企画立案や導入を担当。データを元にした社内での統一した意思決定を図るための基盤づくりを行っていました。

ちょうど2年半経過したタイミングで、LINEモバイルがソフトバンクと吸収合併する話がでたため転職を決意し、アンドパッドに入社を決めました。


ーー土居さんがデータサイエンティストとしてのキャリアを志向されたのは、どういったきっかけだったのですか。

土居:ソフトバンクでの経験がきっかけになっています。当時、Wi-Fi位置情報を用いたソフトバンクユーザーの行動を元に広告を打つプロジェクトを担当していました。あるクライアント様において、当初、お客様は購買する際、事前にWebページを見てから該当商品を購入するために店舗へ足を運ぶと仮説を立てていたのですが、実際は先に店舗に足を運んでから気に入った商品をWebページで調べていました。

データからひとつの新たな情報が見えた経験から、データに面白さを感じ、まずはデータサイエンティストとしてのキャリア選択を決めました。

ーーどういった経緯からご転職を検討されたのでしょうか?

土居:LINEモバイルでは裁量権が大きく与えられており、自分の考えで行動しプロジェクトを進められていたことで、大きなやりがいを感じていました。

ソフトバンクに吸収合併され、会社規模が大きくなると、どうしても一人あたりの裁量が細分化されるため、より裁量を持って自分にとって成長できる環境を求めて、転職を決意しました。


ーー「裁量」に多くの解釈があるように思いますが、土居さんの考える裁量権の大きさとは、具体的にどういうことでしょうか?

土居:期待される役割やミッションを担った上で、経営課題を自分事化し、責任感を持ってあらゆることに能動的に行動できることですね。

事業に近い距離にいることが重要だと思っています。

過去にこういった経営課題に向き合うことで、大きく成長できたと感じる場面がありました。LINEモバイルにいた際、マーケティング領域における経営課題があり、本来はマーケ部門で解決すべき課題だったのですが、データの基盤から構築しなければ解決できないと私は考えました。そこで、解決策を経営層に提案し、自らマーケ部門ともコミュニケーションを取りながら基盤構築および課題解決に向けてリードした経験があります。能動的に動くことで、自分のキャパシティを大きく広げることができました。
大企業のように役割が細分化される場面では、なかなかこういった能動的な動きはできないように感じています。


意思決定に必要不可欠。構造化されていないデータの面白さ

ーーここからは現職のアンドパッドさんについて伺います。裁量権を持てるスタートアップを探され、最終的にアンドパッドを選ばれたのはどういった理由なのでしょうか。

土居:二つあります。一つ目は事業としての面白さに魅力を感じた点です。電子受発注サービスや工程管理の他、プロジェクト管理などをパソコンやスマートフォンなどのデバイス1つで、簡単に連携と一括管理を可能にしたサービスは、建築・建設業界に風穴をあけるような内容です。事業内容を確認した際に、直感的にとても面白そうだと感じました。

二つ目は、建築・建設業界特有のデータの面白さ。他のIT企業には無いようなデータが山ほどあることも魅力的に感じたので、アンドパッドへの入社を決めました。


ーーデータの面白さというのは具体的にどういったものなのでしょうか?

土居:構造化されていないデータを扱っているという難しさにあります。

Googleアナリティクスなどの構造化されたデータは、集計や比較などが行いやすく、使い方が既に周知されております。個人的にはそこの部分に対して新たな発見は、少ないかなと感じています。

一方、アンドパッドに蓄積されているデータは、図面、資料、写真など構造化されていない種類のもの。いわゆる非構造化データなので、他のデータよりも難しさのハードルがグッとあがります。データとして活用しきれていない難しい領域だからこそ、その点に面白さを感じました。


ーーユニークなデータ活用に向けて、アンドパッドではどのような役割を担っているのでしょうか?

土居:データスチュワードとして入社し、現在はデータグループのマネージャーをしています。業務内容としては、データの利活用推進です。

部署問わず社内に散らばっている課題を見つけて、そこからプロジェクトを立ち上げ実行推進までしていきます。データサイエンティストというよりも、データに関する企画 及び プロジェクトマネージャーを組み合わせた仕事がデータスチュワードだと考えています。


ーーどういったミッションを掲げてデータ利活用推進を行っているのでしょうか。

土居:「データ利活用文化の醸成」をミッションに掲げ、日々の業務に取り組んでいます。

データ利活用推進で一番難しいと感じるのは、データに基づく意思決定を文化として根付かせること。
お客様のプロダクト利用実態が分かるデータは、カスタマーサクセスやプロダクトの方向性を定める意思決定において必要不可欠です。しかし、アンドパッドには、現在600人以上の従業員がいるのですが、全員が全員データをみて意思決定できるようになるには時間がかかりますし、想像以上に大変です。

