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【ラクスル 笹子氏】「既存のスキルや知識面の成長」と「非連続の成長」。経験の価値を高め、資産に変える働き方

フォースタートアップス(以下、フォースタ)では、エンジニアに特化した専門チームであるエンジニアプロデュースチームを作り、スタートアップに対してキーパーソンとなりうるCTO・VPoE・エンジニアのご支援をしております。

ラクスル株式会社はインターネットを既存産業に持ち込み、新たな商習慣を作り出すことで、世の中はもっと便利になり、生産性はもっと向上すると考え「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」をビジョンに掲げている会社です。

今回は様々な新規事業を経験し、2020年5月にラクスルに入社しPdMとしてご活躍されている笹子さんに、スタートアップ企業で働く魅力や、エンジニアのキャリアアップとワークライフバランスについて聞きました。

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笹子 圭太 氏
ヤフー株式会社に2004年入社。ナビゲーションや地図の開発に始まり、検索関連サービスの開発本部長を務める。株式会社KaizenPlatformへ転職後、PdMとして広告事業立ち上げに携わり、その後ヘルスケア系のスタートアップでのCTOを経て転職。
2020年5月にラクスルへ入社し、現在はPdMとしてノバセル事業本部のプロダクト開発を行う。2021年の2月から2ヶ月間、育児休業を取得するなどワークライフバランスを考えた働き方を実現。


新規立ち上げに没頭し、経験値を資産に変えてきた日々

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──まず過去の経歴を教えてください。

笹子:ヤフー株式会社(以下、ヤフー)に10年ほど在籍し、キャリアの前半は、地図や乗換案内、Web検索の開発を担当してきました。後半は、組織マネージメントしつつ、パートナー企業との新規事業立上げを担当しておりました。その後、株式会社KaizenPlatform(以下、KaizenPlatform)に入社します。

──転職された経緯はどのようなものでしたか。

笹子:ヤフーでは組織マネージメントが中心で、新規事業も立ち上げ後に引き継ぐことがほとんどでした。最後まで推進することが難しい分、小さくても良いので最初から最後まで開発に打ち込みたい気持ちが芽生えました。
また、パートナー企業との仕事はヤフーのやり方をベースとすることが多く、パターンが固定化されていました。そのため「環境を変えて仕事をしたい」と思った背景もあります。

10年ほど仕事をする中で自分自身が「定量的に意思決定する考え方」が好きだとわかり、今度はこの考え方にフィットする企業で働きたいと転職先を探していました。当時は定性的に意思決定する企業がまだまだ多かった時代でした。そんな中でも、A/Bテストのプラットフォームを開発していたKaizen Platformは自分の中の考えにマッチすると思い、入社することを決めました。

──その後、複数のスタートアップの会社を経て、現在のラクスルに転職を決めます。どんな経緯だったのでしょうか。

笹子:最初は転職を考えていませんでした。ただ、子どもが生まれて「家庭に比重を置きたい」と考え始めてから、スタートアップでもアーリーフェーズを越え、規模感と働き方の両方のバランスがとれている会社を検討するようになりました。小規模の会社だと人数が少ない分、どうしても人の替わりがきかず、自分が手を動かしつづけなくてはなりません。それでは、家庭とのバランスを取ることが難しかったんです。

もし、家庭の時間を大事にするなら、転職先はヤフーやKaizenPlatformなどで培ったスキルを活用できる場所にしようとも考えました。新しいことを覚えるよりも、知識を転用するほうが時間を有効に使えるので、家庭と仕事の両立がしやすいだろうと思ったんです。
期待通り、ラクスルではスキル面も活かせるし、何よりチームの人たちも子育てをしている人が多いです。福利厚生も整っていて、家庭を重視した働き方が可能だと思い入社を決めました。

幅広い視野とコミュニケーションスキルを必要とするPdMの仕事

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──笹子さんはマネジメント経験が長いかと思います。ラクスルではPdMとしてどのように働かれていますか。

笹子:私が所属するノバセル事業本部にはPdMが2人います。1人は既存事業を、私はR&Dを中心に次の事業の仕込みをしています。
新たにプロダクト開発する際、顧客に向き合う事業側と技術に向き合うエンジニアで、課題の捉え方や見え方、解決方法に違いが生まれる傾向があります。私はさまざまな角度から課題を見て、顧客、事業、技術者の橋渡しをしてバランスを取ることがPdMの大事な役割だと考えています。

