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【estie 勝田氏】PdMとして、売上や利益を追求する。数々のプロダクトグロース経験から掴んだマネジメントの本質

フォースタートアップス株式会社(以下、フォースタ)では、エンジニアに特化した専門チーム「エンジニアプロデュースチーム」を開設。スタートアップに対してキーマンとなりうるCTO・VPoE・エンジニアの採用支援をしております。

株式会社estie(以下、estie)は「産業の真価を、さらに拓く。」をパーパスに掲げ、オフィスをはじめとする商業用不動産領域を担うSaaSプロダクトを展開しています。

今回は、同社のプロダクトマネージャー(以下、PdM)として活躍する勝田良介氏に、これまでのキャリアやestieへ転職を決めた経緯、PdMとしての仕事の向き合い方などについてお話を伺いました。


勝田 良介 氏
2011年に、株式会社リクルートへ新卒入社。住まい領域にてUI / UXデザインや商品企画、事業開発などに幅広く携わる。不動産総合サイトのグロースや、B2B SaaSプロダクトの新規立ち上げにも従事。2022年9月にestieへ入社し、現職。


成功と失敗を経験し、痛感したto Cとto Bプロダクトマネジメントの違い

──まず、これまでのキャリアについてお聞かせください。

勝田:大学卒業後、リクルートに入社して以来、一貫して不動産領域に関わっています。具体的には、賃貸に関わる分野を5年、新築マンション関連の事業を2年、他には住まい領域における事業開発に携わってました。職種はPdMを6年、事業開発を4年ほど経験しています。

実は、新卒で入社した当時は不動産に全く興味がなかったのですが、ひとつ物事を知ると周辺知識もどんどん増えていく面白さにのめりこみ、気づけば不動産一筋のキャリアを歩んでいました。

リクルートには11年間在籍しましたが、より深く不動産領域に携わりたいと思い、今回estieへ転職しました。

──リクルート時代にご経験されてきたことを、具体的にお伺いしたいです。

勝田:印象的なエピソードはたくさんありますが、主に経験したことを2点話します。

まず1つ目は、入社7年目にPdMとしてプロダクトの立て直しをはかったことです。当時、競合に比べてマーケットシェアが低い状況でした。そこで、ライバルプロダクトに勝つための戦略を立て、一つひとつ実行したところ、1年後にトップシェアを獲得できた経験は、やりがいが大きく楽しかったです。

──立て直しのためにどんな取り組みをされたか、教えてください。

勝田:メンバーが方向性を見失わないよう『やらないこと』をはっきり決めたのが良かったと思います。あれもこれもと手を広げすぎると、結局チームとしてのまとまりを欠き、本来の目的から遠ざかってしまう。やるべきことだけに集中するスタンスを崩さなかったからこそ、しっかりとプロダクトを立て直せました。

営業組織やステークホルダーとの連携も意識しましたね。立て直しが始まる前、プロダクトと営業組織の間には溝ができていて、事業が伸びない責任を互いに押し付け合う状態だったんです。その状況を変えるべく、まずは営業サイドに歩み寄って積極的に課題を議論していき、ステークホルダーの協力も仰ぎました。すると、徐々に組織が一体となり、連携が深まったおかげでプロダクトの売上がぐんと伸びる、といった好循環を生み出せました。

──素晴らしい成功をおさめたのですね!もう1つの印象的なエピソードとはどういった経験だったのですか?

勝田:流れに乗り、新たな事業の柱を作ろうということで、to B向けSaaSプロダクトの立ち上げに参画したことです。結論から言うと、満足のいくグロースはできず、to B向けプロダクトを作る難しさを痛感しました。

特に苦労したのは、新規プロダクトであったため、リリースに向けてのハードルが予想以上に高かったことです。会社として初めての取り組みであり、経営陣が意思決定するまでの合意形成を図るプロセスも、容易なものではありませんでした。

──突破口を見つけるために、どういった取り組みをされましたか?