データをうまく活用するためにも、私たちが各部署に積極的に入り、課題を抽出して現場に落とし込む働きをしています。


物件・職人・エンドユーザーのデータを蓄積。建築・建設業界全体の課題解決に取り組む

ーー土居さんがデータ利活用推進において一番重要視されていることは何でしょうか。

土居:どのような課題を解決するべきか、能動的に確認することを重要視しています。
例えば、現在我々のグループは各部署からデータ集計依頼を受けているのですが、どのようなことがやりたくて集計依頼をだしているのか、何を課題に感じているのかを依頼者に確認し、場合によっては、より適切な解決策を提案するようにしています。

個人的に大切にしているのは、3ギブ1テイク。相手が抱えている課題に対して真摯に向き合い、課題解決に向けてギブを行うことを意識しています。


ーーデータ利活用というと、無機質なイメージもあったのですが、地道に泥臭く周囲と密にコミュニケーションをとりながら進めているのですね。今後のアンドパッドのデータ利活用の課題を教えてください。

土居:主に二つあります。一つ目はプロダクト開発・改善におけるデータ利活用です。

クライアントからあがった声に基づき機能追加することも重要ですが、そもそもの機能の利用状況を把握することも大切です。

クライアントが使いやすい仕様になっているかなどもデータに基づいて反映する必要があると感じるため、そのようなことができるプロダクト開発・改善プロセスの構築を1、2年かけて対応していく予定です。

二つ目は、AIの活用です。建築・建設業界で利用されている図面や写真のデータには、さまざまな情報が詰まっています。AIを活用してこれらのデータから必要な情報のみを取りだし、自動で転記する流れがAIを通して実現できると、クライアントの業務効率化が図れる。

さまざまなシーンで、AIを活用できるのですがその点がまだ十分に活用できていないため、今後の課題のひとつだと考えています。


ーーデータを利活用したプロダクトが良くなると、建築・建設業界にはどういった影響があるのでしょうか。

土居:業界で抱える課題を解決していけると考えています。
ANDPADに集まるデータはさまざまありますが、その中で職人さんのデータを例として挙げると、建設業界における就労人口が高年齢化しており、生産性が低く人口も減少しています。全体的に、建築・建設業界で働く若い人達が減っています。

給与の問題や職場環境などのさまざまな問題から、建築・建設業界に行きたがらない人が多いのですが、データ利活用を推進することで解決できることも多いのではと考えています。

職人さんの評価をデータに基づいて適切に行い、しかるべき待遇をすることで、建築・建設業界全体の環境がよくなる。データを活用したプロダクトは、長い目で見ると建築・建設業界で抱える課題を解決に向かわせると感じています。


プロジェクトの設計から携われるのがスタートアップ。課題解決に取り組みたいデータサイエンティストへ

ーーここからはスタートアップでのキャリア形成について伺います。スタートアップだからこそ積めるデータサイエンティストやデータエンジニアのキャリアはどういったものがあるのでしょうか。

土居:大企業とスタートアップでは、データサイエンティストに与えられるミッションが異なります。

大企業では豊富なデータを元に「この課題に向けて動いてください」といった明確な課題がある状態で依頼がかかる場合が多いです。

一方、スタートアップでは課題を見つけるためのデータも散らばっているため、課題設定が明確ではありません。まずはデータ基盤を整えることから始め、関係者と密に連携を行いながら課題を明確にし、解決に向けたプロジェクトを発足するといった企画・設計工程から考える必要があります。

そのため、課題が明確にあり、それに対して精度をあげた結果を出したいのであれば、大企業のデータサイエンティストを選択した方がよいと思いますし、課題からきちんと考えたいのであればスタートアップでのキャリアを選択した方がよいと感じます。

自分が何で結果を出したいのかを明確にし、キャリア選択ができればいいと思います。


ーー大きく役割が異なるのですね。企業のフェーズ感によってデータの性質に違いはあると感じますか

土居:アンドパッド特有かもしれませんが、データの種類には大きく違いがあると感じます。前職に比べるとデータ量としては少なく感じますが、種類は比べものにならないほど多い。プロダクトも数多くあり、各プロダクトに機能も付随しているため、それぞれのデータを見るとかなり複雑です。


ーー今後、データサイエンティストとしてスタートアップに挑戦しようと考えられている方にメッセージをお願いします。

土居:スタートアップでは会社の持つさまざまなデータを横断して見る面白さがあると感じています。それぞれの会社でデータに特徴を持っているため、幅広いデータに触れ合えると思います。
データ利活用は、汎用性が高く、業界問わずニーズの高いスキルになっていくと私は考えています。そのため、直感的にデータは面白いと感じるのであれば、躊躇せず挑戦して欲しいですね。


ーー今後の土居さんの活躍とアンドパッドさんのさらなる発展を楽しみにしております。本日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました。


インタビューご協力:株式会社アンドパッド

執筆:矢野 桃

取材・編集:フォースタートアップス エンジニアプロデュースチーム


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