個人の強みは、技術系出身のPdMとして、未来を予測しながら周囲の動きを観察しつつ、目先の流行りに飛びつき過ぎないように何歩か先を見据えてプロジェクトマネージメントしています。

──ラクスル独自の、PdMの魅力はなんでしょうか。

笹子:ラクスル全体の狙っている分野は、印刷や物流、広告など歴史のある巨大な産業です。
市場は大きいのですが、業界の特有のルールや慣習、関わり合いのうえに成り立っているものも多く、参入が難しい分野でもあります。これらの領域に対して価値提供するポイントは、どうオペレーションを組めるか、仕組み化できるか、サービス化できるかの総合力が必要でここが難しくも魅力的で面白いです。

単純にデータを扱うだけではなく、実際に現場に入り、そこで働く人が何を目的に動いているのかを理解することでオペレーションの背景理解が進みます。課題がどこにあるかを細かく見ながら、俯瞰度を高め全体像を把握していくことにやりがいを感じています。

得たスキルを活用し、発展させることが大事

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──スタートアップだからこそ得られるエンジニアのキャリアは何でしょうか。

笹子:スタートアップは事業を成功させるために何にでも取り組める仲間が必要なので、特定の技術スキルが高まるというよりは総合力が高まる環境ではないでしょうか。

たとえば医療ドメインの場合、「技術的な腕の見せどころよりも、患者目線で医療の体験を改善するサービスを増やすべきか」「規制の中で何を提供するか」といった思考で開発してきました。ソフトウェア以外にも施設の設計、接客方法等、総合力が必要です。

一方で、大規模データ処理のインフラ構築やデータ活用を得意とするチームは、情報処理技術自体で価値を提供しているので特定スキルを身に着けやすい環境かもしれません。

キャリアをデザインするときに、転職先企業の業態からどのような技術やスキルを得られるのかを見極めた上で、「自分の進みたい方向に合っているか」を照らし合わせて選ぶと無理なくキャリアが積み上がると思います。

──笹子さん自身、スタートアップでの経験はどのように活きていると思いますか。

笹子:過去の経験は、新規事業の起案にとても役立っています。特に前例のない事業を起こす時は、そのプロジェクトへの理解と賛同を得なければ始められないですし、資金調達も必要だからです。

KaizenPlatformでは、新規事業の立ち上げ時に外部から資金調達する文化があり、社外で開催されるピッチにしばしば出場していました。社外のまだ何も関係性のない方に向けて新規事業のピッチをするには痺れるものです。順序立てて分かりやすく説明しなくては伝わりません。相手に届かなくては、投資もしていただけない難しさがありました。

スタートアップも同様にして、時間やリソースの制限がある範囲で材料を集めてプランニングしなければなりません。不透明な状況の中で情報を整理して仮設設計して投資を得るスキルは、PdMの仕事に役立っています。

家庭とのバランスを取るために必要な「成長」の考え方

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──これまでの経歴上、かなりお忙しかったのではと想像します。やはりキャリアアップや成長のためでしょうか。

笹子:語弊を恐れずに言うと、自分の中の「恐怖」と戦いながら成長してきたと思っています。
私は就職氷河期世代で、なかなか企業に入社できず、キャリアの滑り出しは順調なものではありませんでした。それ故に、結果を出し続けなければ社会のお荷物になるという恐怖が根底にあったんです。
そのため、成長のために意図的に会社を選択し、スキルアップを目指してきたタイプではないです。
結果としては、すごく働いてきたと思うし、忙しい時期は1週間家に帰れないようなこともありました。私の場合、要領のいいタイプではなかった分、仕事にかける時間に比例して成長に繋がったのだと思います。

──現在の働き方は、以前と比較してどう変わりましたか?