勝田:ライバルプロダクトと少しでも差をつけられるよう、勝てるフィールドを絞ることに専念しました。ゼロから作るプロダクトが、いきなり全ての要素で勝つことは難しいので、ライバルの持っていない強みを見つけ、部分的にでも優位に立てるよう開発を進めました。具体的には、エンドユーザーを多く抱えている強みを、新規プロダクトにも活かす方向性で戦略を立てていきました。

この経験はestieでも役立っていますし、貴重なチャレンジだったと振り返ります。

──PdMを担うにあたって、to C向けとto B向けでプロダクトマネジメントに求められる性質は違いますか?

勝田:明確に違います。to Cのプロダクトに関わるうえで大事なのは、リリースや改善におけるスピード感です。いかに無駄のないフローを構築し、成功確率を上げていくかがマネジメントとして求められます。

対して、to Bプロダクト開発に関わるうえで重要なのは、ユーザーの業務理解です。プロダクトを使うユーザー目線に立った知識がベースにないと、良いものづくりはできません。

それぞれのマネジメントを経験することで、PdMとしてどうプロダクトに向き合うべきかを考える良い機会になりました。


CEOとの対話で気づいた不動産への愛。再び成長曲線を上げにいくためestieへ

──スタートアップへ転職を考えるようになったきっかけを教えてください。

勝田:11年間在籍したリクルートでは、本当に多くの経験を積めました。30代後半に差し掛かるタイミングでもう一度成長曲線を上げたくて、転職を決意しました。同じような規模の会社ではなく、挑戦の幅が広がりそうなスタートアップを視野に入れました。

──弊社のヒューマンキャピタリスト・六丸直樹が今回の転職を支援しました。フォースタを通して転職された際の印象を伺いたいです。

勝田:初めての転職だったので、ご相談して良かったです。自分で企業を選ぶとなると、どうしても視野が狭くなり、偏った見方になってしまいがちだと思います。フォースタさんのような第三者から、客観的な目線で色々な選択肢を提示してくれてありがたかったです。

その中でも六丸さんには、あらゆる場面で背中を押してくれたことに勇気づけられましたね。転職を考え始めた時に、明確な軸を決めるアシストや、話を進めるためのリードをしてもらえて助かりました。

──最終的にestieを選んだ決め手は何だったのでしょうか?

勝田:CEO平井との対話を通して、「やっぱり自分は不動産が好きだ」と実感できたからです。

正直なところ、カルチャーフィットへの不安がありましたが、面接が雑談のような雰囲気でスムーズに進んだことで、「ここなら大丈夫だ」と確信したのを覚えています。今まで経験してきた領域と、estieが担う商業用不動産領域の違いは、聞いていて興味深かったですし、estieで出せるバリューのイメージがはっきり浮かんだことも決め手になりました。

リクルート時代は、to B向けプロダクトグロースが思うようにいかなかったので、同じような領域を担うestieでリベンジを果たしたい気持ちもありましたね。

──転職の際に、業界や職種選びに悩む人も多いと思います。企業を選ぶにあたってアドバイスがあったら教えてください。

勝田:転職先は、業界か職種のどちらかはこれまで経験したことのあるものに絞ったほうが、バリューを発揮しやすいと思います。

転職は、組織のカルチャーだけでなくありとあらゆる環境が変わるため、予想以上に変化の大きさを実感するものです。過去に業界と職種を同時に変えた人が、急にバリューを発揮できなくなったケースも見てきました。

個人的には、前職と同じ業界を見るのがおすすめです。これまでの知見が活かせますし、入社してから活躍できるイメージも湧きやすいと思います。


スタートアップで驚いた圧倒的な開発スピード。アンラーニングを繰り返しながら培うものづくりの姿勢

──改めて、estieでの仕事内容を教えてください。

勝田:2022年の9月に、PdMとして入社しました。最初の1、2ヶ月間は、オフィスビル情報を集約したデータ分析基盤『estie pro』の裏側を走るデータアーキテクチャプロジェクトに関わり、サービスの基盤となる構造を学んでいきました。同時に、新規プロダクトのマネジメントにも従事。気がつくと昨年末まで同時並行で4つのプロダクトを走らせていました。年明けからはとある新規プロダクト1本に集中しています。

──入社早々からご活躍されていますね!勝田さんが感じる、estieの魅力を教えてください。

勝田:言語化能力が高く、自律性のある優秀な人が多いように感じます。

estieは、ドキュメンテーションがカルチャーとして根づいています。例えば、会議では議事録を複数人で協力して作るんです。ドキュメンテーションが盛んだからこそ、言語化力が磨かれ、物事を解像度高く伝えられる人が多いのだと思います。コミュニケーションの齟齬が起こりにくいですし、自律性のある人ばかりなので、物事が前に進みやすいですね。

──リクルートからの転職で感じたギャップはありましたか?

勝田:圧倒的な開発スピードの速さを感じます。リクルート時代は、リスクを全部洗い出してから実行する、いわゆるリスク回避型で仕事に向き合ってきました。対してestieは、早く失敗することを奨励する文化があり、失敗から得た学習をもとに良いものをつくる風潮があります。

入社当初は「この状態でスタートするの!?」と驚くぐらい、ものづくりの進め方が違いました。慣れるまで前向きにアンラーニングを進めていきましたね。まず周りの優秀なメンバーを観察して、考えを真似しながら取り組んでいき、徐々にアレンジを加えて仕事の向き合い方を確立していきました。

──今後estieで実現したいことを教えてください。

勝田:今携わっている事業をさらに伸ばしていきたいです。estieは、『estie pro』を起点にさらなる事業成長を目指す『マルチプロダクト戦略』(複数のプロダクトを同時並行で作り、プロダクト間のシナジー最大化を目指す戦略)を掲げています。戦略の実現に向けて、新たに開発するプロダクトの有用性を証明できるよう動いていきたいです。


ユーザーに持続可能な価値提供を。プロダクト改善と売上の上がるサイクルに目を向けるのがPdM

──ここからはPdMとしての姿勢や、スタートアップで働く意義をお聞きします。まず、勝田さんがプロダクトマネジメントを進めるにあたって意識していることはありますか?

勝田:ずばり「売上・利益はすべてを癒やす」です。プロダクトだけを見るのではなく、売上や利益も視野に入れ、事業の数字を見据えて動くことが大事だと考えます。リクルート時代にプロダクトの立て直しを担った経験から学びました。

きちんと売上を立てて利益を生まないと、ユーザーへの価値提供も健全に持続できません。プロダクトのブラッシュアップと並行して、売上の上がるサイクルをどう作るかにフォーカスして取り組んでいます。

効率的なサイクルを作るためのコツは、レバレッジポイントを探すことです。私の場合は、業界関係なく成功をおさめている他社のビジネスモデルを研究しています。部分的な要素でもいいので、自社に反映できないかは常に考えていますね。

──スタートアップで働く魅力も教えてください。

勝田:事業やプロダクトに伸びしろがあり、色々チャレンジできる機会が多いことではないでしょうか。小規模な会社の方が、挑戦する機会も必然的に増えます。そして自分が活躍できれば、業界や社会に対して確かな価値を反映できるのも、スタートアップで働く醍醐味だと思います。

──最後に、スタートアップへの転職を検討する人に向けて、挑戦を後押しするメッセージをお願いします。

勝田:人それぞれ悩む観点は違うと思いますが、私が悩んだ収入面とリスク面について話をします。

収入面から話すと、特に大企業から転職する場合、給与の差が気になる人も多いのではないでしょうか。転職後の収入が生活できないほどの低い水準でなければ、検討の余地は大いにあると思います。最近は副業を推奨する企業が増えていますし、PdMやエンジニアは比較的副業しやすい職種なので、収入の柱を別で確保するのもひとつの手段です。

もうひとつ、失敗のリスクを考えると転職に踏み切れないパターンもあると思います。私の個人の意見としては、気持ちは分かりますが、だからこそ「成功確率を上げるために何ができるか」といった発想に切り替えてみてはいかがでしょうか。

大手企業と違い、スタートアップは失敗を許容される場面が多いと思いますし、estieも失敗を経ながら学習していくスタンスを取っています。失敗体験を活かし、成功確率を上げていく気概でチャレンジしたい人は、勇気を持ってスタートアップに飛び込んでほしいです。

──勝田さんのご活躍と、estieのさらなる事業発展を楽しみにしております!本日はありがとうございました。


インタビューご協力: 株式会社estie

執筆:近藤ゆうこ

取材・編集:for Startups, Inc.  エンジニアプロデュースチーム