笹子:以前は仕事を中心に生活していました。でも今は結婚して、特に子どもが生まれてからは家庭とのバランスを大切に思うようになり、ワークライフバランスも考えるようになったんです。

ラクスルに転職後は、8時半に始業して、17時半に終業する働き方ができています。2021年にはもう1人子どもが生まれたので、その年の2月から2ヶ月間、育児休業も取得しました。

──そのような働き方が可能な理由はなんでしょうか。

笹子:自分の状況を周りに知ってもらう努力をしていますね。

まず家庭を中心に自分の働く時間を決め、そのバランス内で働くことを周囲にも伝えて協力してもらう。自分のキャパシティを超えそうな場合は、状況を説明して協力を仰ぐし、限界を超えそうだったら正直に相談します。

ラクスルは家庭を持っている社員も多く、日常的にチーム内でも事情を理解し協力し合える文化風土もあるので、かなり助けられていますね。

──家庭と仕事のバランスを取りながら「成長」するために、何か工夫していることはありますか。

笹子:個人の成長には、「既存のスキルや知識面の成長」と「非連続の成長」の2つがあると思います。

「既存のスキルや知識面の成長」は、毎日の仕事の延長線上で必要になる知識を得ること。「非連続の成長」は、将来のどこかで役に立ちそうな情報や知識のイメージです。

私の今の状況では、新しいことをインプットする「非連続の成長」は優先度を下げていて、これまで培ったものを社内で100%出し切ることでアウトプットを最大化することに注力しています。

とはいえ、PdMとして同じことを繰り返しているだけでは成長はありません。トレンドを見たり、新しいものをリサーチしたりと、知識や情報を増やすことも本来は必要です。

そこで私は、ワークライフバランスを重視していることを活かして、子育てや家庭からの視点から社会を眺める時間を増やしています。こういう視点を取り入れると、IT産業にどっぷり使っていて視野が狭まっていたことも分かりますし、多様な人と出会えたり考え方にふれることができるので、「非連続の成長」につながるとも思っています。


切り拓く・与えられる、どちらであってもキャリアの選択基準を持っておく

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──これからキャリアを切り開きたいエンジニアやPdMの職で働きたい人に、アドバイスをいただけますか。

笹子:転職でいうと、取り組みたい事業がハッキリ決まっていない場合、アーリーフェーズを越えた会社がいいと思います。
アーリーフェーズは目的に真っ直ぐ進むので変化が激しく、当事者意識を持ったマインドが必要です。これに対してフェーズが進んでくると、チームに余力も生まれて議論をしたり、気持ちの整理をする時間もあったり、役割分担をしたり、仕事に選択肢がでてくるのでバランス良くストレッチできる環境ではないでしょうか。

働くって、短距離じゃなくマラソンのような長距離走じゃないですか。
だから長いこと走り続けられるよう、自分がどうしても嫌なこと、やりたくないことは何かを明確にしておくことが大切だと思います。

たとえば、私はルーティンワークに飽きがちな一面があったり、内向的に時間を使いたい傾向があります。このような苦手要素を含む仕事はできるだけ避けています。ここを回避することでストレッチしつつも楽しんで働けておりました。逆に、苦手な分野は仲間にどんどん頼るようにしていて、おかげさまでいいチームにも恵まれていました。

──キャリアを変えたいけれど、どうしていいか悩んでいる方も多いと思います。笹子さんは、キャリアで悩んだ時期にはどのように道を切り開いてきましたか?

笹子:私の場合は、仕事の領域が違う友人から「こういうのもあるよ」「これをやってみたら」と会話することもあって、出会いに恵まれてきた部分があるんですよね。
くすぶっている時はあまりいい状態ではないので、自分で考えても答えが出ないと思うんです。視野を広げるためにも、仕事関係以外の人と話してみたり、環境を変えてしまうのも1つの手ではないでしょうか。
性格上、絶対に自分に合わない条件以外で話の内容がしっくりくれば、普段の自分なら選ばないアドバイスに乗ってみるのも、新たな流れを切り開くきっかけになると思います。

キャリアも自分から積極的に取るものもあれば、与えられて切り開けるものもある。やはり、自分の中の「大切にしていて譲れない条件リスト」を作っておくと、やりたいことを絞りつつも、自分の職業選択の軸からブレずに幅広くチャンスを得られるのかなと思いますね。

──笹子さん、視野の広がる素敵なお話をありがとうございました!!


インタビューご協力:ラクスル株式会社

取材・編集:for Startups エンジニアプロデュースチーム